MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

友よ(執行草舟)

『友よ』(執行草舟

 『生くる』で感銘を受けた著者の本をもっと読んでみたいと思い、本書を買ってみました。本書は、45篇の詩歌の解説を中心に所々、人生訓がちりばめられています。今の自分では、詩歌を味わうにはまだ至っていない感覚があり、背伸び感がありましたが、人生訓を拾い読むところに、愉しみを見出しながら読み進めた一冊でした。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇本音

 人間とは本音を言うことが最も難しい。人間とは自分自身を最も騙し欺いて生きている。生きるとは汚れていくことをいう。本音ほど人の非難を浴び人の中傷を買い、人と戦わなければならぬものはない。本音を言えば必ず闘いが起こる。善悪ではない。人間生存の根本が、闘争にあることは、自分自身に正直に生きた経験、本音を言った経験のある人間なら誰にでもわかる。

 

〇共感

 他人に対して説教をする人間は多い。しかし、人生は説教を聞いても何の価値もない。ただ一つ、価値のあるものは共感に尽きる。人と人との心の共振とでもいうべきか。

 

〇軸

 醒めていようが、眠っていようが、ただ自分自身の物事を見極めるための軸に、そのすべてがかかっている。問題は軸にある。その軸は、命がけで生きなければ得られない。軸があれば、見ても見なくても、感じても感じなくても物事はわかる。軸がなければ、如何に見ても感じても、実は何も見もせず感じてもいないことになる。

 

〇自己成長

 突き破るべきものは自己の中だけにある。他人もその一切のものも関係ない。おのれを乗り越えることのみが、人生の意味となる。不断の自己成長を遂げる人間は、何かと良い評価を得てしまうことが多い。ただ自己成長をする人間にとっては、そのようなものはどうでも良いこと。他人の評価を望む者は、そのこと自体に自分の人生が食われてしまう。

 

〇問い

 本当に相手の人物を立てている時の問いとは、そのまま答えでもある。それ以外の問いは、相手を愚弄しているか、よく見ても相手を自分の便利屋程度に見ていることになる。この相手には、何と自己も含まれる。本当に自分なりに考え抜いた質問をすることが、自分の人生と他人の人生に対する根本的な礼儀となる。学問や仕事において、秀れた問いができるようになれば、それだけで既にかなりの人物だと言われていた理由はここに存する。人生を本当に凝視めていれば、人間は必ず問いがそのまま答えになる。そのような問いを抱かなければ、人格の向上はない。そのような問いを人物や書物や自然に対して抱くことができるようになることが修行。

 

〇心魂

 辛きことがあり、苦しきことがあり、見栄があり、痛みがあるのが人生。それが、人生だというよ売りも、そのような側面からしか、なかなか人生は見えない。我々凡夫の目に見える人生は、自分で思っている以上に、物質として見えるものに縛られている。心ほど素晴らしいものはこの世にはない。心があればあとは何もいらぬ。これが真の人物の、心意気を創っている。つまり、矜恃というものであろう。

 

 〇生ききる

 我々はこの世に生を享けたと同時に、誰もが死を確定されている。決定しているものを恐れることは、生の萎縮をもたらす。それどころか、その生に執着するあまり、人間は何度も自らの生を台無しにする。生の尊厳、そして真の幸福は、ただ生ききることに尽きる。

 

 詩に込められた想いを感じ取り、味わい、共感できるか。この境地に至るには、どのような経験・知識・心の状態が必要なのか。今はまだ分かりませんが、いつか読み返したときに、今より感じることが増えているといいなと思いながら、ちょっと背伸びしている自分に気づきました。

友よ

友よ

 

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