『具体と抽象』(細谷功)<2回目>
前回はクリティカル・シンキングを意識して読んだ本書。今回は、現在勉強中のコーチングを意識して読んでみました。
コーチングでは、「幸せも不幸も具体的なエピソードなしには存在しない」「抽象ではコーチングはできない」と言われていますが、一方、過去から未来への時間軸、クライアント・コーチ・第三者の視点を行き来し、具体的なエピソードから抽象化してジャンプしながら、具体化するところを探す思考も必要です。
本書は、抽象のメリットに焦点をあてて書かれています。コーチングで活用できる抽象はどんな場面だろうと想像しながら読むと、具体と抽象それぞれのメリットを活用できる幅が広がりそうです。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇具体と抽象の概念
■抽象
・複数の具体を「N:1」でまとめたものが抽象。
・抽象化とは一言で表現すれば、「枝葉を切り捨てて幹を見ること」「特徴を抽出すること」。
・抽象化とは複数の事象の間に法則を見つける「パターン認識」の能力。
・抽象度が高い視点の人ほど、一見異なる事象が「同じ」に見える。
■具体
・具体のレベルは、基本的に「個別・バラバラ」の世界。
・抽象度が低い視点の人ほど、すべてが「違って」見える。
■具体⇔抽象
・具体⇔抽象という関係は、相対的に連続して階層的に存在する。
・たとえ話のうまい人は「具体→抽象→具体」という往復運動による翻訳に長けている。
〇具体と抽象によるコミュニケーションギャップ
具体は「わかりやすさ」が特徴。一方、抽象の世界は、具体の世界と違って見えている人にしか見えないいくつかの具体をまとめた上位概念。抽象が分かる人は「具体的には?」と聞かれれば、答えられるが、「具体」しか分かっていない人が上位概念で「つまり?」と聞かれても答えられない。「具体レベルのみに生きている人」とのコミュニケーションギャップが生じる要因。
〇永遠にかみ合わない対話(コーチングに限らずありがちなマズイ状態)
・「抽象度のレベル」があっていない状態で議論しているために噛み合わない。
・永遠の議論の大部分は、「どのレベルの話をしているのか」という視点が抜け落ちたままで進むため、永遠にかみ合わないことが多い。
・「変えるべきこと」と「変えざるべきこと」の線引きを抽象度に応じて分けることで論点が明確になる。
〇「やること」と「あるべき姿」
・やること(to do)は具体的で目に見えやすいので考えるのが比較的容易だが、あるべき姿(to be)を考えるには、「想像と創造」のための抽象化能力が必要になる。
〇抽象の独り歩き
・人間はどんなものにもパターンや関係性を見つけようとする習性がある。意味のないランダムなものもパターンや関係性を見つけようとするバイアスがかかってしまうことがある。
・「抽象とのリンク」が切れ、具体レベルのみが「独り歩き」することがある。
コーチとクライアント、双方の具体と抽象をイメージしながら話がどこを行き来しているのか意識してみると、話の内容がまるで立体的な空間を行ったり来たりしているような感覚になるのかもしれません。具体的に掘るところ、抽象化して時間軸や視点をジャンプするところ、そんな風に自在に話をしてみたくなります。日々の対話が訓練になりますが、その訓練のレベルを上げるためにも、こうした見方がためになると感じました。