『生くる』(執行草舟)(〇)
久しぶりにハマりました。自己啓発本(内省用)として今の私には、過去最高クラスの良書でした。著者は実業家であり著述家。武士道精神を大切にし、戦後、米国をモデルとした民主主義を「似非民主主義」と称し、現代を生きる人たちが時代に流されてしまわないように、時代を経ても変わらない本質的な考え方にズバッと切り込み、時代を経ても変わらない考え方が説かれています。一見逆説的な部分も実は真理であったり、盲点を突かれたところも多く、あっという間に線引きだらけになりました。どのように生きるのかを考えるうえでとても参考になりました。
(印象に残ったところのごく一部を抜粋‥本書より)
〇本物に物申す
何事につけ、本物に価値があるくらいのことは、誰にだってわかっている。問題は、本物でなければいけないという考え方。どだい一人の人間がその生涯で見たり触れたり所有したりすることができる本物などは、逆立ちしてもたかが知れている。私は偽物で十分満足する心がけが、ゆとりのある豊かな、それこそ本物の人生を生きるコツだと考えている。実は偽物を通して、本物を想像し夢を描くことが、人生を生きる上で我々が考えるよ売りも、ずっと大切なことを知ってもらいたい。
〇貫くということ
貫く、この単純にして崇高な人生観が今軽視されている。現代人は、利口になり過ぎ、効率を考えすぎて、もっとも得をして楽をして生きることを多くの人が選んでいる。その結果、暇で暇でどうしようもない状態になってしまったように見える。人間は、憧れや氏名がなければ生きがいを得られない。愛情や友情がなければ満たされない。信ずるものがなければ生きられない。これらは、どれもこれも貫き通さなければ、自分が満足できる価値を失ってしまう。
〇自信とは何か
自信とは自ら持つものではなく、他者から与えられる一つの評価基準を言う。自分が持つものがではなく、他人が持つ思いなのだ。自信とは、何事かに一途に向かっている人、または何事かを成し遂げた人に対して、あの人には自信がある、と他人が勝手に思う気持ち。自己が持つ考えなのか、他人が持つ考えなのかの違いに気づくことが、自信を理解する分かれ道となる。もともと、自信を持つことなどは誰にもできない。また持つ必要もない。大切なことは、他者から見て自信のある生き方をすることにある。
〇誠意と善意の違い
誠意の最も重要なところは、他者を理解すること。善意は絶対的な正義、つまり、絶対価値としての善を他者のためになると信じて押し付けたり、または、勝手に行うこと。善は絶対評価としては素晴らしいものだが、善意と思っての行動が、ただの自己都合による自己主張となる。善意とは自己に主体があるから、他者に対して無関心になる。また、自己が善の心を持つと思い込んでいるのだから、他者がすべて悪くなる。善意の人は、言うことはすべて正しいが、行うことは、すべて間違うことになりかねない。
〇壁にあたりし時に
「作用反作用の法則」。つまり、我々が人生において、何かを成し遂げようとすれば、必ず反対側からは、それをさせまいとする同等の力がかかってくる。なぜ悩むのか。それは、この反作用がない世界があると思っているからに他ならない。我々が壁と感ずるものはすべて、当然ある反作用のことを指している。壁を乗り越える度に、また新たなる壁が必ず現われてくる。この壁を一つずつ乗り越えていく過程を人間の成長と呼ぶ。自分には作用の力をほんの少し強める自由があるとわかると、人生は本当に楽しくなる。
〇判断力について
判断には、常に善悪と正否が関係している。失敗すれば、自分の無能力を深く認識せざるを得ない。また自分が悪人にならなければならないことも多々ある。したがって、善悪や事の正否を乗り越え、目的に向かって全身全霊打ち込む気概がなければ判断力は成長しない。
〇宿命を活かす
他人と比較さえしなければ、宿命の認識は誰にでもできる。例えどんな小さなことでも、他人と比較してしまえば、宿命の認識には破滅的な障害となる。宿命は動かし難い。すべて受け入れれば、自分がその宿命を用いることができるようになる。すべてを受け入れれば、宿命の中に自分の活かすべきものが見えてくる。そうなれば自分が人生に活用することができる活きた宿命となる。
〇習慣について
どんなに理性で悪い習慣を変えようとしても、絶対に変わらない。もともと、変わりにくいから習慣と呼ばれている。習慣が身に付いたと言えるのは、ある習慣が、その人そのものを示す行動様式となったときであろう。頑張っていたり、一生懸命やっている限りにおいては、まだ身に付いたとは言えない。遊びたいのを我慢している間は、まだまだ遊びの習慣から抜けておらず、遊びの習慣を凌駕する新しい習慣が身に付いていない。遊びでは疲れるが、学問の研究をすると疲れが取れる。そうなって初めて、学問をする習慣がその人の身に付いたといえる。
やはり、線引き箇所のごく一部しかまとめられませんでした。今年のBest5に入るのは、現時点で当確。これは、読書勉強会の課題図書としても良さそうです。