第4巻「カエサル ルビコン以前」。ローマ人の物語を全15巻を通して、1番の英雄といってよいユリウス・カエサルの前編です。本書は生い立ち~「賽は投げられた」で有名なルビコン川を渡った紀元前49年1月(50歳)までが描かれています。中心は、執政官の任期が満了した翌年紀元前58年から8年間続くガリア戦役。四個軍団24,000人で100万人以上のガリアを平定する任務をどのように進めたのか、軍事と政治の両面の力量の発揮が魅力的です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇ガリア戦役1年目(紀元前58年、カエサル42歳)
・ゲルマン人の脅威にさらされたヘルヴェティ族36万人がスイス・レマン湖周辺からブルターニュ地方を目指し大移動を開始。
・ヘドゥイ族と共闘関係を結びヘルベティ族を急襲し勝利。
・ゲルマン人アリオヴィストスと和平交渉するが決裂。会戦で勝利し、ゲルマン人は敗走。
・9月:セクアニ族の本拠地ブザンソンで冬営。
〇ガリア戦役2年目(紀元前57年、カエサル43歳)
・セーヌ川北東のベルギー人が2年目の相手。ガリア北東部最強のネルヴィ族との戦闘で初めて敵に背を見せ、元老院派の反撃の年になる。
・ルッカ会談(三頭会談)で翌年の執政官にポンペイウスとクラッススが立候補し、元老院派を締め出すことで合意。
〇ガリア戦役3年目(紀元前56年、カエサル44歳)
・ガリア北東部で五方面に分かれて戦線を展開
①副将ラビエヌス:北東ガリアのトレヴェリ族
③サビヌス:現ノルマンディア地方のヴェネリ族制圧
④デキウス・ブルータス:海側からヴェネティ族を攻める
⑤カエサル自身:残り全軍を率い西へ向かいヴェネティ族を攻める
〇ガリア戦役4年目(紀元前55年、カエサル45歳)
・ゲルマン民族最強のスヴェヴィ族に押し出されたウシペティ族、テンクリ族を撃破
・ライン河に橋を架け渡河
・青年クラッススがシリア属州監督の父に従いオリエントへ
〇ガリア戦役5年目(紀元前54年、カエサル46歳)
・第二次ブリタニア遠征
・エブロネス族が反旗を翻し、策に嵌った一挙に15個大隊(9000人)を失い、ガリア戦役に入って以来初めてと言っていい強烈な打撃を受ける。ガリアで初の越冬。
・紀元前53年の執政官は2人とも元老院派が当選。
〇ガリア戦役6年目(期限前53年、カエサル47歳)
・主目標のトレヴェリ族と、兵士たちが復習を誓うエブロネス族の長アンビオリジェクスの追討に東へ向かう。
・2度目のライン渡河。
・パルティアでクラッスス親子が大敗し共に死去。
〇ガリア戦役7年目(紀元前52年、カエサル48歳)
・オーヴェルニ族の名将ヴェルチンジェトリックスの消耗作戦に嵌り、絶体絶命の危機に陥るが、アレシア攻防戦で勝利し、他の人々の助命と引き換えに、ヴェルチンジェトリックスを捕らえる。
〇ガリア戦役8年目(紀元前51年、カエサル49歳)
・まだ見ていないガリア南部のアキテーヌ地方を視察
・紀元前46年に一度だけベロヴァチ族が反乱を起こしたが、それ以降ガリア人による反ローマの武力行動は全くと言ってよいほどなく、帝政時代を通じて、ガリアは「ローマ化」の優等生であり続ける。
遅咲きであったカエサルがぐんぐんと頭角を現すルビコン渡河以前。強い指揮官は敵も多いが、強さが反対派に付け入らせない市民からの支援を得ていく姿が魅力的な第4巻。全15巻の中でも第2巻ハンニバルと、第4~5巻は、とりわけワクワクする面白さに惹きこまれます。