『アドラー心理学を語る3 劣等感と人間関係』(野田俊作)
シリーズ全4巻のうちの第3巻。日本におけるアドラー心理学の第一人者が、対話形式で平易に著す実践講座。相談施設を開業されている著者がアドラー心理学が現場でどのように使っていらっしゃるかがまとめられており、実践的な活用方法がイメージできる内容です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇感情の使い方
・怒りという感情は、相手を支配することと深く関係がある。他人を自分の思い通りに動かそうと思う人は怒る。
・憂鬱というのは、過去の出来事・失敗をくよくよ考えること。それをやっても何も変わらない。
・不安というのは未来の出来事をくよくよ考えること。考えても起こることは起こるし、起こらないことは起こらない。だったら、考えないほうが得。
・アドラー心理学が面白いところは、人間の行動の原因を考えないところ。どんな原因でこうなっているかということは絶対考えない。どんな目的でこんなことをしているのかということだけしか考えない。
〇自己受容
「何が与えられているかが問題ではなく、与えられているものをどう使っているかが問題」。我々がどのような性格を持っているかということは、実はたいした問題ではない。持っている性格をどのように使うかということこそが、本当に大切なこと。自分の不完全さは知っているけれども、そのことについて自分を咎めない。
〇他者信頼
他人を信頼する。この世界を信頼する。自分の運命を信頼する。外側のすべてを信頼するということ。日本人はよく他人と自分を比較する。これは他人に対する基本的な不信感、自分に対する自信のなさの裏返し。自分のことが好きであり、他人のことを信頼している人は、自分と他人とを不必要に比較しない。
〇貢献感
自分は役に立つということ、他の人たちの役に立つということを感じていなければならない。
〇アドラー心理学の考えるパーソナリティー
この世の中で変えることができる人間は、自分一人。
・〇高い自己評価 ⇔ ×低い自己評価
・〇世界への基本的信頼 ⇔ ×世界への基本的不信
・〇集団への所属感 ⇔ ×集団からの疎外感
・〇責任感 ⇔ ×無責任
・〇貢献感 ⇔ ×利己主義
・〇勇気 ⇔ ×臆病
・〇誠実 ⇔ ×欺瞞
〇悩むのは自分を正当化しているだけ
子供を救いたいんだったら、子供のことを悩まないこと。子供のことを悩んでいる限り、自分の世間体とか、自分の評判とかのほうを子供より大事にしている。そうでなければ、悩まない。それが悩みの目的。悩みの目的は、「かわいそうな私、悪いあの人」をすること。つまり、子供が問題児になったのは自分の責任ではないことを周りに示すこと。
〇ライフスタイル(生命・人生・生活の型)
ライフスタイルの発達は10歳頃で止まる。なぜライフスタイルが変わらないか。これも本人の決断。今更別のスタイルを取り入れるのは不便だから、不安だから、これでいこうという決心がある。逆に言えば、この決心を取り消せば、ライフスタイルは変わる。
〇人間関係
「人間の問題とはすべて対人関係の問題である」。良い人間関係とは、縦の関係をやめて、横の関係に入ること。
〇縦の人間関係から横の人間関係へ
横の人間関係を保つということをはっきりと意識し、それを学んでいけば、怒りだとか、その他の不合理な感情を使う必要がなくなる。逆に、怒りだとか不安だとか、憂鬱だとかいう感情が親子関係だとか夫婦関係だとか、その他の人間関係の中にいつも出てくるということは、自分自身が縦の人間関係を作ろうとしている証拠。それをまずチェックして欲しい。人よりも上に立とうとしているのではないか、縦関係を目指そうとしているのではないか。99.99%そうです。およそ縦の関係があるときに、我々の感情は騒ぎ出す。
〇良い人間関係
・〇尊敬 ⇔ ×尊重(相手を評価し優れていると尊重)
・〇信頼 ⇔ ×信用(基本的には相手を信じていない)
・〇協力 ⇔ ×保護・干渉
・〇共感 ⇔ ×同情(相手より上位に感じている)
・〇話し合い ⇔ ×思いやり(暗黙の合意を求めている)
・〇平等 ⇔ ×無差別
・〇寛容 ⇔ ×独善
・〇主張的 ⇔ ×攻撃的または非主張的
このシリーズ本は、現場感覚がイメージしやすい内容であり、アドラー心理学を学ぶというよりは、使い方を知るという感じです。やはり、コミュニケーションは実際に使ってみること。迷いながら手探りのところはありますが、だんだん身についてきているような気がします。