MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

伝えることから始めよう(髙田明)

『伝えることから始めよう』(髙田明)

 お馴染み、ジャパネットたかた創業者、髙田明さんの著書です。Uターンで実父の経営するカメラ店へ戻ったカメラ店時代の経験から、ジャパネットたかたの立ち上げ、奮闘、そして後継者へ事業を譲っての完全引退の心境。経営者として40年以上、最前線に立って経営のかじ取りをされてきた、スーパープレイングマネジャーの自叙伝です。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇今を生きる

・今を生きる。過去にとらわれない。未来に翻弄されない。

・今の「ジャパネットたかた」があるのは、「今を生きる」ということを一生懸命やってきた結果。その日できることを、一生懸命、自分の力の300%を注ぎ込んで走り続けてきた。目の前のことを一生懸命にやっていれば、自然と次の課題が見えてくる。次に何をすればいいか見えないということは、まだ一生懸命じゃないのかもしれない。

・目標は「前年を下回らない」ことだけ。数値目標は設定しない。一流であり続けようとするなら、死ぬまで自己更新。

 

〇できない理由ではなく、できる理由を探そう

・松浦支店(カメラ店)を月商55万円から1年で月商300万円にしようと妻と話し合った。できない理由を探せばいくらでもある。でも私は、できない理由ではなくて、できる理由を探そうと考えた。そして、一生懸命にやったおかげで1年後には月商300万円の店にすることができた。

・できないと思えばそこで終わりだけれど、やると決めたら、そのためにクリアしなければならない課題が見えてきて、課題が見えたら解決法を考えることができた。

・スタジオ作りはゼロからの出発で、反対もされたけれど、できない理由に納得することなく、可能性を追い続けてたからこそ成功した。これをやっていなかったら、今のジャパネットたかたはありませんでした。

 

ボトルネック

 『ザ・ゴール』からの気づき。物事はとてもシンプルで、いくら複雑に見えていても、すべての問題は、本質的な原因(ボトルネック)を探し出して、そこさえ解決すれば、全体の問題も解決する。

 私がやってきたことは、なぜ売上がもっと上がらないのか、それを机の上で考えるのではなくて、現場に立ってボトルネックを探し続けてきたこと。今を一生懸命に生きていないと、ボトルネックは見えてこない。

 

〇「失敗」ではなく「試練」

 やらなかった失敗はあっても、一生懸命にやった失敗はない。

 多くの人は失敗そのものではなく、ベストを尽くさなかったことを後悔するのではないか。私は、失敗というのは一生懸命にやらなかったことだと思っている。一生懸命にやって効果が出なかったときには、失敗ではなく「試練」という言葉を使う。

 

〇自己更新

 時代の流れに敏感になって、見分を広げ、勉強して、常に自己更新していくことが大切。人も企業も同じ。人も企業も常に自己更新。今を生きて、自更更新を続けることが大切。

 

〇ミッション

 「なぜ、何のために伝えるのか」。商品の先にある「感動」をお伝えし、商品を手にしたお客さまに「幸せ」をお届けすること。私は何よりも先にみなさんの幸せに思いを馳せることにしている。そうすると、伝えたくなる。伝えずにはいられなくなる。

 

〇パッション

 コミュニケーションで最も大事なことは「伝えること」ではなく、「伝わること」。伝えたつもりではダメ。「ただ伝えるのではなく、伝わるようにしないといけない」。そのために大切なのは、やはりパッション、情熱。今でも若いMCには口を酸っぱくして言っている。「本当に売りたいと思っているの?」「伝えたいと、本気で思っているの?」

 

〇チャレンジ

 私も人間ですから、しようと思っても、なかなかできないこともあった。だから、時々周囲がビックリするようなチャレンジを自分に課すことにしていた。とんでもない目標を公言する。そうすることで、自分にプレッシャーをかけ、気力を強くすることができると思った。「いつもの5倍売ろう!」

 

〇自分の想い

 「日頃から自分の想いは自分の言葉でちゃんと人に伝えなさい」と社員によく言っている。普段から自分の想いを表現することに慣れておくことが大切。上手に言えなくてもいいから、自分の想いを自分の言葉で素直に話すことのほうが、その人の思いはよほど正確に伝わる。

 

〇「一調二機三声」(世阿弥

①声を出すまで:声の張り、高さ、緩急といったものを心と体の中で整える。

②声を出す「間」を取り、いつ出すかタイミングを推し量る。

③声を発する。

 

〇「序破急」(世阿弥

・序:導入部

・破:展開部

・急:物語を加速して終結に至る結末部

 講演ではスライドも原稿も用意したことはない。序破急の骨子が頭に入っているので、2時間でも、3時間でも話せる。

 

 他にも、伝え方の工夫点などが経験談をもとに詳しく紹介されています。現場の第一線で活躍されてきたからこその感覚。「伝わらないと意味がない」。実のあるコミュニケーションに対するあくなき追求が、繰り返し使われていた「一生懸命」という言葉に表れていると思います。

伝えることから始めよう

伝えることから始めよう

 

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