MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

最新中期経営計画の基本がよ~くわかる本(菅原祥公)

『最新中期経営計画の基本がよ~くわかる本』(菅原祥公)

 船井総研執行役員(2014年現在)である著者が中期経営計画を策定する人、作成をサポート人に向けて、エッセンスをまとめた一冊。コーチング&コンサルでも出番が多いと思い、あらためて経営計画を深堀していこうと思って読んでみました。広く浅く必要項目が網羅されている感じで、ある程度の規模の企業が主眼に置かれていますが、個人事業者の場合でも必要な部分だけを拾い読みしていけると思います。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇企業構造の6つのカギ

①トップ:トップの考え方が結局、社風と言われるものを創りあげる。

②事業方針:理念、ビジョン、戦略、目標などで構成される。

③ビジネスモデル;商流、金流、物流、情報流に分けてみることができる。

④人と組織:どのような組織体制で運営しているか。

⑤結果:業績、財務。

⑥外部環境:外部からの影響。

 

〇経営計画の範囲

①トップや創業者の考え方

 企業の方向性は、トップの考え方や人生観、事業観に左右される

②企業理念

 その会社の存在意義。基本的にその企業が存在する限り、追い求めていくもの。

③ビジョン

 より近未来の企業の目指すべき姿を指す。

④戦略

 現状とビジョン(向かう方向性)のギャップを埋めるために、どのような手を打つか

⑤目標

 1年後、3年後といったビジョンを見据えたマイルストーンを指す。

⑥具体的実施項目

 具体的に何を実施するのか、どのように活動するのかを示したもの。一般的には、年度計画。

 

〇計画策定のポイント

①現状認識力:現状をもれなく体系化する力

②長所発見力:企業の長所、伸ばすべきポイントを発見する力

③計画策定力:全員が一体化できる計画を創りあげる力

⇒実現可能な魅力ある経営計画の構築へ

 

〇経営計画策定の全体像

①理念・ビジョンなどの設定

②現状分析(内部・外部・財務)

③基本戦略構築

④基本経営計画立案(事業計画、組織・マネジメント計画、部門別事業計画)

⑤数値計画立案(数値計画(P/L,B/S)・投資計画・要員計画)

⑥単年度・最小単位への落とし込み(単年度事業計画・行動スケジュール、最小単位別目標の落とし込み)

 

〇理念の策定(自社は何のために存在し、どのような企業になっていきたいのか)

・トップの考え方を知る

 人生観、仕事観、使命感、企業観、企業理念への思い、創業時の思い、経営上でのエピソード、会社名の由来

・行動指針

 企業理念を現場の従業員における日々の行動にも活用できるよう、分かりやすく落とし込んだもの。

 

〇ビジョンの策定

・ビジョン構築のヒント

①企業理念から外れるものであってはならない

②5年、10年といった近未来の自社の目指すべき姿を示す

③従業員がワクワクするものであるべき

④事業ビジョン、組織ビジョン、数値ビジョンに分けて考えてみる

⑤経営計画の骨格となってくる部分であり、戦略、目標構築の基となる

 

〇外部環境調査

・市場鵜規模

・経済環境

・競合動向

・業界トップ層の動き

・購買対象顧客

・業界の動き

・ライフサイクル

 

〇内部分析

①ビジネスモデル分析

 商流、金流、物流、情報流などの基本的なビジネススタイルにおける強み・課題を分析

商流:何を誰にどのように提供するのか

・金流:お金の流れはどのようにするのか

・物流:物の流れはどのようにするのか

・情報流:情報の流れはどのようにするのか

②各種データ分析

 定量データ面より、特に伸びている部分、効率の良い部分を明確にする

・商品関連データ、顧客関連データ、人・部署関連データ、取引先関連データ、時系列関連データ

③マネジメント分析

 内部の組織状態やマネジメント手法、従業員のモチベーション状態などを把握する

・組織関連:組織とその組織機能、組織デザイン、要員計画など

・人事関連:評価、賃金、昇進、昇格、採用、教育など

・モチベーション関連:従業員満足、会社・仕事への思いややる気

 

〇財務分析

・収益性:総資本対経常利益率=資本効率(売上高/総資本)×利潤獲得力(経常利益/売上高)

・生産性:社員一人当たり加工高、労働分配率

・安全性:自己資本比率流動比率

・成長性:売上高、売上総利益、営業利益、経常利益の成長率

キャッシュフロー

 

〇現状分析総括

・ビジネスモデル面

・データ分析面

・マネジメント面

・財務面

・外部環境面

 

〇基本戦略構築

・事業領域:長所進展戦略、時流適応戦略

マーケティング:一番化戦略、ブランド戦略

・マネジメント:ボトルネック対応戦略、一体化戦略

 

〇経営計画立案

・事業領域計画

 ⇒既存事業におけるビジネスモデル計画

 (商品・営業・物流・情報・金流などのバックヤード体制)

 ⇒新規事業計画

・組織マネジメント計画(組織計画、各種人事制度計画)

・各部門計画(各部門計画への落とし込み、連携)

・各施策のインパクトの算定

 

〇数値計画

・要員計画の策定

・部門別損益計画の策定

・売上・限界利益計画(部門別・商品別)の策定

・全社損益計画の策定

・投資計画/返済計画の策定

キャッシュフロー計画の策定

 

〇経営計画の落とし込み

・経営計画の要約版策定

・従業員への認知

 全従業員への認知活動及び一体化促進によるベクトル合わせの実施

・単年度計画・月次C/F計画への反映

 C/F計画、数値目標、行動目標、責任者体制などを単年度に落とし込む

・最小単位への落とし込み

PDCAの徹底

 チェック機能を含め、PDCAをまわす体制の構築

 

  簡単に抜粋してもかなりの項目があります。実務的にも経営のど真ん中ですし、これまでのMBA中小企業診断士の学びからもど真ん中の領域です。ときには全体像を思い返しながら、細部を詰めていくようにしないと、何をやっているのか、何のためにやっているのか分からない状況に陥ってしまいます。全体像が見えると、安心感があり、課題も見えやすくなる。そんな経営の視座の大切さを感じるテーマでした。

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