『鉄客商売』(唐池恒二)
JR九州会長の著書です。熊本の震災が起こったとき何人かの顔が浮かんだうちのお一人。過去2回、あすか会議で講演をお聞きする機会があり、「気」を大切にされる方そのものの元気・活気が溢れる方です。
本書は、唐池会長の若かりし頃から現在までの歩みを振り返った私の履歴書っぽい内容です。船舶事業部、外食部門など鉄道事業とは異色の畑を歩み、「ななつ星in九州」をはじめとしたJR九州のユニークな特急列車を生んだストーリー。まえがきには、「どうも”ビジネス書”の枠に収まらない」「書いた本人でさえところどころで笑ってしまう」という唐池会長らしい一冊です。章ごとに「私がこのころ学んだこと」がまとめられているのも良いです。
なお、本書は当初震災があった4月発売予定で進んでいましたが、震災により発売が1カ月延期されました。執筆時期の関係で、本書の内容に震災のことは出てきませんが、最後に追記として、震災からの復興に向けた決意が書かれており、グッときました。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇「鉄客商売22の学び」
①何事も前向きに考える。
②意気に感じて取り組む仕事は、結構うまくいく。
③難局に直面した時、逃げずに真正面からぶつかっていくと道は必ず開ける。
④進むべき方向とスケジュールを明確にすると、人は迷わずに行動する。
⑤2メートル以内で語り合うと、互いに心が通じるようになる。
⑥「気」に満ち溢れた店は、繁盛する。
⑦夢は、組織や人を元気にする。
⑧経営方針は、トップが自らの言葉で語る。
⑨月次決算書は、現場の責任者が手づくりで作成することに意味がある。
⑩ネーミングは、徹底的に勉強し、とことん考え抜いてはじめてできるもの。
⑪現場に行くと、いろいろなことを教わる。
⑫サービスとコストの両方の最適化が、経営の目指すべきものだ。
⑬サービス教育の先生役は、鬼に徹するべし。
⑭店長が最優先すべきことは、司令塔としての職務を全うすることだ。
⑮何事も、すべてを貫く哲学=コンセプトが大切だ。
⑯手間をかけ誠実に徹した仕事や商品は、お客様を感動させる。
⑰学んだことは、すぐに実践に生かす。
⑱人を元気にすると、自分も元気になる。
⑲デザインと物語は、いい仕事には欠かせない。
⑳行動訓練は、「気」を集めるための最良の道だ。
㉑日々の誠実で熱心な練習は、本番で大きな成果をあげる。
㉒「気」のエネルギーは、感動というエネルギーに変化する。
まえがきに、講演などで受ける頻度の高い質問は、「いつごろから、ななつ星の構想が浮かんだのか」「ななつ星の発想はどこからくるのか」「ななつ星はなぜ成功したのか」の3点。このことを紐解くために、若手時代からの経験が綴られています。もちろん、若いころから「ななつ星」を考えていたわけではなく、積み重ねてきたことがすべて繋がっているという実体験。YouTubeなどで講演を見てから読むと、お人柄がよく伝わると思います。