『ムーブ ユア バス』(ロン・クラーク)
本書が伝えたいイメージは表紙の絵に集約されています。職場をバスにたとえ、それを動かしている社員。社員には、①ランナー(期待以上のことをやってのける人)、②ジョガー(できる範囲で仕事をする人)、③ウォーカー(引っ張られないと動かない人)、④ライダー(座っているだけのお荷物)がいる。ドライバー(組織のリーダー)である読者はどのように、これらの社員を動かしていくのか。具体的にどのように伝えるのかという細部までは切りこんでいませんが、パッとイメージできるという点では、とてもイメージしやすい内容だと思います。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇バス
バスとは、要するに事業のこと。このバスにはエンジンもガソリンタンクもない。組織は人手動く者なので、このバスも人の足で動く。バスが目標に向かって走るかどうかは、ひとえにバスに乗る人にかかっている。
〇バスに乗る4タイプ
①ランナー(ランニングでバスを動かす)
・成績優秀者で、その筋力(実力)でバスを動かす。
・ランナーに対して少し多めにむるくらいの余裕を持った方がいい。安易にランナーのやる気を削ぐべきではない。ランナーが挫けて速度が落ちるとバスの速度も同時に落ちてしまうのだから。
・間違った方向へ進むランナーは厄介。バスを動かす力を持っているので、逆走させかねない。ランナーは優秀だから放っておいて良いという考えは、ベストではない。
②ジョガー(ジョギングでバスを動かす)
・働き者で、いい仕事をするがランナーには及ばない。バスのスピードを下げることはないが上げることもない。
・ジョガーは周囲の人のエネルギーを吸収する。ランナーに囲まれると速度が上がり、ウォーカーに囲まれると速度が落ちる。
③ウォーカー(ウォーキングでバスを動かす)
・足を動かしてはいるものの、推進力になっていない。問題点に気付くと指摘せずにはいられない。それは問題を解決したいからではなく、自分が責められないように先手を打つため。自分のことばかり考える傾向がある。
・予算が取れたらまずランナーに充てる。ウォーカーが文句を言って来たら、何事も働き次第だと言う。手厳しすぎる、気まずいと思うかもしれないが、そうしなければランナーはやりがいがないと去っていき、チームはウォーカーだらけになる。あなたがドライバーなら、ウォーカーにハンドルを取られないように気を付けること。気を抜いてはならない。
④ライダー(乗っているだけ)
・バスに乗っているだけのお荷物
・ライダーはみな解雇されてしまいそうなものだが、そうならないのは、ライダーが目立たないように細心の注意を払っているから。業務の中には成果を測る指標がないもの、企業の実績と関係ないように見える者があるから。
⇒ドライバーは、ライダーを歩かせるために時間と労力を注ぎ込むのはやめて、その分をランナーに向けたほうがいい。バスを動かしているのは彼ら。一人のライダーを歩かせようとするより、ランナーの足を止めないことのほうが遥かに大事。
〇バスを加速させる17のルール
①早めに行く
②身なりを整える
③挨拶する
④ランナーの隣に座る
⑤助けを求める
⑥批判を受け入れる
⑦やれることをやる
⑧相手の意図をくむ
⑨話す以上に聞く
⑩よそ見をしない
⑪後ろ向きの話をしない
⑫ランナーを盛り立てる
⑬ぐずぐずしない
⑭解決策を見つける
⑮身のほどをしる
⑯信頼を築く
⑰細部に気を配る
MBAでは喩えとしてよく使われる「誰をバスに乗せるか」という視点。社内改革や新規事業の立ち上げとしては、まさにメンバー選定が大切な要素。一方、すでにいるメンバーで会社を動かすしかないという日常では、誰にどの役割を担ってもらい、どのように成果を出してもらうかに注力する毎日。ドライバーとしての悩みは尽きない訳ですが、本書は会社のメンバーを俯瞰してみる視点の参考として役立つ一冊だと思います。