MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ビジョナリー・カンパニー③~衰退の五段階~(ジム・コリンズ)

『ビジョナリー・カンパニー③~衰退の五段階~』(ジム・コリンズ)(◯)

 ビジョナリー・カンパニーシリーズ第3弾は、衰退編。シリーズ1~2で取り上げた偉大な企業のうちいくつかが後に、卓越した企業の地位を失ったことに着目し、「衰退が明らかになる時点までに何が起こったのか」「衰退し始めたときにどのような行動をとったのか」をまとめた一冊です。衰退の五段階がとても分かりやすいです。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇第一段階:成功から生まれる傲慢

・成功を当然視する見方(「我々が成功を収めているのは、これこれのことをしているからだ」が深い理解と見識(「我々が成功を収めているのは、これこれのことをする理由と、それが通用しなくなる条件を理解しているからだ」)に置き換えられたとき、やがて衰退が始まる可能性が高くなる。

・自分たちの長所と能力を過大評価する人は、傲慢に陥っている。

・第一段階の現象

①成功は当然だとする傲慢

②主要な弾み車の無視

③「何」から「なぜ」への移行

④学習意欲の低下

⑤運の役割の軽視

 

〇第二段階:規律なき拡大路線

・経営陣が「成功」の指標だと見るものは何でも貪欲に追求する。

・組織の成長が速すぎるために、主要なポストに適切な人材を配置することが出来なくなったときには、衰退への道を歩み始めている。

・悪循環

 不適切な人を主要なポストにつけるようになると、不適切な人の欠陥を補うために、官僚的な手続きを確立するようになる。その結果、適切な人材を追いやる。こうなると不適切な人材が増えたのに対応して、官僚制をさらに強化することになり、適切な人材がさらに逃げ出す。官僚制の凡庸な文化が規律ある卓越性の文化に徐々に取って代わっていく。

・不適切な人材が自分はこれこれの「肩書き」を持っていると考えるのに対して、適切な人材は、自分はこれこれに「責任」を負っていると考える。

・第二段階の現象

①持続不可能な成長の追求と、大きさと偉大さの混同

②関連しない分野への規律なき飛躍

③主要なポストのうち、適切な人材が配置されている者の比率の低下

⇒警戒信号として重要な現象を1つ選ぶならコレ。

 会社の主要なポストはどれなのか。主要なポストのうち、適切な人材が配置されていると自信を持って断言できるものはどれだけの比率があるのか。この比率を高めるためにどのような計画を立てているのか。適切な人材が主要なポストを離れたときのために、どのようなバックアップ計画があるのか。 

④容易に利益を得られることによるコスト面の規律の緩み

⑤官僚制による規律の破壊

⑥問題のある権力承継

⑦組織の利害より個人の利害を優先

 

〇第三段階:リスクと問題の否認

・指導者は悪いデータを小さく見せ、良いデータを強調し、曖昧なデータは良く解釈する。上に立つ者は後退の原因として外部要因を指摘するようになり、自分で責任を引き受けようとはしない。

・事実に基づいた議論はていちょうになるか、全く見られなくなる。

・第三段階の現象

①良いデータを強調し、悪いデータを小さく見せる傾向

②事実の裏付けがない大きな賭と大胆な目標

③曖昧なデータに基づいて、とてつもないリスクをおかす動き

④経営陣の健全な行動様式の衰退

⑤外部要因への責任の押しつけ

⑥組織再編への固執

⑦傲慢で超然とした姿勢

 

〇第四段階:一発逆転の追求

・指導者がどう対応するのか。一発逆転狙いの救済策にすがろうとするのか、当初に偉大さをもたらしてきた規律に戻ろうとするのか。一発逆転にすがろうとするのであれば、第四段階に達している。

・第四段階の現象

①特効薬の追求

②救世主のような指導者への期待

③パニックと拙速

④抜本的な変化と「革命」の喧伝

⑤業績より売り込みの優先

⑥当初の業績回復とその後の失望

⑦混乱と皮肉な見方

⑧リストラの繰り返しと財務力の低下

 

〇第五段階:屈服と凡庸な企業への転落か消滅

・財務力が衰え、士気が低下する。

・第一の形態は、屈服したほうが全体的に見て良い結果になると考えるようになる。

・第二の形態は、選択肢が尽きてしまい、企業が完全に死に絶えるか、以前の壮大さと比較すればまったく重要性のない企業に縮小する。

 

〇回復と再生

・第一~第三段階に衰退の事実を理解すれば、反転は可能。

・第四段階に入っていても、一発逆転策にすがるサイクルから抜け出して一歩ずつ再建を進められる資源が残っていれば、進路を逆転することができる。

・人生や仕事で避けがたい後退に陥って苦闘しているときには、人は誰しも指針になる光を必要とする。

・戦術は変える意思を持たなければならない。だが基本目的を諦めてはいけない。

・偉大な企業を築くというアイデアは決して放棄してはならない。自社の企業文化を特徴づける原則は決して放棄してはならない。

 

 衰退の実例から学ぶ本書もまた学びが多く、特に、「主要なポストに適切な人材を配置している比率」を考えるにあたり、主要なポストとは?適切な人材とは?をどう判断するか。適切な人材をどのように育成するのか。考えが広がる着眼だと思います。私もかつては「肩書き」に意識が向いていたと思いますが、今は完全に「これこれの責任を負っています」という感覚です。この変化は何なんでしょうかね。

ビジョナリーカンパニー3 衰退の五段階

ビジョナリーカンパニー3 衰退の五段階

 

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