『最強交渉人のNOを必ずYESに変える技術』(島田久仁彦)<2回目>
本書は、国際ネゴシエーターとして世界で活躍されている島田久仁彦さんが交渉の要諦をまとめた一冊です。交渉の準備から実際の交渉まで、何を意識し、実践すればよいのか、技術面にフォーカスした内容となっています。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇いかに戦わない交渉を行うか(いかに双方に利益をもたらすことができるか)という交渉を行うスタイルに変えてから、手掛ける調停が成功裏に終わるようになり、その結果、「どんな難問でも解決に導く調停官」と呼んでいただけるようになった。
〇交渉・商談に臨む前に知っておきたいこと
・交渉のプロは聞き上手。相手の話をじっくり聞くことで事前の調査や分析にプラスして、相手の立場が手に取るように理解できるようになる。それをベースに自分側の交渉ポジションとプレゼンテーションの仕方を微調整する。
・いかに手の内を明かさないでいるかが肝。自分から交渉スタンスは話さない。
・交渉は72時間(3日間)以内に終わらせる。それ以上かけても解決できない。
・時間を制するものが交渉を制す。相手にも必ずデッドラインがある。
・他人事と捉えたほうがうまくいく。常に客観的な視点を失わないこと。
・自分がされて嫌なことはしないというのもひとつのルール。
・迷ったら「人として間違っていないもの」を選ぶ。この視点を基準にすれば残念な結果を防げる。
・相手企業だけでなく自社の情報を集めるのがカギ。身内だから分かっているようで、案外見落としがち
〇交渉中のポイント
・第1回目の交渉は自分がリラックスできる場所を指定する。1回目は自分のテリトリー、2回目は相手の希望する場に出向くことを提案する。
・窓側を背に座る。自分の表情を見づらくし、相手の表情を見やすくする。自分が窓側に座れないときは、相手にも窓側に座らせないようにする。
・沈黙で圧倒的優位に立つ。相手の不安を誘発すれば、望んだ結果を得やすくなる。
・不利な状況を覆したいときは、「わからないふり」。「先ほどから仰っていることがわかりません」「う~ん、ちょっと理解できないので教えてください」などという言葉は、相手が長く話した後に驚くほど効果がある。
・第一印象の20秒で勝負。笑顔+ポジティブな挨拶で相手を褒める。
・国を越えて相手の信頼を得るには、タブーに触れない、批判しない、批判させない。外国を訪れるときには、いずれこの国の人と交渉するつもりだと思って、その国のことを出来るだけ知ること。
・交渉相手は一緒に物事をベターなほうに持っていく相互利益を得るための友人やパートナーだと思って臨む。
・キラーフレーズ
「それはどうしてですか?」
「私の〇〇という理解は正しいでしょうか?」
「〇〇さんのおっしゃりたいことは、△△ですか?」
「〇〇さんのおっしゃっていることは、△△とも言えますよね?」
「もう少し詳しくお話しいただけませんか?」
〇伝え方の極意
・自分の得意な構成パターンをつくる。結論から伝えるのが基本。
・ポイントは3つまでに絞る。
・客観的なデータや事実を示す。
・クリアに伝わる3つのコツ
①simple(簡潔に)、②complete(完全に)、③flow(流れ)
・勝てるプレゼンのポイントは、①パワーポイントを使わない、②原稿は一字一句書かない。聞き手にも顔を上げてもらうのが鉄則。
・賛同するときは、理由をはっきり伝える。発言を信頼してもらうために有効。
・賛同するときは、相手の話を自分の言葉で言い換えてオウム返しする。
・反論するときの反対理由は、ひとつずつ潰していく。
・不利な状況に陥ったら、①場所と時間を変える、②むやみに話さない、③3日で一区切りつける。
今月開催されたグロービス経営大学院のあすか会議にて、著者のお話を間近で拝聴できる機会に恵まれました。表情、目力、声色、話の進め方・・場の雰囲気を柔剛自在に変化させていくスキルに圧倒されました。一流の方が大切にされていることは、文字にすれば本的なことかもしれませんが、強者の交渉相手を目の前にして会話が展開されている中で実践されていると思うと、スキルもさることながらタフな精神面も凄さを感じます。