MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

イノベーションと企業家精神(P・F・ドラッカー)

イノベーションと企業家精神』(P・F・ドラッカー

 「企業には2つの基本的機能が存在する。マーケティングイノベーションである」という名言を残したドラッカー。その1つであるイノベーションのメカニズムとマネジメント上の要諦をまとめた本書。1985年の発売から30年経っても大事なことは変わらないことに気付かされます。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

イノベーション・企業家精神とは

 イノベーションとは、より優れた、より経済的な財やサービスを創造すること。

 企業家精神とは、既に行っていることをより上手く行うことよりも、全く新しいことを行うことに価値を見出すこと。

 経済活動の本質は、現在の資源を招来の期待のために使うこと、すなわち、不確実性とリスクにある。

 

イノベーションの7つの機会

①予期せぬ成功と失敗を利用する

②ギャップを探す

③ニーズを見つける

④産業構造の変化を知る

⑤人口構造の変化に着目する

⑥認識の変化をとらえる

⑦新しい知識を活用する

 

〇アイデアによるイノベーション

 いわばイノベーションと企業家精神の原理と方法の体系における付録。しかし、高く評価され報いられなければならない。社会が必要とする資質・行動力・野心・創意をだ表する。

 

イノベーションの条件

①機会を分析することから始めなければならない。

②理論的な分析であるとともに知覚的な認識であるため、外に出て、見て、問い、聞かなければならない。

③焦点を絞り単純なものにしなければならない。

④具体的なことだけに絞り、小さくスタートしなければらない。

⑤最初からトップの座を狙わなければならない。

 

イノベーションの3つの「べからず」

①凝り過ぎてはならない

②多角化してはならない

③未来のために行ってはならない(現在のために行わなければならない)

 

イノベーションを成功させる3つの条件

①集中でなければらない。

②強みを基盤としなければならない。

③つまるところ経済や社会を変えなければならない。

 

〇企業家精神の4つの条件

イノベーションを受け入れ、変化を脅威ではなく機会とみなす組織を作り上げなければならない。

イノベーションの成果を体系的に測定しなければならない。

③組織、人事、報酬について特別の措置を講じなければならない。

④いくつかのタブーを理解しなければならない。

 

〇既存企業において企業家精神を発揮するために

①マネジメントの目を機会に集中させる。

②成功要因を報告する。何を行ったか、いかに機会を見つけたか、何を学んだか、そして現在いかなるイノベーションを持っているかを報告する。

③トップマネジメントが自ら開発研究、エンジニアリング、製造、マーケティング、会計などの部門の若手と定期的に会う。

 

イノベーションの評価

①一つひとつのプロジェクトについて成果を期待にフィードバックする。

イノベーションに関わる活動全体を定期的に点検していく。

イノベーションの成果全体を、イノベーションに関わる目標、市場における地位、企業全体の業績との関連において評価する。

 

〇企業家精神にとってのタブー

 最も重要なタブーは、管理的な部門と企業家的な部門を一緒にすること。

 

〇公的機関のイノベーションの障害

①成果ではなく予算に基づいて活動している。

②非常に多くの利害関係者によって左右される。

③公的機関は善を行うために存在する。自らの使命を道義的な絶対とし費用対効果の対象とはみなさない。

 

〇公的機関の企業家原理

①明確な目的を持たなければらない。自分たちは何をしようとしているのか、なぜ存在しているのか。

②実現可能な目標を持たなければならない。

③いつになっても目標達成できなければ、目標そのものが間違っていたか、少なくとも目標の定義の仕方が間違っていた可能性のあることを認めなければならない。

④機会の追求を自らの活動に組み込んでおかなければならない。

 

ベンチャー成功の4原則

①市場に焦点を合わせる

②財務上の見通し、特にキャッシュフローと資金について計画を持つ

③トップマネジメントのチームをそれが実際に必要となるずっと前から用意しておく

④創業者たる企業家自身が自らの役割、責任、位置づけについて決断する

 

〇創業者の貢献

 「何をしたいか」「自らは何に向いているか」から考えがちだが、問うべき正しい問いは、「客観的に見て、今後事業にとって重要なことは何か」である。

 次に問うべきは、「自らの強みは何か」「事業にとって必要なことのうち自らが貢献できるもの、他に抜きんでて貢献できるものは何か」である。

 これらの問いを徹底的に考えることによっては初めて、「自分は何をしたいか」「何に価値を置いているか」「残りの人生すべてとまではいかなくとも、今後何をしたいか」「それは事業にとって本当に必要か、基本的かつ不可欠な貢献か」を問うことができる。

 

 上記に挙げたのは項目程度ですが、本書では約300ページにわたり、みっちりと解説され多くの事例も盛り込まれており、濃厚です。

イノベーションと企業家精神 (ドラッカー名著集)

イノベーションと企業家精神 (ドラッカー名著集)

 

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