『自己評価の心理学』(クリストフ・アンドレ&フランソワ・ルロール)(〇)
仕事・友人関係・恋愛・結婚・子育てなどあらゆる場面で考え方や行動に大きな影響を与える「自己評価」。自己評価が高い・低い・安定している・不安定という状態はどのように形作られ、どのように行動・言動に現われるのか。精神科医である著者が実例を用いながら解説した本書は、自己分析やコミュニケーションの改善など、日常生活で使える要素が詰め込まれた一冊です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇調和のとれた自己評価を持つための3つの柱
①自分を愛する
自己評価では、自分の能力や行為に価値判断を下すが、欠点があっても無条件に自分を愛することができるからこそ、人は逆境に耐え、挫折を乗り越えることができる。
②自分を肯定的に見る
判断の客観的な根拠があるかどうかより、これが自分の長所や短所だ、能力や限界だ、と判断するのにどこまで確信を抱いているかが問題。自分に対する見方が肯定的であっても否定的であっても、主観的な要素が大きく影響することには変わらない。
③自信を持つ
自信を持つとは、自分の決断に確信を持てる、すなわち、どんな重要な局面でも自分は適切な行動を取れると信じることができるということでもある。
〇自己評価の低い人
・自分のことについて話したり、何かを決断したりするとき、慎重である。これは、自己評価の低い人が自分のことを知らないから。すなわち、自分の性格や能力を知らないせいで解決策が自分の中にあるとは思わず、まずは他の人がどうしているかを見極めて、そのやり方に従おうとする。
・評価の低い人は社会的な評価を気にし過ぎるところがある。「こんなことを言ったら高慢な人物だと思われないだろうか?」というようなことが気になり、自分については中立的な話し方をする。
・自分のことを話そうとするとき、ニュアンスまできちんと伝えようとするので、断言することを避けた慎重ないい方になる。
〇心配からの立ち直り
①行動:自己評価の高い人は比較的早めに別の行動に移ることができ、それが気分転換になって失敗を忘れてしまう。
②心理:自己評価の高い人は物事を相対化して見ることが出来るので、たった一つの失敗で全人格的に自分の価値が下がったとは思わない。
③感情:自己評価の低い人は、普段から否定的な感情に捉われていることが多い。
〇失敗の予防
自己評価の低い人は、なるべく行動しないことにより失敗も批判も受けないように行動してしまいがち。
〇成功のストレス
・環境に変化が起こった時も、それでも自分が環境を支配していると感じられれば、あまり大きなストレスを感じることはない。自己評価の低い人は、運命の力だと考えやすく、運命をコントロールすることができない以上、次の機会には恐ろしい不幸が訪れるかもしれないと考えがち。
・成功したり、賞賛を受けたラには、それに見合う働きをして責任を果たさなければならないと考えてしまう。
・成功したり賞賛を受けること自体が怖い。一つには自分自身に抱いているイメージと矛盾するからであり、もうひとつには自分にはそれに見合う責任が果たせるか不安になるから。
〇自己評価が低いことの利点
・人に受け入れられやすい。周囲の人とあまり衝突しないように、自分のほうが譲ったり、あきらめたりすることが多いため。
・謙虚で控えめな態度が好感をもって迎えられる
・批判にも耳を傾ける素直な態度が人に近づきやすい印象を与える。
〇自己評価は高くなくても構わない
自己評価は高ければよいというものではない。それよりも自己評価の度合いに見合った環境にいることのほうが大切。
〇自己評価の安定
自己評価は変化するため、「高いか低いか」だけではなく、「安定しているかどうか」がもう一つのポイント。
①自己評価高×安定‥自己評価は高く傷つきにくい
②自己評価高×不安定‥自己評価は高いが傷ついやすい
③自己評価低×安定‥自己評価は低く、現状を変えることを諦めている
④自己評価低×不安定‥自己評価は低いが、現状を変えたいと思っている
などなど、事例や実験結果も踏まえ、相当盛りだくさんな内容です。自己評価・・考え方・・性格・・、よく考えれば、どれもいわば言い換えただけかもしれませんが、行動に影響を与える重要な要素。いずれも、自分次第であり、変えることができるもの。一歩引いて自分を見る際の手がかりになりそうな内容でした。
- 作者: クリストフアンドレ,フランソワルロール,Christophe Andr´e,Fran〓@7AB7@cois Lelord,高野優
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2000/09
- メディア: 単行本
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