『なんとかしたい「ベテラン社員」がイキイキ動き出すマネジメント』(片岡裕司)
2016年から10年間で大企業では約340万人の50代非管理職が生まれるそうです。多くの企業で課題認識がある、ベテラン社員のマネジメント。本書は、50歳目前~60歳以降も働き続ける人が元気で職場を活躍する状態をどうやって作りだしていくかをテーマにした一冊です。著者が研修で使用するフォーマットを使いながら、考え方のステップを踏んでいくスタイルです。考え方はベーシックですが、実際に声掛けして実践していくのさまざまな困難があると思います。現在取り組んでいるコーチングとの相性は非常に良さそうです。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇イキイキ働くための3要素
①やりがいのある仕事
②上司との信頼関係
③職場の同僚との良好な関係
〇ベテラン社員の3タイプ
①ポストオフ
②職人タイプ
③のんびりタイプ
〇人を動かす第一歩
「相手の考えや自分は正しいと思っている根拠を理解すること」。人の行動には必ず意図がある。ベテラン社員の行動を変えていくには正当化されている理由を崩していく、取り換えていく必要がある。マネージャーに求められるのは、ベテラン社員が自分自身に気付くきっかけを提供し、新たな価値観を受け入れさせていくという取り組み。
〇ベテラン社員に対する取り組みの変遷
①出向アプローチ(70~80年代)
②成果主義を中心とした制度アプローチ(90年代)
③リストラアプローチ(00年代~)
⇒時代は、第4のアプローチへ
〇54歳でモチベーションが変化
54歳以降になると「なるべく今の仕事を続けたい」「今の能力で対応可能な仕事がいい」という気持ちが、挑戦したい、成長したいという気持ちを大きく上回るようになる。
〇ベテラン社員の行動を変える枠組み
①土台をつくる‥向き合い、気づき、知り合う
②目標を設定する‥「与える」から「考えさせる」へ
③心に火をつける‥プライドをシフトする
④達成に向け支援する‥仲間として支援する
⑤フィードバックする‥感謝と期待を伝える
すべての間違い、すれ違いの原因は、ベテラン社員の働き方に対する共通理解が組織に無いこと。ベテラン社員は少し背中を押せば、大きく変化する。
〇土台をつくる(相手のホンネを知る)
思い出深い経験を聞いてみる。そしてその経験から何を学び、何を大切にしていたかを共有する。一人ひとりに個性的な人生がある。そんな違いを受け止めるところから、人間関係の土台ができあがっていく。現状活躍できていない人に共通するのは、「昔のことしか思い出せない」という現実。社会人としてスタートした時点の気持ちに寄り添っていく。自分のキャリアを過去から追体験するように、一つひとつ紐解いていく。そうすると意思決定の裏に潜む自分自身の価値感にも気づくことができる。
〇目標を設定する
課題やテーマはマネジャーが与えてくれるものという常識を打破すること。ベテラン社員は一旦受け身になるとどんどん受け身の傾向が強くなる。主体的に考えてもらうには情報共有がスタート。「〇〇さんはどう思いますか」「〇〇さんはどうしたいですか」と問いかけていく。
〇心に火をつける
「キャリアと年齢に関する古い常識の壁」⇒「思いと志の壁」⇒「自分を守ろうとする心の壁」⇒「上司と職場の壁」のサイクルを断ち切る。周囲からのポジティブな反応がイメージできなくなると、人は一歩を踏み出せなくなる。
〇達成に向けた支援
評価目線から支援目線への変化。「褒める」ではなく、「尊敬する」こと。
〇フィードバックする
自分の行動に対し何も反応がない状態が長く続くと、自分は必要とされていないのではないかということをどんどん学習してしまう。「ありがとう」と「もっと」で本音の対話をする。人のため、周囲のためを強く意識することが自分が自分の枠を超えていく原動力になる。
年上部下を目の前にすると、年下部下とは違ってひと言を躊躇することがあるのではないでしょうか。どのようにイキイキと働いていただくのか。これからは一企業の問題ではなく、社会的な問題になっていく時代ですね。70歳、80歳まで働く時代を迎えようとしている時代。50歳でモチベーション・・と言っている時代ではなくなってくるのではないでしょうか。企業も働き手もどちらも変化が求められるのだと感じます。
なんとかしたい! 「ベテラン社員」がイキイキ動き出すマネジメント
- 作者: 片岡裕司
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2016/10/13
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