『アドラー心理学を語る2 グループと瞑想』(野田俊作)
シリーズ全4巻のうちの第2巻。日本におけるアドラー心理学の第一人者が、対話形式で平易に著す実践講座。相談施設を開業されている著者がアドラー心理学が現場でどのように使われているかがまとめられており、より実践的な内容です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇グループ・セラピーの利点
・フロイトの影響で、面接は一対一でなければならないという信仰がある。
・聴衆の前で個人カウンセリングを行う、オープン・カウンセリングでは、治療者は観衆が作りだすグループ・ダイナミックスを絶えず意識に利用して治療に役立てる。
・人間は、自分に向かって語られることよりも、自分について他人同士が語り合っていることの方に耳を傾ける。だから、本気でクライエントに伝えたいことは、クライエントに向かって言うよりも、聴衆に向かって言うことが多い。
・聴衆達も大体同じような問題を抱えている人が多いので、身につまされ、自分たちの問題について理解を深めて成長してくれる。
〇自己受容のためのカウンセリング
・ない袖は振れないので、それの人が本来持っていたものしか使えない。
・いい見出しのついた引き出しを開けると、中には美点が入っている。いい見出しを付ければ、それが本当に見つかる。
⇒「私はとても暗い性格なんです・・」→別のもっと肯定的なニュアンスのある言葉に言い換える(あなたはいつも他人の気持ちを考えて暮らしておられるんですね。つまり思いやりが深くて、謙虚で感受性が豊かで親切なんですね)。
・ただ、自分のことが好きになるだけで、半分以上の問題は解決する。
〇代替案
われわれが知るべきは、われわれがどんなに間違っていたかではなくて、どうすればいいか。過去や現状を洞察しても仕方ない。そんなことはすっとばして、いきなり、より良い生き方を学んだほうが早い。自分の中に問題点を探せば、いつまでたっても無限に見つかる。雑草を根絶やしにしても無駄。まずでっかい花を咲かせてしまえばいい。そうすれば雑草は気にならなくなる。
〇不安の処理
不安は未来のことを考えたときに起こる感情。憂鬱は過去のことを考えたときに起こる感情。未来や過去は考えの中にしか実在しないので、不安と憂鬱は思考と関係してしか起こらない。だから、思考ではなくて「今ここで」起こっていることの方を見ると消えてしまう。今ここで起こっていることを見るというのは、つまり瞑想のこと。
〇怒りと悲しみ
怒りという感情は、実は悲しみという感情と同じ。クライエントが怒っているときには、「あなたは本当は悲しくないのではないですか」と尋ねる。怒りと悲しみとは実は同じものなので、どちらにでも容易に変換できる。怒っている人はきっと悲しんでいるし、悲しんでいる人は多くの場合は怒っている。
〇劣等感と瞑想
劣等感とは、理想と現実のギャップのこと。劣等感とは、他人と比べて自分が劣っているという感じではなくて、理想の自分と比べて現実の自分が劣っているという感じ。
瞑想すると感情的に安定する。理想がなくなり劣等感がなくなると自己受容が起こる。自己受容ができないのは、理想の自分から現実の自分を引き算して採点するから。理想が無ければ引き算もなくて、ありのままの自分が満点になる。
〇瞑想の意義
①正しく状況認識ができるようになる。
②劣等感をなくし自己受容を可能にする。
③共同体感覚を目覚めさせる。
④ライフスタイルが変わる。
〇抑圧や自縄自縛
自分の中には問題ないことを知ってほしい。それから自分と世界との間にも問題はないことを知ってほしい。ただあるのは、自分でつくりだした問題だけ。ありもしないところから手品のように取り出した、実際には存在しない架空の問題があるだけ。劣等感に悩み、人目を気にし、感情に支配され、不自由な生き方をしているのは、ほかならぬ自分自身。自分だけの一人芝居だということ、自分以外には犯人はいないのだということ、すべて自分が決断して選んで作りだした不幸なのだということを、分かってほしい。
帯にあるグループ・セラピーと瞑想法。どちらも興味あるテーマ。ともに、チームフローで体験し、効果があることを実感していただけに、本書を読んで、「なるほど!」と思うところが多々ありました。しかし、特にグループ・セラピーは自分でやるには難易度特高。せめて瞑想だけは取り組んでみたいと思いますが、以前、瞑想講座を受けてから、かなり間が空いたので、またやり直しな感じです。