『ポジショニング戦略』(アル・ライズ/ジャック・トラウト)(〇)
『売れるもマーケ、当たるもマーケ』、『フォーカス』など良書が多い著者ですが、本書も良書でした。序文でフィリップ・コトラー氏が書かれていますが、4P(product,price,plece,promotion)の前にくるSTP(segment,targeting,positioning)の一角を占めるポジショニング戦略についてまとめられています。ポジショニング戦略は、広告という最も難易度の高い世界を中心に扱っており、商品そのものではなく、消費者の頭の中に既にあるイメージを操作し、それを商品に結び付ける戦略のこと。マーケティングを学ぶうえで、一度は読んで置きたい内容です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇業界リーダーになる必勝パターン
消費者の頭の中に入り込む一番の方法は、一番乗りすること。人の脳に最初にすりこまれたブランドは、二番手のブランドの2倍、二番手は三番手の2倍の市場シェアを獲得する。これが歴史の常。
〇「〇〇ではない」型ポジション
独自のポジションを見つけるには、既成の論理を無視するのがコツ。規制の論理は「何らかのコンセプトを見つけるには、自分の内面や商品の内容をとことん見つめよ」と言うが、それは真実ではない。見つめるべきは、消費者の頭の中。
〇パワーの源は企業ではなく商品
リーダーが犯す古典的な誤りは、企業の実力が商品の実力を生み出したという錯覚。真実は逆。企業の実力を生み出したのは商品の持つ力。商品の力とは、商品が消費者の頭の中に確立したポジションから生まれる。
〇マルチ・ブランド戦略
マルチ・ブランド戦略とは、シングル・ポジション戦略。一つのブランドを導入したら変更してはならない。アイボリーは、これを守ったからこそ、発売から99年経った今でも強力な石鹸ブランド(2008年時点)。
〇「穴を探せ」=未開拓分野を探せ
①「サイズ」という穴
②「高価格」という穴
③「低価格」という穴
④その他‥「性別」「時間帯」「販売経路の分化」「ヘビーユーザー向け」
・「工場の穴」は落とし穴⇒研究部門がどんなに素晴らしい技術を開発しても、消費者の頭に入るべき「穴」がなければ失敗する。
〇万人ウケの幻想を捨てる
何もないところからポジンション獲得を目指す場合、万人ウケを狙えば間違いなく沈没する。
〇ライバルのポジションを崩す
衝突を恐れてはいけない。ポジション崩し戦略の要は、既存のコンセプトや商品、人物の価値を引き下げることにある。
〇「ポジション崩し」と「比較広告」は大違い
「わが社の商品はライバル商品よりも出来がいい」式の広告は、ポジション崩しではない。これは単なる比較広告であり、効果的ではない。「おたくのブランドがそんなに出来がいいならどうして市場リーダーではないの?」というわけ。自社ブランドの優位性を示すためにライバルブランドを引き合いに出す結果、相手の価値を認めてしまっている。
〇「新商品には新名称」が鉄則
せっかく斬新な新商品が完成したのに、知名度が高いというだけで既製品の名を用いるのは間違い。知名度の高い名前は、人々の頭の中に既に何らかのポジションを築ている。
〇名称
意味のない言葉の上にアイデンティティは構築できない。「グループ」や「コーポレーション」という漠然とした言葉は意味がない。
〇ライン拡大は企業を弱体化させる
ライン拡大とは、定評のある商品の名前を新しい商品にも活用することであり、ただ乗りの罠の行きつく先である。ライン拡大の人気が衰えない理由の一つは、短期的にはいくらかの長所があるから。ライン拡大商品は、すぐに認知されるが、忘れられるのも早い。
〇自分のキャリアアップへの応用
自分のウリは何か?人間も商品と同じ過ちを犯す。万人ウケを狙ってしまう。ポジショニング戦略の最も難しい点は、売り込みたいコンセプトを一つに絞り切るところにある。消費者の無関心の壁を突き崩したいなら、何が何でも一つに絞り切らねばならない。自分自身のポジショニングでも同じ。
〇直接対決は避ける
すでに強力なポジションを確立したライバルに正面攻撃を挑んでも、消費者の頭の中をめぐる戦争には勝てない。迂回してもいい。潜行してもいい。直接対決だけは絶対に避けるべき。
情報社会の勝敗を分けるポジショニング戦略。「自分のウリは?」と自分事に置き換えると現実味が増します。「万人ウケを狙ってしまう」という言葉に耳が痛いです。一番乗りできるかどうか。このポジショニングを考えるところに知恵と労力を注ぎ込む価値は絶大。私の場合、まずは自分事で考えたほうがピンとくるので、自分のポジショニングを考えてみたいところですが、「自分のことを分かる」というのも難しいもの。誰かにコーチングで手助けしてもらう分野かもしれません。
- 作者: アル・ライズ,ジャック・トラウト,フィリップ・コトラー(序文),川上純子
- 出版社/メーカー: 海と月社
- 発売日: 2008/04/14
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