MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ブラックバイト(今野晴貴)×コンビニ店長の残酷日記(三宮貞雄)

『ブラックバイト』(今野晴貴)×『コンビニ店長の残酷日記』(三宮貞雄)

 たまたま並行して読んでいた2冊。2冊合わせて読むことで、労働現場の実態について、雇う側と雇われる側の両面から知ることができます。

『ブラックバイト』では、外食、コンビニ、塾講師、牛丼チェーン店を題材に真面目で仕事ができる学生アルバイトを手放さないための雇用者側のやり方に焦点を絞って書かれており、『コンビニ店長~』では、フランチャイズ元との関係性やアルバイトをうまく使わないとすべて店主の労働で負担するコンビニ経営の実態が書かれています。現実を知る手掛かりになるのではないでしょうか。

 

(印象に残ったところ‥『ブラックバイト』より)

〇ブラックバイトの特徴

①学生の「戦力化」

 職場で戦力として扱われ、労働者のような生活になっていく。

②安く、従順な労働力

 学生、子供として扱われ、法律通りの給料が支払われず、上限関係で支配される。

③一度入ると、辞められない

 辞めたいと思っても、上限関係や暴力を利用して、辞めさせてもらえない。

 

非正規雇用が大量に用いられるサービス業の特徴

 ①単純化、②定式化、③マニュアル化。

 

〇使い捨て

 正社員にせよ、アルバイトにせよ、企業からすればどちらかがマニュアル労働を充当してくれればよい。アルバイトをブラックバイトに駆り立てることができる正社員は、自分の負担を減らすことができるだけでなく、「マネジメント能力の高い社員」として、重宝されることだろう。ブラック企業の経営手法は、単純労働をいかに最大限安いコスト(人件費)で充当することで、利益を最大化させるかというところにある。

 

(印象に残ったところ‥『コンビニ店長の残酷日記』より)

〇アルバイトの入れ替わりも激しい。1年で半分は入れ替わる感じだろうか。深夜入っていた人が1人辞め、その後が埋まらない。しばらくは自分で入るしかないけど、この歳になると徹夜は正直体にこたえる。

 

〇無理な過重労働に支えられた高収益は決して長続きしない。従業員・アルバイトが働き続けたいと思えるような条件・環境と、そのための加盟店の利益を確保することが、コンビニ業態の持続的発展の肝になると私は考えている。

 

〇先週もSVに「こういうイベントで結果を出せるのがいいお店ですよ」とハッパを掛けられたが、自爆(自分で購入)なしで高い数字をクリアする方法ってあるのだろうか?あるんだったら教えてほしいものだ、まったく。

 

〇SV個々人には誠実な人が多く、コンビニ店主からは感謝されている。だが、時には加盟店の利益をそっちのけで、自分のノルマを達成させることばかりを考えて無理な発注を押し付ける、悪いSVもいる。コンビニ加盟店に対して本部は著しく立場が強いのだが、その強さをバックに具体的な発注作業、その他店舗運営に本部の意向を落とし込むのがSV。悪いSVが担当になると契約解除や契約更新拒絶権をちらつかせながら、水槽商品の大量発注や季節ごとのキャンペーンへの協力など、本部の利益を優先させるものとなりがちなのが実態。

 

 事業を軌道に乗せ、生き残るためにという切実な現場。利益を最大化させたい事業主。そのために使われる労働力。経済原理の中で、誰かにしわ寄せがいってしまう現実が垣間見れました。『コンビニ店長~』は仮名での暴露本のようなもので、『ブラックバイト』は、企業名がオープンにされて記載されている生々しさ。きれいごとではない現実に気付かされます。 

ブラックバイト――学生が危ない (岩波新書)
 

 

コンビニ店長の残酷日記 (小学館新書)

コンビニ店長の残酷日記 (小学館新書)

 

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