第七巻「悪名高き皇帝たち」は、初代ローマ皇帝アウグストゥスの後を継いだ、ティベリウス(第二代皇帝)、カリグラ(第三代皇帝)、クラウディウス(第四代皇帝)、ネロ(第五代皇帝)。
帝政に移行したローマ。代を経るごとにカリスマであるカエサルの名は権力争いの大義名分に。カエサルの血を引く一族の数も増し、権力争いはますばかり。本巻の主人公4名は全く知りませんが、唯一、ネロは、「暴君ネロ」として教科書で学んだ記憶があり、興味深く読みました(以外に途中までは聖君だったんですね)。
(第Ⅶ巻のポイント‥本書より)
〇主な年表
・紀元後14年:ティベリウス第二代皇帝就任。
以後、①皇帝の地位の確立による帝国の堅固化、②国家財政の健全化、③北の防衛線の決定を進める。
・紀元後27年:カプリ島に隠遁。以後、死去までカプリ島から帝国を統治。
・紀元後37年:ティベリウス死去(77歳)。カリグラが第三代皇帝就任。
24歳で皇帝に主任したカリグラには、象徴的尊称(第一人者)に、プラス軍事上の最高指揮権(皇帝)プラス政事上の全権(護民官特権)まで与えられた。
小麦法による貧民救済とスポーツ娯楽推奨などの浪費で財政破綻。自らを神と称し、一神教のユダヤ民族と衝突。
・紀元後41年:カリグラ、妻・娘と共に暗殺される(28歳)。クラウディウスが第四代皇帝就任。
・紀元後54年:クラウディウス死去(63歳)。ネロ第五代皇帝就任。
・紀元後56年:首都警察長官が奴隷に殺害され、時代錯誤であった休眠法(奴隷が主人を殺した場合殺害者以外の奴隷も全員処刑)に沿って、女子供を交えた400名を処刑。
・紀元後55年:母アグリッピーナと対立。母による擁立を恐れ、クラウディウスの遺子ブリタニクスを殺害。
・紀元後59年:母アグリッピーナを殺害。
・紀元後62年:妻オクタヴィア離婚し、ポッペア・サビーナと結婚。さらにオクタヴィアを流刑に処したうえ殺害。
・紀元後64年:9日間にわたる大火。再建の陣頭指揮を執る。ネロ放火説消えず。
・紀元後66年:ベネヴェントのネロ暗殺の陰謀発覚。青年将校を全員処刑。
・紀元後68年:ローマ市民、反ネロで立ち上がる。ネロ自決(30歳)
〇印象に残った言葉など
・外交による解決と聴くと、現代人は、その中でも特に日本人は、平和裡に話し合った末での解決と思ってしまう。だが、軍事力を使って脅した後で握手する、というのも外交である。いや、それこそが最も有効な外交であることは、歴史が証明してくれている。なぜなら人間とは、理で眼を覚ます場合は少ないのに、武力を突き付けられれば目を覚ますものだからだ。
・有能な「手足」になるには、「頭脳」が考えはしても口には出さないことまで察する能力が必要。
・母想いであることが示されるとたいていの欠点までが許されてしまうのは、古今東西変わりない人間の心情である。
・人間は、問題がなければ不満を感じないというわけではない。枝葉末節なことであろうと問題を探し出しては、それを不満の種にするのは人間性の現実である。
・歴史に親しむ日々を送っていて痛感するのは、勝者と敗者を決めるのはその人自体の資質や優劣ではなく、もっている資質をその人が以下に活用したかにかかっているということ。