『星野リゾートの教科書』(星野佳路)(〇)<2回目>
「教科書に書かれていることは正しい」「教科書通りでうまくいかないとしたら、それは理解が不十分で、取り組みが徹底されていなかったからに違いない」。経営課題に直面すると、その解決に役立つ本を自分で探し、深く読み込み、理論の教えるところを完全に実践してきた星野社長が、どんな教科書から学んで、どんな成果を上げ、現場はどう動いたのかがまとめられている良書です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇教科書通り経営を実践する効果
①根拠や基準となる理論があれば、ぶれがなくなる
②思い切った経営判断に踏み切れる
〇実践ステップ
①本を探す
書店に1冊しかないような古典的な本ほど役に立つ
②読む
1行ずつ理解し、分からない部分を残さず、何度でも読む
③実践する
理論をつまみ食いしないで、100%教科書通りにやってみる
〇星野社長が参考にした教科書
①『競争の戦略』(マイケル・E・ポーター)
②『コトラーのマーケティング・マネジメント基本編』(フィリップ・コトラー)
③『The Myth of Excellence』(Fred Crawford他)
④『売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則』(アル・ライズ他)
⑤『いかに「サービス」を収益化するか』(ハーバード・ビジネス・レビュー編集部)
⑥『真実の瞬間』(ヤン・カールソン)
⑦『ONE to ONEマーケティング』(ドン・ペパーズ他)
⑧『ブランド・エクイティ戦略』(デービッド・A・アーカー)
⑨『ビジョナリー・カンパニー』(ジェームズ・C・コリンズ他)
⑩『1分間顧客サービス』(ケン・ブランチャード他)
⑪『1分間エンパワーメント』(ケン・ブランチャード他)
⑫『後世への最大遺物 デンマルク国の話』『代表的日本人』(内村鑑三)
〇ミス撲滅委員会
・キャッチフレーズ:「ミスを憎んで、人を憎まず」
・3つのルール
①ミスを報告する人は、実際にミスを起こした人、他の人が起こしたミスについて知っている人のどちらでもよい
②ミスをした人を絶対に叱らない
③ミスを報告してくれたことについて、しっかり褒める
〇ブランド価値を決める5要素(デービッド・A・アーカー)
・認知:知られているかどうか
・知覚品質:お客様がどのように感じるか
・連想;ブランドについて思い浮かべること
・ロイヤルティ:リピーターとなってくれるかどうか
・他のブランド資産:トレードマークなど
〇変える勇気(軽井沢ウェディング部門)
従来のやり方をやめるという消極的な考え方だけではうまくいかない。新しい方向を目指す、より良い点をつけ加えるという積極的な視点を持つと、「変える勇気が湧く」と気づき、全面的な見直しを決断した。
〇ブランド価値
ブランドの価値は貯金に似ている。取り崩していったら、いつか失われる。将来を見て、積み上げていくことが大事。
〇すべてのお客様を満足させようとするとコストが膨らむ
ケン・ブランチャードの理論がユニークなのは、お客様の要求が自分たちの目指しているサービスと合致しない場合、「要求を無視するべきだ」と断言している点。ターゲットが絞られていないと、どのお客様にとっても不満はないが、感動もない施設になってしまう。共感度の高いコンセプトがあれば、スタッフにとって分かりやすい判断基準になる。どのサービスが必要で、どのサービスを切り捨てるべきか、すぐに分かる。
〇内村鑑三「成功の秘訣」
・自己に頼るべし、他人に頼るべからず
・本を固うすべし、然らば事業は自づから発展すべし
・急ぐべからず、自動車の如きも成るべく徐行すべし
・成功本位の米国主義に倣ふべからず。誠実本位の日本主義に則るべし
・濫費は罪悪なりと知るべし
・能く天の命に聴いて行ふべし。自から己が運命を作らんと欲すべからず
・雇人は兄弟と思ふべし。客人は家族として扱ふべし
・誠実に由りて得たる信用は最大の財産なりと知るべし
・清潔、整頓、堅実を主とすべし
・人もし全世界を得るとも其霊魂を失はば何の益あらんや。人生の目的は金銭を得るに非ず。品性を完成するにあり。
教科書の中身よりも、星野社長の「教科書通り徹底的にやり抜く」信念、意志、姿勢が印象的です。確かに、読んだことがある本もありますが、徹底的にやり抜くどころか、内容を忘れているというのが現状。ここが経営者のしょっているものの重さ何だろうと思います。これと思った座右の書は、ボロボロになるまで読んで実行するという実践を伴った読書。ここは課題だと思い知らされます。