MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット)

『LIFE SHIFT  100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット)(〇)
 これは、衝撃的な内容。「2007年生まれの人の半分は107歳まで生きる」「平均寿命は10年に2年以上のペースで延びている」「今20歳の人は100歳以上、40歳以上の人は95歳以上、60歳以上の人は90歳以上生きる確率が半分以上」。。。

 この数字を聞いただけで、自分の生き方、パートナー、子供、親に対する関わり方も変わってくるのではないでしょうか。これまで生きてきた方の生き方が参考にならなくなる世界。自分で自分の生き方、働き方を考えないといけない。求められる能力も変わっていくので新たな知識・能力を身につけ続けないといけない。国の制度も過去・現在に対応するだけでなく、未来に向かってどんどん変わらなければならない。会社もそう。。。とにかく、考えることがたくさん湧いてきます。読書勉強会本としても議論百出となる良書だと思います。

 

(印象にのこったところ‥本書より)

〇キャリア

 仕事を長期間中断したり、転身を重ねたりしながら、生涯を通じてさまざまなキャリアを経験する。そんなマルチステージの人生を実践する。長寿を恩恵にする方法はこれしかない。変えるべきは、何よりも時間の組み立て。

 

〇引退時期は?

 100歳まで生きるとして、勤労時代に毎年所得の約10%を貯蓄し、引退後は最終所得の50%相当の資金で毎年暮らしたいと考える場合、何歳で引退できるか?長寿化の恩恵に最大限浴したければ、80歳まで働くことが求められる。それが厳然たる事実。労働市場が急速に変化する中で70代、80代まで働くようになれば、手持ちの知識に磨きをかけるだけでは最後まで生産性を保てない。

 

〇余暇

 人生が短かった頃は、余暇をもっぱらリラックスのために用いるのが理にかなっていたが、人生が長くなれば、余暇は、新しいステージに向けて自分を再創生するための投資の時間にもなる。人生が長くなれば、変化を経験する機会が増えるので、選択肢を持っておくことが一層重要になる。

〇エイジ(年齢)とステージ

 今日の社会は、エイジとステージが一致することを暗黙の前提としている部分が多い。企業の人事制度、マーケティング、法律にも、この前提がしばしば深く根を張っている。そうした制度も変えなくてはならない。

 

〇家庭と仕事の関係

 長寿化により、子育ての後の人生が長くなれば、ジェンダーの不平等が縮小し、私的な人間関係や結婚生活、子育てのあり方が大きく変わるかもしれない。日本の男女平等度は調査対象145国中101位。100年ライフの恩恵を最大限大きくするためには、この状況を解消することが避けて通れない。

 

〇人事部

 企業にとって、とりわけ人事部門にとっては、すべてが悪夢でしかない。企業は画一性を好む。働き手が望むほどの柔軟性を発揮できる企業は、恐らく一握りにとどまる。

 

〇政府が取り組むべき課題

 人々が自分の人生のさまざまなステージを自由に築けるように、法規制の枠組みを整備することが政府の重要課題になる。もっとも手強い課題は、おそらく健康格差の問題。貧しい人達も長く生産的な生涯を送れるようにするためには、どうすればいいのかという問題。

 

アイデンティティ

 人生が長くなるほど、アイデンティティは人生の出発点で与えられたものではなく、主体的に築きうるものになっていく。私たちは、自分がどのような人間か、自分の人生をどのように組み立てたいか、自分のアイデンティティと価値観を人生にどのように反映させるのかを一人ひとり考えなくてはならない。

 

 序章をまとめただけでこれだけ。第1章以降は、こうした論点を一つひとつ解説していくことになります。人は死を本能的に避けたいと考えているでしょうから、遠い未来のことは意識しないと具体的に考えることはないと思います。あらためて、人生100年の生き方戦略を考えてみる意味は大きいと思いました。「何歳まで生きるか」この前提条件を認識するだけで、自分の未来への考え方、子供世代への接し方も自然と変わってくるのではないでしょうか。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

 

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