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MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。MBA講座と歩む読書生活。講座関連の書籍、講師お薦め本などを紹介。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキルなど、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

日本の年金(駒村康平)

『日本の年金』(駒村康平)

 日本の年金制度。財政的にもたないのでは、つぎはぎの制度でとにかく理解できない、果たして自分は何歳からいくらもらえるのか、今の制度を信じていいの?こと、年金に関しては、否定的な意見しか出てこない方も多いのではないでしょうか。結局、一個人としてはどうすればいいのか。本書は、日本の年金制度を取り巻く状況、年金制度の今と未来。年金制度の概要がコンパクトにまとめられており、考えるべきことを考えるための足掛かりとなる一冊でした。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇日本の人口

 2004年をピークに徐々に減少。高齢化率(65歳以上人口比率)は、2060年に40%で高止まりする見込み。65歳以上の高齢者数のピークは2042年、75歳以上の高齢者数のピークは2055年頃。

 

〇2025年

 政府が警戒する当面の社会保障危機は、団塊世代が75歳に到達する2025年。

 

〇年金も正社員を前提に

 皆年金・皆保険というモデルは、非正規労働者増えることを前提としていなかった。厚生年金と健康保険の適用対象者から外れた非正規労働者国民年金国民健康保険に加入することになったが、定額のため低所得者ほど負担が高くなり未納者が急増。2013年度において、国民年金の未納率は39%、国民健康保険の未納率は18%。

 

〇拡大する財政赤字

 社会保障給付費は2012年度には、約110兆円に達し、主な財源は社会保険料60兆円と国庫負担30兆円。社会保障給付費の国庫負担は毎年約1兆円ペースで増加。社会保障以外の国の歳出は約90兆円、税収は約42兆円。毎年40兆円以上のペースで財政赤字が増え続けている。

 

〇改革を繰り返した年金制度

 厚生年金は戦時中に成立。1954年に新厚生年金として再出発。国民年金は1961年に自営業者や零細企業の労働者を適用対象として始まり、皆年金となった。1985年の年金改革により、国民年金と厚生年金、共済年金の横断的な改革がおこなわれ、全国民を対象とする基礎年金制度が導入された。

 

非正規労働者への年金適用を拡大

 短時間労働者に対する厚生年金や健康保険の適用を拡大することで、被用者保険の恩恵を受けられない非正規労働者社会保険を適用し、それによって年金の未納を防ぎ、セーフティネットを強化することになる。一方、外食・流通産業から企業の負担が増加することへ反発。短時間労働者への被用者保険の適用拡大は、正規・非正規労働者の処遇と均等化、国民年金の未納を解消するために、極めて重要であったにもかかわらず、企業側の抵抗を受けた政府が妥協したため、当初のプランから大きく後退した。

 

〇先進国共通の問題

少子高齢化のなかで、いかに年金財政の維持安定性を確保するか

②雇用形態が多様化する中で、非正規労働者を中心に国民年金の未納者が急増しているが、これにどのように対応するか

③無年金・低年金高齢者の生活保護受給者が増加する中で、低所得高齢者への生活保障をいかに確保するか

 

〇未納者はなぜ増加しているのか

 自営業者と家族従事者は第一号被保険者の22.2%にすぎない。第一号被保険者の多くが非正規労働者や無職。90年代半ばから急増した秘跡労働者にとって、国民年金は、①保険料が給与天引きではなく、②賃金比例ではなく、定額負担であり逆進的であったこと、③労使折半ではなく負担が大きかったことから、未納に繋がったと言える。

 

〇年金制度をどうするのか

・年金改革は、政府にとっては選挙民からの支持を失う鬼門。

・技術的には、年金給付の引き下げ方法は、支給開始年齢の引き上げ、年金計算式の変更、物価や賃金上昇・経済成長があったときにそれを年金額にどのように反映させるかというスライド方式の変更(物価が上昇しても年金を据え置く等)。

・分かりやすい手段を使うほど政治的な反発が強まるので、各国ともいかに「わかりにくい」方法で給付引き下げを行うかが、政府の腕の見せ所になっている。

・賦課方式の年金財政は、①保険料の引き上げ、②給付の引き下げ、③労働者数を増加させる、④経済成長により賃金を引き上げると言った方法で安定化させる。

・保険料の引き上げが困難な状況になると、年金制度の中で対応できるのは、②の給付の引き下げ。そのためには、給付乗率の引き下げといった年金計算式の変更、再評価や受給中のスライド率の引き下げ、支給開始年齢の引き上げといった「パラメータの調整」が選択肢になる。

・パラメータの調整で各国の年金開会句は、①スライド率の見直し、②支給開始年齢の引き上げ、③給付と負担の対応関係の見直し、④家族ケアの反映

 

 年金問題は歴史と政治の問題がなければ、「出と入り」の問題で理論値で割り切ることになるかもしれませんが、制度の歴史がつくり上げてきた個人の利害とそれが政治に密接に結び付くこから問題が複雑化してしまう状況にあります。この矛盾を解決しないと問題は将来に先送られるだけ。ハードランディングかソフトランディングできるのか、混沌とした状況にある難しいテーマです。

日本の年金 (岩波新書)

日本の年金 (岩波新書)

 

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