第八巻「危機と克服」は、ガルバ(第六代皇帝)、オトー(第七代皇帝)、ヴィテリウス(第八代皇帝)、ヴェシパシアヌス(第九代皇帝)、ティトゥス(第十代皇帝)、ドミティアヌス(第十一代皇帝)、ネルヴァ(第十二代皇帝)の7名の軌跡。この間、30年。うちドミティアヌスが15年在位しているので、他の6名は平均在位2年。
初代皇帝アウグストゥスが41年、2代ティベリウスが23年などに比べると、かなり短いことがわかります。そして、皇帝在位が短いということは、それだけ政治・社会混乱している訳で、皇帝殺害や自死が目立つ期間。よく、崩壊しなかったなと感じます。そんな混乱の中をローマはどう乗り切ったのか。
(第八巻のポイント‥本書より)
〇主な年表
・68年:ガルバ皇帝推挙決定
・69年:オトーの名でガルバ暗殺。オトー皇帝に。
・69年:第一次ベドリアクム戦。ヴィテリウス軍がオトー軍を下す(オトー自死)。ヴィテリウス皇帝に就くもローマ市街戦で殺害される。
・70年:ヴェシパシアヌス皇帝就任。
・79年:ヴェシパシアヌス死去(70歳)、ティトゥス皇帝就任。ヴェスヴィオ火山大噴火。ポンペイ他が埋没。死者多数。
・80年:ローマ都心部で大火。
・96年:ドミティアヌス暗殺される。ネルヴァ皇帝就任。
・98年:ネルヴァ死去(71歳)、トライアヌス皇帝就任。
〇印象に残った言葉など
・予定通りに進むことなどは起こらないのが人間社会の常でもある。だからこそ臨機応変の能力がリーダーには求められる。実戦を知っていれば、すべてが予定通りに行かなければ効果があがらないような戦略は、もともとからして立てはしないのである。
・他民族に長く支配された歴史を持つ民族は、現代人の考え方ではしいたげられた民族ということになり、同情を寄せられるのが当然という感じになっている。だが、しいたげられた長い歴史をもつということは、それゆえの精神構造の変化をもたらさずにはおかないという、現実にも眼を向ける必要がある。
・報復とはしばしば、理性ではなく感情の所産であることを忘れるわけにはいかない。