MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。MBA講座と歩む読書生活。講座関連の書籍、講師お薦め本などを紹介。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキルなど、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

サピエンス全史(下)(ユヴァル・ノア・ハラリ)

『サピエンス全史(下)』(ユヴァル・ノア・ハラリ)

 認知革命、農業革命に次ぐ、科学革命が下巻の主テーマ。近代に至って、なぜ文明は爆発的な進歩を遂げ、ヨーロッパは世界の覇権の握ったのか。帝国に資本された科学技術の発展に伴って、「未来は現在より豊かになる」という、将来への信頼が生まれ、起業や投資を加速させる「拡大するパイ」という資本主義の魔法がもたらされたとする、「帝国、科学、資本」のフィードバック・ループと呼ばれる循環を説く内容です。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇無知の発見と近代科学の成立

・古代の知識の伝統は2種類の無知しか認めていない。①個人が何か重要な事柄を知らない場合。その場合、必要な知識を得るためには、誰かもっと賢い人に尋ねさえすればよかった。②伝統全体が重要でない事柄について無知な場合。当然ながら偉大な神々や過去の賢人たちがわざわざ私たちに伝えないことは何であれ重要ではない。

・近代の人々はいくつかの非常に重要な疑問の答えを知らないことを認めるようになると、完全に新しい知識を探す必要を感じた。その結果、近代の支配的な研究方法は、古い知識は当然不十分だとみなす。古い伝統を研究する代わりに、重点は新しい観察や実験に置かれている。現在の観察結果が過去の伝統と衝突したときには、観察結果が優先される。

・科学研究は宗教やイデオロギーと提携した場合にのみ栄えることができる。イデオロギーは研究の費用を正当化する。それと引き換えに、イデオロギーは科学研究の優先順位に影響を及ぼし、発見された物事をどうするかを決める。

 

〇科学と帝国の融合

・15~16世紀にかけて、ヨーロッパ人は空白の多い世界地図を描き始めた。ヨーロッパ人の植民地支配の意欲だけでなく、科学的な者の見方の発達を体現するもの。空白のある地域は、心理とイデオロギーの上での躍進であり、ヨーロッパ人が世界の多くの部分について無知であることをはっきり認めるものだった。

・近代のヨーロッパ人にとって、帝国建設は科学的な事業であり、科学の学問領域の確立は帝国の事業だった。

 

〇拡大するパイという資本主義のマジック

・歴史の大半を通じて、経済の規模はほぼ同じまま。大部分が人口の増加と新たな土地の開拓によるもので、一人当たりの生産量はほとんど変化しなかった。

・近代に入って、将来への信頼に基づく新たな制度が登場した。この制度では、人々は想像上の財、つまり現在はまだ存在していない財を特別な種類のお金に換えることに同意し、それを「信用」と呼ぶようになった。この信用に基づく経済活動によって、私たちは将来のお金で現在を築くことができるようになった。信用という考え方は、私たちの将来の資力が現在の資力とは比べものにならないほど豊かになるという想定の上に成り立っている。将来の収入を使って、現時点でものを生み出せれば、新たな素晴らしい機会が無数に開かれる。

■近代以前の経済:信用がほとんど発生しない→経済成長が遅い→将来を信用しない→信用がほとんど発生しない、の循環

■近代の経済:信用が盛んに発生する→経済成長が速い→将来を信用する→信用が盛んに発生する、の循環

・現在の経済のパイは、1500年のものよりはるかに大きいが、その分配はあまりにも不公平で、アフリカの農民やインドネシアの労働者が一日身を粉にして働いても、手にする食料は500年目の祖先よりも少ない。農業革命とまったく同じように、近代経済の成長も大掛かりな詐欺であった。人類とグローバル経済は発展し続けるだろうが、さらに多くの人々が飢えと貧困にあえぎながら生きていくことになるかもしれない。

 

 訳者あとがきにも関心を引く解説があります。

「サピエンスはあらゆる生物のうちで、もっとも多くの動植物を絶滅に追い込んだ、生物史上最も危険な種」

「サピエンスは、自然選択の法則を打ち破り、生物学的に定められた限界を突破し始めている」

「未来のテクノロジーはサピエンスそのものを変え、私たちには想像もつかない糸口も掴めない感情と欲望を持たせうる。サピエンスはそうした流れを止めることはできず、唯一私たちに試みられるのは、科学が進もうとしている方向に影響を与えること」

 人類の未来に興味はつきません。

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

 

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