MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ゲシュタルト療法~その理論と心理臨床例~(倉戸ヨシヤ)

ゲシュタルト療法~その理論と心理臨床例~』(倉戸ヨシヤ)

 タイトル通り、ゲシュタルト療法と臨床例がまとめられています。見た目からして、読みやすそうで、実際に臨床例も含めて、初心者でも入りやすい一冊でした。

 「ゲシュタルト」とは、ドイツ語で、形・全体・閉じる・完結・統合を意味します。クライエントが自らの欲求を形にして表現したり、人や物事を全体として捉え、終わっていない経験を閉じたり、完結へと目指し、まとまりのある方向へ人格の統合を志向することを援助するもの。感情を出し切ったり、エンプティチェア(空のイス)ワークなど、インパクトのある療法です。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

ゲシュタルト療法の関わりの特徴

①セラピストの解釈を極力避け、触媒としてのセラピストの介在を通じて、クライエントに気づきを持つ機会を提供する。

②セラピストは「今、ここ」における自明な現象を取り上げる。

③言葉はできるだけ第一人称で現在形を使うように勧める。

④周囲を操作することにではなく、セルフ・サポートへと結びつくようにエネルギーを使うように勧める。

⑤自己に対決する機会を提供する。

⑥非言語的なものに注目する。

⑦実験(イメージ法や擬人法による)を通して気づきを促進する。

⑧「図」に上がっているものの言語化を勧める。

⑨未完結の経験を完結する機会を提供する。

 

〇気づき(Aweareness):アッ!、なるほど!体験

・内層の気づき:身体の内部で起きていることの意識化

・外層の気づき:外科医で起こっていることの意識化

・中間層の気づき:想像、空想、思い込み、評価であることの意識化

 

〇「図」と「地」とその反転

・「図」:意識に上がってくるもの

・「地」:意識下に沈んでいる背景のようなもの

⇒「地=無意識」から、「図=意識」へ上がってきたものにコンタクトして、それを言語化したり、行動化していく。次々と欲求が図に上がってきて、前の欲求が地に沈んでいく入れ替わりが起こる(図地反転)。これが起こらないと病理的な状態。

 

〇今、ここ

・過去のことも未来のことも、現在という時点で問題にしていること。過去のことも未来のことも、所詮、現時点でしか関われない。

ゲシュタルト療法では、トラウマや心残りの体験、未来の不安や恐れを、「今、ここ」で再体験したり、先取りして経験することを心理治療的招きとして勧めるが、主眼は洞察を得て、現在を生きることが出来るようになるところに置かれている。

 

〇エンプティ・チェア技法

・用意するもの:イスor座布団orクッション

・西洋式のイスに比べて心理的距離を取るときや移動させて対峙するときなどは、経験的にいって、座布団のほうが自由自在で、より便利である。座布団を何枚も重ねて権威的、あるいは威圧的な人物に象徴的に見立てる場合にも有効である。

・この技法は空のイスに、イメージの中に浮かんできた自己や他者を座らせ、対話するもの。

・「今仮にこのイスに〇〇さんが座っているとしたら、どんなことを言いたいですか?」

・介入の一つの手法で、未完結の感情や思いを表出し、完結へと導くきっかけを提供する。

・エンプティ・チェアに座らせる対象は、未完結の経験を表出したい人物、感情をぶつけたい人物、避けてきた人物、本当の気持ちをいまだ伝えていない人物、現在の自分自身、過去の自分や未来の自分など。ペットや愛車など、悲哀や憎悪の対象になった者は人間でなくてもすべて含まれる。

・言語であれ、感情であれ、行動であれ、ひとしきり表現する。表現できたら、今度は、イスを交代して、その空のイスに座ってみる。そして、身体で感じ、あるいは応答する。今、座っているイスと空のイスとの間を行き来しながら気づきを得る。

 

〇イントロジェクション

・基本的には下界から何かを摂取したり取り入れることを指す。

・親の言うことだから、伝統だから、流行だから、革新的だからという理由で丸ごと鵜呑みにするとすれば、それはやがて、重く自らにのしかかってくることになる。

 

〇プロジェクション

・他者に責任をなすりつける傾向を指す。

・親が果たせなかった夢を子供に知らず知らずのうちに期待し、子供が実現してくれることを望むことも親の投影。

・投影同一視:自らの内に起こっていることや見えているものを他者の中に見ていることをいうが、これもプロジェクションの病理的な側面。

 

〇その他の技法

・ファンタジー・トリップ

 ファンタジーの世界に入り、体験する技法。例えば、海底に潜ってみて、未知の自己に出会ったり、既に他界した両親に遭遇したりする経験をする。

・夢のワーク

 夢に登場する人物、事物、雰囲気などになってみて、夢を再現し、各々言語化や行動化する体験。

・ボディ・ワーク

 身体と対話し、身体になってみる経験。

 

 こうして読んでみると先日GWに受講したカウンセリング・セミナーでも、ゲシュタルト療法の要素が多分に導入されていました。イスの代わりに、座布団を重ねて威圧感など目線の上下を作ることが出来るというのは、新たな気付きでした。和室であれば、是非試してみたいワークです。

ゲシュタルト療法―その理論と心理臨床例 (二十一世紀カウンセリング叢書)

ゲシュタルト療法―その理論と心理臨床例 (二十一世紀カウンセリング叢書)

 

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