『気づきのセラピー』(百武正嗣)
ゲシュタルト療法4冊目。本書は、「はじめてのゲシュタルト療法」という副題がついているとおり、はじめてゲシュタルト療法を読むのに適した一冊です。
ゲシュタルトとは、「まとまった」「全体性」を意味するドイツ語。人間は外部の世界をバラバラな寄せ集めとして認識するのではなく、意味ある一つのまとまった全体(ゲシュタルト)として構成し認識するという考え方。個人が「いまーここ」の状態で体感していくことに気付いていくプロセスである「気づき」を大切にする実践的な療法です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇からだからのメッセージ
・思考は、原因を探す、分析する、理由を見つける、合理的な説明をする、解釈するという場合には役立つが、思考は「過去の私」の立場の解釈。
・「なぜ?」と聞く代わりに「いまーここ」で何が起きているかに意識を向け、「なぜ」から「なに」に意識を切り替える。「考える」ことから「感じる」ことへ。
■身体に意識を向ける⇒声を与える⇒小さな気づき⇒声を与える⇒小さな気づき⇒本当の意味に気づく
①アプローチ法1‥身体を意識する
1)身体の気になる部位を選ぶ
2)身体に意識を向ける
3)身体の部位を選ぶ
4)その身体を自覚する
②アプローチ法2‥声をかける
「もし肩の痛みが話すことができるとしたら何と言っていますか?」
「もし胸のドキドキが話すとしたら~」
「もしその涙が話せるとしたら。。。何て言ってる?」
③アプローチ法3‥対話する
1)対話したい身体の部位、症状、気になるところを一つ選ぶ
2)声を与える
3)表現する
4)小さな気づき
5)選んだ部位、症状に話しかける
6)選んだ部位、症状になって考える
7)交互に対話する
8)ゲシュタルト(気づき)が生まれる
〇身体と精神の統合
・「何を抑圧、回避しているか」という「内容」が重要なのではなく、「回避の形態」が重要。つまり、「どのように回避しているのか」「どのような方法で感じないようにしているのか」、その仕方が大事。
〇心理的成長を阻む自覚の回避
①決まり文句の層(「こんにちは」、「良い天気ですね」)
表面的で安全な関係
②役割の層
役割を通して表現している
③行き詰まりの層
普段の自分の殻や役割を破る恐怖の層
④内破の層
死の恐怖、絶望、孤独といった人間が根本的に抱えて生きていかなければならない永遠の課題
⑤外破の層
人間の持っている悲しみ、性的抑圧、怒り、喜びを自由に表現することが出来る本来の自分に戻る。
⑥本来の核
何ものにもとらわれない本来の自分「真の自己」
〇病理のメカニズム
①鵜呑み
親の価値観や社会の価値観をそのまま鵜呑みにして取り入れてしまう。
⇒「~すべきだ」と考えている「知性の自分」と「本音の自分」とをエンプティチェアで対話させる。
②投影
自分が感じていることを他人に委ねてしまう。
⇒「Iメッセージを使って表現してください」と提案する。「あの人は~」から「私は~を感じています」と表現することで、投影が起こらなくなる。
③反転行為
怒りを表現しないで自分の中に閉じ込めてしまうと、怒りのエネルギーは「自分を攻撃するエネルギー」となってしまう。
⇒怒りのエネルギーを感じてみる、怒りの対象者(エンプティチェアなど)に言葉や動作、表情で表現してもらう
④無境界
私の望んでいることなのか、他者が望んでいるのかが分からない状態。
⇒無境界になっている関係に境界線を引くように提案する。
⑤話題転換
話題を転換すること、問題をずらしてしまうこと。
⇒「いまーここ」の現時点でクライアントが話題転換したことを指摘し、たとえ都合が悪くても、多少、居心地が悪くてもそこにとどまるように指示する。そして、十分に感じてみることを勧める。
〇気づきの3つの領域
①からだの気づき(内部領域)
心、気持ち、感情、気分と呼ばれている精神領域の気づき。
②現実世界の気づき(外部領域)
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を使って感じる環境。
③思考の気づき(中間領域)
考え、分析し、原因を探し、合理的な判断をする思考。一方で、知識を増やすほど、自己を失ってしまう。知識を増やしてもそれは他人の価値観でしかない。「現代人の問題は、現実にコンタクトしないで現実を想像すること」。
〇ゲシュタルト療法の特徴
①実存主義
セッションの中心はクライアント。自分に責任を取るという立場から気づきのワークをする。
②テーマを決める
③「いまーここ」現時点で起きていること
クライアントが「いまーここ」でしている姿勢、動作、表情に注意を向ける
④動作を増幅させる
「いまーここ」で「図」に上がってきている気づきを意識的に増幅するよう提案
⑤「いまーここ」で起きていることに意識を向ける
⑥未解決な場面を思い出す
⑦経験する
「図」になって思い出された記憶や体験をしばらく経験する
⑧「地」から「図」
「地」と「図」が入れ替わった瞬間に気づきが生まれる
⑨未解決な問題
未解決な出来事をさらに十分に経験することを勧める
⑩どのように
クライアントが未解決な問題でどのようにその表現を止めているのかに気づいてもらう
⑪未解決な表現
その状況を再現してもらう
⑫エンプティチェア技法
クライアントは自分の前に座布団(イス)を置き、そこに未解決な問題の相手を(イメージして)座らせる
⑬身体中心型アプローチ
身体と言葉で未解決な感情を表現する
⑭どのように
どのように気づくことを止めていたかにも気づくことが大切
⑮表現を選択
自分の意識で選択することを支え続ける
⑯現象学(身体=精神)
心は常に「いまーここ」としてある身体世界の現象として現われ続ける
同じ領域(ゲシュタルト療法)を4冊も重ねると、特徴が見えてきます。「重ね読み」は読書でそのテーマの勘所をつかむコツだったりします。読書に限らず、試験勉強の問題集なんかも同じですね(経験から学んだ合格術です)。枝葉は一旦置いておいて、まずは目を幹に向けて全体像と要点をつかむ。そのうえで、関心のあるところを深堀していく、こんなスタイルが定着しています。