MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。MBA講座と歩む読書生活。講座関連の書籍、講師お薦め本などを紹介。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキルなど、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ストーリーで学ぶ戦略思考入門(荒木博行)<2回目>

『ストーリーで学ぶ戦略思考入門』(荒木博行)<2回目>(〇)

 グロービス経営大学院荒木先生の著書。久しぶりに読み返してみましたが、あらためて現場で使える経営戦略の基本がわかりやすくまとまっている良書だと思いました。経営戦略を学ぶための最初の1冊として、とっつきやすい本書。これを皮切りに、深掘っていくという学びの流れをつくると、いきなり分厚い専門書に圧倒されて抵抗感が出るということを避け、むしろ「もっと深く知りたい」という興味に繋がるのではないかと思います。さすが、荒木先生!

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇戦略思考

 我々は現場に立つと視界がものすごく狭くなる。覚悟をもって飛び込むのであれば、「事が起きる前に、予め意図を持って何らかの手を打っておく」ことが求められる。これこそが、戦略思想。

 

〇3つの基本フレームワーク

 極論としては、企業の戦略面における分析は、この3つのフレームワークの使い方さえ完璧に理解していれば、大半のことは片付く

①3C

・customer(市場)、competitor(競合)、company(自社)

・企業を取り巻く要因を大きく分析するツール。平たく言えば、「お客さんを見て、競合を把握し、それに対して自社がどうしていくか」。お客様と提供者の関係を、マクロ、ミクロ双方の視点から分析していく行為。

・市場規模は、何%伸びているかを具体的な数値で示す。

・大きな定義の市場を、「どういう切り口で細分化するか」。たとえ停滞しているように見える市場も、ある切り口で細分化してみれば、必ずユニークな動きを見せる市場は存在する。

・顧客分析は、一人の顧客の動きを徹底的にイメージし、具体的に考えること(ペルソナ分析)

・競合分析は、市場・顧客、業界を分析したうえで、「このビジネスを行ううえではここが大事!」という重点ポイントをあらかじめ設定しておくこと

・3C分析には、「今分かっていないことは何なのか」「それはどうやって検証していくのか」ということについて、具体的なアクションも含めて分析に織り込むべき。その姿勢の差は、「3C分析」というフォーマットだけで提案が終わるのか、その後に1枚「今後を見据えた検証のアクション」のページが続くのかというところに表れる。

 

②5Force

・業界を分析するツール。どういう業界構造であれば儲かりやすい(儲かりにくい)のかという漠然とした問いに答える。

・業界間(競合他社)、新規参入者、売り手、買い手、代替品の5つの力

・横軸(売り手⇔業界間⇔買い手)は、「売上ーコスト」の関係性把握

・縦軸(新規参入⇔業界間⇔代替品)は、業界の利益の配分

・意味をなさない分析

 「市場定義がぼんやりしている」「分析に数字がない」「解釈にメリハリがない」

・5つの力を考える5つのステップ

1)市場定義(地域、製品の限定。特に地域軸は、場所によって消費者行動に差異)

2)事実の記載(可能な限り定量化)

3)脅威レベルの解釈(脅威の大きさを「大」「中」「小」で)

4)業界構造把握

5)今後の戦略立案

・代替品の脅威は、PEST(政治Politics、経済Economy、社会society、技術Technology)分析をしっかり行うこと。「これからの世の中がどう変化していくのか」「顧客の片付けるべき用事から考える」。

 

バリューチェーン

・企業がお客様に対して提供している価値(value)が、具体的にどの機能や活動の流れによって生み出されているのかということに着目して分析するアプローチ。

バリューチェーン分析の進め方

1)顧客の理解(提供しているvalueそのものを考える)

2)行動ベースの分解

3)支援活動の定義

4)比較対象を定義する

5)事実やデータを洗い出す(コスト、時間)

6)示唆を考える(具体的課題の明確化)

 

〇3つの基本戦略

差別化戦略(競合と戦う×高価格を許容してもらえる状態に注力)

・差別化を図るための軸が効果的か?それを本当に実現できるか?

・どの価値を顧客に訴求するか?

・顧客にとってそれは「重要」なことか?それは競合と「差がある」か?

 ⇒差別化の大原則は、単に競合と差があるということではなく、まず、「顧客にとって重要な部分」において差があるということ。

・「売り文句」こそ訴求すべき価値。せいぜい2つまで。

差別化戦略実現のためには、組織能力の育成まで含め、長い期間の地道な道のりが必要。

 

②コストリーダーシップ戦略(競合と戦う×低コストで提供できる状態に注力)

・コストの話で合って、価格の話ではない。どれだけ安くつくるか。

1)規模の経済(大きくなることによって安くする)

2)経験効果(たくさんつくって手際をよくすることによって安くする)

3)範囲の経済(同じものを使いまわすことで安くする)

 

③集中戦略(競合と戦わない)

・「顧客が片付けなくてはならない用事は何か?」と聞くのではなく、思考の枠を一旦外して、「今どんな用事を抱えており、それを片付けるためには何が課題だと思っているか?」ということから聞いていく。

 

 大学院で経営戦略を学び始めたころに比べれば、経営戦略に関連する書籍も随分読みましたが、久しぶりに本書に返ってきて思うことは、本書は戦略思考の核になるエッセンスが分かりやすい。そして、マイケル・E・ポーター教授の『競争の戦略』に返ってくるということです。

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