『これからのマネジャーの教科書』(田久保善彦)(〇)
部下を持つマネジャーの方にお薦めの一冊です。グロービス経営大学院の田久保先生、共同執筆者には共に学んだ方々の名前が並ぶので、迷わず購入したのですが、ある種仲間内ということは差し引いても、とても良い内容だと思いました。特に、実際に部下を持つ中間管理職の方なら、頭を整理するだけでなく、随所に数多く取り上げられている事例に登場するマネジャーの方々に共感したり、気づきや勇気をもらったりと、得るものが多い内容だと思います。
「常にイキイキと仕事に取り組み、周囲からの期待を越える活躍をしているミドルマネジャーと、そうでないミドルマネジャーの違いはどこから生まれるのか?」。40名以上のマネジャーへのインタビューをもとに、学ぶべきポイントがまとめられています。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇マネジメントの仕事
・極めて複雑で一言で表すのは不可能。
・世間一般に共通する「マネジャーの仕事習得法」などは存在せず、それぞれが自分の職場で自分の力で習得するしかない。
〇期待を超えるミドルマネジャーの姿
・何事も前向きに考え、いかなる困難も成長の糧として捉え、常に変化、進化していこうというパワーを感じる。
・自らの志を持ち、心から働くことを楽しんでいる。
・何か困難に巡り合うと、自分自身と向き合い、必死に学び、自らを変えていく。
〇期待を超えるミドルマネジャーの3つの力
①スキル:組織で成果を出す力
・テクニカルスキル(専門的能力)
・ヒューマンスキル(対人関係力)
・コンセプチュアルスキル(概念化能力)
②ウェイ:仕事に対する想いの力
・期待を超えるミドルマネジャーに共通した「想い」は、「自分の言葉で他人に語れる」。
・仕事に対する想いの力(ウェイ)を獲得するために必要なことは、「節目となる過去の経験」。
・あきらめずに「想い」を抱き続けるミドルマネジャーの特徴は、「ゆずれないこだわり」を抱いている。
・ウェイの4タイプ:What型(何をやるか)、How型(どのようにやるか)、Where型(どこでやるか)、Who型(誰とやるか)
③ギャップ:周囲との考えの違いを乗り越える力
・違いを正しく認識したうえで、「違いに対する解決手法」を持つことにより、「違い」を乗り越えて、成果へと繋げている(ギャップに対する6タイプ)。
⇒3つの力を獲得した後には、「維持」「回復」「強化」の3つのメカニズムを働かせることが必要。
〇自己変革する思考プロセス
何らかの経験をきっかけにし、厳しくとも逃げずに正面から向き合い、自分を変えていくことこそが「自己変革力」。
・ステップ①:自己認識を深める
自らを振り返り、仕事に対する意味付けをするための節目は自分でつくらなければならない。
・ステップ②:都合のよい解釈(ポジティブ解釈)をし、次やることを決める
「これでいい」「これには意味がある」と、自らの価値感に基づいて、意味があると強く信じること。
・ステップ③:持論を形成する
「これが大事」という何かを他人に語れるまで昇華すること。
〇紆余曲折をいかにくぐり抜けるか
①維持する
「現在志向」。現在に照準を合わせ、様々な行動を重ねることで3つの力を維持していく。
②回復する
過去にしっかり思いを馳せること。ただし、少し慎重に選ぶ必要がある。あまり無理せず、一定期間しっかり休むことが必要な場合もある。
③強化する
「未来志向」。未来に照準を合わせ、現在をより意味のあるものを変えるという視点から3つの力を捉え直す。
マネジャーとは矛盾の中であっても一つひとつ問題を解決しながら進み、チームを目標達成に導く存在。悩みは尽きない立場ですが、なかなか相談できない方も少なくないはず。同じ立場の方の話を読むだけで、プラス思考になる。頭の整理+力をもらえた一冊でした。