『実践”受容的な”ゲシュタルト・セラピー』(岡田法悦)(〇)
ゲシュタルトとは、ドイツ語で「部分の集まりではなく、全体制を持ったまとまりのある構造」のこと。本書は、「今・ここ」を体験することに重点を置く、カウンセリングの一学派、ゲシュタルト・セラピーの実践書です。
ゴールデンウィークに、平本あきおさん(イノベイティア代表)のカウンセリングセミナーを受講した効果もあり、モチベーションも高く、スムーズに読み進めることができました。文章も事例も分かりやすいうえ、平本さんのカウンセリングと重なるところも多く(空のイスを使ったり、枕を叩いたりと・・)、イメージしやすい内容でした。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇ゲシュタルト・セラピーのゴール
・「今・ここ」で起きていることに「気づき」「体験すること」
・ファシリテーターも参加者も「今・ここ」を体験し続けることに尽きる
・マニュアルはない。「今・ここ」は常に千差万別に新しいから
・ゲシュタルト・セラピーを学ぶことは、テクニックを学ぶのではなく、”ありよう”を学ぶこと
〇参加者と向き合った瞬間、まず何をするか
・思考のスイッチを切り、ただ感覚・感情だけになる
・話の内容(何について)より、表情や声(どのように)を聞く
・参加者が気持ちをじっくり味わい、表出する場に立ち会う
・ファシリテーターは、”意図”を持たず、半歩下がって寄り添う人
⇒「~してあげよう」という意図は持たない
〇「今・ここでの気づき」を入り口として始めるワーク
・ワーク
①今・ここでの気づき
今・ここで身体や気持ちの中で感じていることを感じ取ることからワークを始める。
②悩んでいること引きずっていること
普通のカウンセリングのように、今気になっていることからワークを始める
③夢
夜見る夢を題材にワークを始める(夢は気づきの宝庫)
⇒どこから始めても結局はワークする人にとって、今前景となっていることがあぶり出される(前景にあったものが自然と引っ込み次の前景が現われる)
・未完の事柄は「筋肉の鏡」として、身体や顔の筋肉にしみ込む。
・未完の事柄は、ある出来事を体験したときに心の中にわき起こった感情を表出仕切らなかったことによって形成される。未完の体験が起きたときにため込んだ感情を「今・ここ」で体験し、それを出し切るように促す。未完の事柄を完成させることで、前景に張り付いたフィルターが背景に引っ込む。
〇エンプティ・チェア(空のイスを使ったワーク)
・空のイスを置き、そこに誰がいるつもりで話をしたり、自分の感情をその人にぶつけたりする。ワークをしている人が、エンプティ・チェアの方に移動して座り、イメージの人になったつもりで返事をしたり、その人になったつもりで気持ちを感じ取る。
〇神経症の5つのタイプ
①鵜呑み(introjection):境界線を越えて自分の中に入り込んだ他人
親に言われ続けたことは、子供に大きな影響を持つ
②投影(projection):自分の中身を他人に預けてしまう
③反転(retroflection):相手に対して感じていることを自分に向ける
④逸脱(deflection):他者との接触を避けることで核心に触れない
⑤無境界(confluence):私と私でないものの間に境目がない
〇葛藤とセンタリング
①一人称と具体性:「結婚するのが女の幸せ」は無意味な表現
②トップドッグ(”べき”人間)とアンダードッグ(”でも”人間)
③二極分割とエンプティ・チェア:”今は誰?”を明確にする
⇒両極の自分がそれぞれ何を言っているかを、ワークしているとがはっきりわかるように言葉で表現する。
④対話とカウンセリング:両極の存在にお互いが気づく→対話を始める→お互いの感情を聞く→センタリング
〇提案と実験
「(試しに)~と言ってみるのはどうですか?」「(試しに)~をしてみるのはどうですか?」
⇒「させよう」とせずに、本人の意思に従う。「~してあげよう」という意図を持たない。
①接触(コンタクト)と引きこもり
②我ー汝
③責任:「私」を主語にした表現
④責任:「できない」を「~しない」「~したくない」に言い換える
⑤破滅的空想
⑥「なぜ?」から「どのように」「どのような」「何」に言い換える
⑦「しかし」から「そして」への言い換え
⑧疑問文を肯定文に言い換える
⑨「~と言ってみてください」「~を想像してみてください」と提案する
⑩コンタクト:「目の前に座っている(はずの)〇〇さんは、今どんな表情をしていますか?」
⑪グループの人と関わりを持つ実験
〇”ありよう”の5つの階層
①定型行為:身体や心が自動的に動いてしまう状態
②役割演技:ありのままの自分を表出しないように、社会的役割のマスクをかぶって行動する状態
③インパス(行き詰まり):役割のマスクを脱ごうとすると、今までそれによって支えられていた存在が否定され、大きな不安やパニックを体験する
④内破:そこに突き当たると、不安や恐怖などの感情が自分の内側に押し込められる
⑤爆発:じっくり体験し尽すと、ありのままの豊かな感情が自然に流れ出る
しばらく、ゲシュタルト・セラピーは本書だけでいいかなというまとまりの良さでした。心理学、セラピーは幅が広いので、まずは広く浅く、いろいろな学派・領域を読んでみて、全体像が見えるようにしていきたいと思います。