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MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。MBA講座と歩む読書生活。講座関連の書籍、講師お薦め本などを紹介。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキルなど、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

日本の金融リスク管理を変えた10大事件(藤井健司)

『日本の金融リスク管理を変えた10大事件』(藤井健司)

 本書は、過去の事件から生じた損失や失敗の経験と、それに対する教訓を糧として発展してきた、金融リスク管理の歴史をまとめた一冊です。序章+10大事件の計11テーマが比較的コンパクトに書かれています。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇プラザ合意(1985年)

 ・米国の双子の赤字解消のため、G5各国が為替市場協調介入を実施。85年9月に1ドル235円から86年1月に152円、88年1月には121円まで米ドル安・円高が進行。

・日本は円高不況に対処するため、86年1月~87年2月の間に公定歩合を5回、2.5%引き下げ、これがのちのバブル経済発生の一因となった。

 

〇BIS規制とリスクアセット(1988年)

バーゼル銀行監督委員会は、各国ばらばらに制定されていた自己資本比率規制を国際的に統一し、BIS8%規制が成立。

・銀行の主要業務である貸出資産に、抱えるリスクの視点を織り込むきっかけとなり、銀行が抱える市場リスク、業務上生じるオペレーショナルリスクをそのリスクに応じて考慮しようとする動きや信用リスク資産に対するさらに精緻化しようとする動きに繋がった。

 

〇VaR革命とVaRショック(1993~2003年)

・市場業務から生じる損失の可能性に備えて、現在保有している金利や為替、債券や株式といった資産負債のポートフォリオから、こうした市場のパラメータが変化することで、どれだけの損失を被る可能性があるのかを、一定期間に一定の確立で被る最大損失額の形で表そうとするVaRを選択制で認められるようになった。

 

大和銀行ニューヨーク支店損失事件と独立したリスク管理(1995年)

 ・不正トレーダーによる1,000億円を超す巨額損失問題が発生。各社は、市場業務のリスク管理体制を急ぎ、フロント部署から独立した市場リスク管理部署の設立が業界標準となった。

 

〇日本の金融危機とジャパン・プレミアム(1997~1998年)

・邦銀の巨額不良債権、金融機関破たん処理の枠組み(セーフティネット)の未整備、大手金融機関の破たんなどにより、インターバンク市場でジャパンプレミアム(邦銀への上乗せ金利)が発生。ジャパン・プレミアムは、97年秋には1%を超えた。 

 

メガバンクの誕生と持株会社リスク管理(2000~2002年)

・99年に金融持ち株会社が解禁。97~98年の金融危機の後、大手銀行は金融危機後の金融界の覇権を目指すべく、大規模な経営統合に打って出た。

・大手21行体制は、4メガバンク体制に変わった。 

 

〇システム障害と危機管理体制(2001~2002年)

・ニューヨーク同時多発テロと大手銀行の合併時にシステム障害が相次いだことを受け、各行は業務継続計画と危機管理体制の整備を急いだ。 

 

バーゼルⅡと内部格付手法

・BIS規制が全面改訂。信用リスクにおける内部格付手法の導入やオペレーショナルリスクに対して新たに自己資本を賦課するなど、随所に新たな考え方が導入された。 

自己資本比率規制をリスクベースで捉えようとする姿勢と、金融業が複雑化する中で、民間金融機関自身のリスク管理実務を自己資本比率規制に活用することで、金融業の健全性を確保しようとする考え方があった。

 

個人情報保護法と情報セキュリティ(2004年)

・2005年の個人情報保護法施行により膨大な作業が発生。顧客情報の紛失を公表する金融機関が相次いだ。情報漏えい事例も後を絶たず、情報セキュリティは金融機関の重点課題となった。 

 

〇金融再生プログラムと不良債権最終処理(2003~2005年)

 ・邦銀不良債権処理が最終段階へ。金融庁は2002年10月に金融再生プログラムを発表。大口債務者を対象として期中にチェックを行う特別検査を実施したほか、会計処理上の対応厳格化を求めるとと同時に、公的資金を注入した大手銀行に対して、収益目標を課し、目標未達の銀行に対しては、業務改善命令を発出する等して、経営改善を求めた。

 

バーゼルⅢとリスクガバナンス(2009年~)

バーゼル自己資本比率規制の改訂であるバーゼルⅢを導入し、金融規制を一斉に強化。最低所要自己資本8%は変えないが、新たに2.5%の資本を資本保全バファーとして追加、各国経済動向と銀行融資の伸びの関係に応じてカウンターシクリカルバファーを追加、G-SIBサーチャージとして1~2.5%の追加資本を求めることとした。 

 

  ざっと四半世紀を紐解くだけでいろいろあった金融業界。規制は強まり、より精緻に論理立てされた世界に向かっていることは間違いありません。90年代後半の金融危機リーマンショックなど、金融機能が正常でなくなったときの経済への影響力を考えるとやむを得ない流れかと思います。

日本の金融リスク管理を変えた10大事件

日本の金融リスク管理を変えた10大事件

 

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