MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

解決志向ブリーフセラピー(森俊夫/黒沢幸子)

『解決志向ブリーフセラピー』(森俊夫/黒沢幸子)

 多くの流派やアプローチがある心理療法やカウンセリング。本書では、臨床心理学の小難しい基礎知識が不要、単純さの割りに効果があるという特徴がある、解決志向(SFA:Solution-Focused Approach)というアプローチ。「解決志向ブリーフセラピー初級」という研修内容をもとに、著者お二人の対談形式でまとめられています。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇中心哲学~3つの哲学~

①もしうまくいっているのなら、変えようとするな。

②もし一度やって、うまくいったのなら、またそれをせよ。

③もしうまくいっていないのであれば、(何でもいいから)違うことをせよ。

 

〇4つの「発想の前提」

①変化は絶えず起こっており、そして必然である。

②小さな変化は、大きな変化を生み出す。

③「解決」について知るほうが、問題と原因を把握することよりも有用である。

 ⇒対立概念は「問題志向」。まず問題は何かを把握し、次にその原因を特定し、その原因となるものを取り除いたり変化させようとする発想。

④クライエントは、彼らの問題解決のためのリソース(資源・資質)を持っている。クライエントが、(彼らの)解決のエキスパート(専門家)である。

 ⇒リソースで最も見つけやすいのはクライエントの得意分野。「今、夢中になってて、ワクワクするようなことって何ですか?」「『売り』は何ですか?」と聞いてみる。「この子の中には、絶対、この子を解決に導く宝物があるんだ」と思って、それを探そうとし、そうやって見つけたリソースの中からどのリソースをどう使うかという姿勢がベースにあれば、マニュアルの技法や質問など自然に出てくるもの。

 

〇面接の5ステップ

①クライエントーセラピスト関係の査定(アセスメント)

・ビジタータイプの関係

 ■ほめる・ねぎらう

 ■クライエントの話にのってほめる(雑談に打ち興じる)

 ■帰す(また顔出してね)

・コンプレイナントタイプの関係(不平不満タイプ)

 ■ほめる、ねぎらう(=コンプリメント)

 ■観察力をほめる

 ■他者・状況の「例外」探しの観察課題を出す

・カスタマータイプの関係

 ■ほめる・ねぎらう(=コンプリメント)

 ■各ステップを踏みながら・・・

 ■行動課題を出す

②ゴールについての話し合い

・大きなものではなく、小さなものであること

・抽象的なものではなく、具体的な、できれば行動の形で記述されていること

・否定形ではなく、肯定形で語られていること

・ゴール・解決像・未来時間イメージの3つのレベル

 ■義務・必要(べき論のゴール、解決、未来)

 ■希望・夢・願望(~であればいいなぁ、でも・・・)

 ■必然的進行(当然そうなる。そうなっている)

③解決に向けての有効な質問

・ミラクル・クエスチョン

「眠っているあいだに奇跡が起こり、解決が起こっている。そうすると翌日は(要するに解決したあとの一日は)どんな様子をしているのか」

・例外探しの質問

 ■既に起こっている解決の一部

 ■事実を具体的に聞く

・スケーリング・クエスチョン

 差異を見つけることがとても大事

・治療前変化を見つける質問

 治療前変化があるという前提に立って、「どうですか?予約の電話を頂いてから今日まで、何か変化はありましたか?」

・コーピング・クエスチョン(サバイバル・クエスチョン)

 「そんな大変な状況の中で、よく今日まで投げ出さずにやってこれましたね。一体どうやって生き延びてこられたのか(どうやって対処してきたのか)教えていただけますか?」

④介入

・コンプリメント(評価・賛同・敬意を表す)

 「あっ、それはいいね。それはすごいね」

・ブリッジ

 解決に向けてこんな課題を出したいとセラピストが思うとき、困っていることと課題の間に橋を架ける。

・観察課題(初回面接公式課題)

 「こういうことがもっと続いてくれたらいいのになぁ、こういうことがもっと起こってくれたらいいのになぁ、と思われるような出来事を、よく観察して、それを次回来られた時に報告してください」

・Do More課題

 「それいいですね!もっとやりましょう!」

・予想課題

 毎晩翌日の予想をする。「それもっとしましょう!」の「それ」が見つかっていないときにやってみる。

・プリテンド・ミラクル・ハプンド

 「次に面接に来られるまでの間の1日あるいは2日を選んで、その日はあたかも奇跡が起こったかのように振る舞ってみてください。そうしたら、どんなことが起こるか、周りの反応やあなた自身の内的なものを含めて観察して、次回報告してくださいね」

・Do something different

 もし何をやってもうまくいかず、事態が膠着状態になっているときに、何か違うことをやってみる。

⑤ゴール・メンテナンス(解決の維持・発展)

⇒①~④までが初回面接マニュアル。2回目以降面接が⑤。「面接は立ち合いが勝負」。

 

 とても実践的な内容でした。とくに、具体的な質問イメージが分かりやすいの、実践でも試したくなります。質問も回答も具体的に。抽象⇒具体を行ったり来たりするなかで、具体に降りてくる際に参考になる一冊でした。

森・黒沢のワークショップで学ぶ解決志向ブリーフセラピー

森・黒沢のワークショップで学ぶ解決志向ブリーフセラピー

 

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