『ローマ人の物語』全巻のエッセンス、多数の写真、人物録をはじめとしたコラム、著者へのインタビューなど、本編を読み終えた後に復習を兼ねて読むのに適した一冊です。
(印象に残ったところ‥本書「ローマ人名言録」より)
〇ローマ人の教え
①「ローマは、英雄を必要としない国家である」
②「ローマ人の伝統は、敗者さえも許容するところにある。(略)敗者の絶滅は、ローマ人のやり方ではない」
③「今我々は、かつては栄華を誇った帝国の滅亡という、偉大なる瞬間に立ち会っている。だが、この今、わたしの胸を占めているのは勝者の喜びではない。いつかはわがローマも、これと同じときを迎えるであろうという哀感なのだ」
④「子は、母の胎内で育つだけでなく、母親のとりしきる食卓の会話でも育つ」
⑤「問いかけられた側が、答えるべきである。勝者は無言でいることもできるのだ」
〇カエサルが残した言葉
①「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」
②「どんなに悪い事例とされていることでも、それが始められたそもそもの動機は、善意によったものであった」
③「運は、試してみるべきではないか。剣を使わずに思慮で勝つのも、総司令官の力量ではないのか」
④「何ものもましてわたしが自分自身に課しているものは、自らの考えに忠実に生きることである。だから、他の人々も、そうあって当然と思っている」
⑤「来た、見た、勝った」
⑥「文章は、用いる言葉の選択で決まる」
⑦「兵士の戦闘意欲が爆発したときは、それでは作戦どおりでないとして制止にまわるよりも、自然爆発した戦意に乗ってしまったほうがよい」
⑧「私は王ではない、カエサルである」
⑨「身の安全を心配しながら生きたのでは、生きたことにならない」
〇皇帝は言葉でローマを支配する
①「わたしのティベリウスよ、若いお前では無理もないと思うが、わたしのことを悪く言う人がいても憤慨してはいけない。満足しようではないか、彼らがわれに剣を向けないというだけで」
②「あなた方は羊を殺して肉を食すよりも毛を刈り取る対象として考えるべきである」
③「責任を果たしていないものが報酬をもらい続けていることほど、国家にとって残酷で無駄な行為はない」
④「感情を抑制するのに、賢者の哲学も皇帝の権力も何の役にも立たないときがある。そのようなときには、男であることを思い起こして耐えるしかない」
⑤「法は、誰にとっても平等に執行され、個人の権利も言論の自由も保証される。この目標の達成にこそ、臣下全員の自由の保証を常に心がけることを基盤にしての君主政の存在理由がある」
〇ローマ市民の心意気
①「戦士は富で作れるが、富で戦士はつくれない」
②「公正を期して作られるのが法律だが、そのあまりにも厳格な施行は不公正につながる」
③「これを読む人に告ぐ。健康で人を愛して生きよ、あなたがここに入るまでのすべての日々を」
④「蛮族は、朝には約束し、夕べにはそれを破る」
『ローマ人の物語』が教えてくれたこと。それは、単に歴史の壮大さや歴史の楽しさだけではなく、昔も今も変わらない本質的なことは何かということ。人々の感情や行動に根差したものは、文明が変わっても脈々と生き続けているんだろうなと想像してしまいます。歴史の大作は、読むのに膨大な時間がかかりますが、膨大な時間の中でこそいろいろと考えることができるメリットもあり、またときどきは挑戦してみたいなと思います。