MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。MBA講座と歩む読書生活。講座関連の書籍、講師お薦め本などを紹介。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキルなど、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

人工知能と経済の未来(井上智洋)

人工知能と経済の未来』(井上智洋)(〇)

 この本の良さは、帯の孫泰蔵さんのコメントに現われていると思います。「この本凄いです。マジでこの人の言説が今一番スゴイ。未来を論じるための知識・アプローチ・言説の明快さ、すべてに完全に負けたー!って思いました。これは絶対によんだほうがいいです」。サブタイトル~2030年雇用大崩壊~の背景にある動きとは何か。どんな時代が訪れるのか。未来をイメージするために、押さえておきたい領域です。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇汎用人工知能

 2030年以降の人工知能は経済や社会のあり方を大きく変えてしまうのではないか。今の世の中に存在する人工知能はすべて「特化型人工知能」。ちょうど2030年ごろに「汎用人工知能」の開発の目処が立つと言われている。2015年頃から汎用人工知能の世界的な開発競争が始まっており、この技術を最初に実現し導入した国が世界の覇権を握ってしまう可能性がある。汎用人工知能が普及した世界に是非とも導入すべきだと考えているのは、「ベーシックインカム」(収入の水準によらずにすべての人に無条件に最低限のせいかつひを一律に給付する制度)。

 

2045年AIが人の知性を超える

 コンピュータが全人類の知性を超える未来の時点である「シンギュラリティ」。AIが人間の知性を凌駕するほどに発達するなら、企業は生身の人間よりもAIやそれを搭載したロボットを雇うようになる。

 

イノベーションに関する2つの相反する効果

①肩車効果

 既に存在する技術のアーカイブ(蓄積)を参照することによって新たな技術の発見が容易になる効果のこと

②取り尽くし効果

 簡単な発見はすぐに成し得るのでイノベーションが進むにつれて、新たなアイデアの発見が難しくなっていくこと。

⇒汎用目的技術が現われてからしばらくは「肩車効果」が優位に働き補完的発明が続くが、やがてそのような発明はネタ切れを起こし、イノベーションは枯渇していく。

 

〇技術的失業

①摩擦的失業:労働移動に時間がかかるために発生。

②需要不足による失業:労働移動する先がないために発生。

⇒特化型AIが雇用に与えるインパクトは、紡績機や織機といったかつての技術と比べて、量的には凌駕する可能性があるものの、質的には変わるところがない。マクロ経済政策が適切に実施され、労働移動が速やかになされている限り、失業がとめどなく増大するような事態には至らない。

 

第四次産業革命後の経済

・汎用AIの出現は、第四次産業革命を引き起こすだろう。

・特化型AIはこれまでの技術とは質的には同じであるものの、量的には大きなインパクトを経済に与え、経済成長を促進し技術的失業をもたらす危険性がある。

・汎用AIの出現は経済構造を大きく変革してしまうので、質的にもこれまでの技術とは異なるインパクトを経済にもたらす。金融政策で技術的失業を減らすことはできないかもしれない。

第四次産業革命でカギとなる技術、すなわち汎用目的技術の候補としては、AI、モノのインターネット(Iot)、3Dプリンターが挙げられる。

・汎用AIは、まずはパソコンやスマホ上の高度な「パーソナル・アシスタント」として活躍するだろう。

⇒現在のパーソナル・アシスタントも音声でお願いすると飛行機やホテルの予約をしてくれる。しかし、それどころではなく、「わが社の決算書を作ってくれ」とか「わが社のホームページを作ってくれ」とか「自動車産業の最近の動向を10ページほどの報告書としてまとめてくれ」と命じるだけで、それぞれの作業をたちどころにやってくれるようになる。従って、企業の事務職が根こそぎ消滅する可能性がある。

 

〇機械に奪われにくい仕事

クリエイティヴィティ系(創造性)

②マネージメント系(経営・管理)

③ホスピタリティ系(もてなし)

 

〇AI教授

 AI教授が教室で活躍するようになれば、一部のホスピタリティに秀でた「スーパースター教授」以外の生身の教員は駆逐されてしまうでしょう。AI教授に高価なロボット式の身体は必ずしも必要ない。初音ミクのような3Dホログラムのキャラクターに喋らせるだけで十分。生身のおっさん教員よりもそっちのほうがよっぽど学生の学習意欲を高められそう。

 

〇執筆

 比較的勤勉な生身の経済学者が半年かけて1本の論文を書くのに対し、汎用AIは例えば1時間に1本の割合で論文を仕上げていく。AIが人間に変わって経済学者となる公算はかなり大きい。社会学、心理学、自然科学全般に当てはまる。

 

〇全人口の1割しか働かない未来

 2045年には、内実のある仕事をし、それで食べていけるだけの収入を得られる人が1割程度しかいない可能性がある。これは単なるもそうとして片づけることのできない現実的な未来図。ロボットの価格がいくらでも安くなる可能性があるのに対し、人間の賃金は最低賃金未満にならない。最低賃金という下限に突き当たった時、もはや賃金下落による雇用の増大は期待できない。現在、ソフトバンクのPepperのレンタル価格は1,500円/時、東京の最低賃金は900円/時。その差約600円。

 

 果たしてどんな未来が来るのか。食べていけるだけ収入を得られる1割に入っているのか。今の知識・スキルをベースにしたいが、それだけにこだわると危険。昨年読んだ『LIFE SHIFT』とも非常にマッチする内容でした。ほんと、どうなるのだろう?

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