「働き方改革」実践ガイド(山崎紅)
本書は、富士ゼロックス変革マネジメント部マネジャーである著者が、同社の働き方改革の取組み、改革する際のポイントをまとめた一冊。一般的な働き方改革の要点と事例が程よいバランスで記載されており、一見して分かりすくまとめられているので、改革のエッセンスを掴みたいというニーズにマッチしていると思います。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇働き方改革とは
・働き方改革の目的‥何のためにするのか
・改革後に目指す姿‥どういう状態になりたいのか
・背景‥なぜ、働き方改革が必要なのか
⇒何を変えることで働き方を改革するのか?
⇒①Who(人・組織)、②When(時間)、③Where(場所)、④How(手段・道具・プロセス)
〇何が新しい働き方なのか
①人
・男性、新卒採用、永年勤続を前提にフルに働ける人中心
⇒女性、外国人、高齢者、転職者、再就職者、育児や介護中など多様な人材
②時間
・フルタイム中心
⇒フレックス、時短、パートタイム、ワークシェアなど多様な労働時間
③場所
・オフィス中心
⇒オフィス、自宅、外出先、サテライトオフィス、コワーキングスペースなど多様な労働場所
④手段・道具・プロセス
・部分最適、社内システム、暗黙知、ムリ・ムダ・ムラがある非効率なプロセス
⇒ICT活用、全体最適、クラウドシステム、可視化、整流化、標準化された効率的なプロセス
〇何のためにやるのか。4つの目的。
①生産性向上
②多様な人材活用(ダイバーシティ)
③リスク対応力強化(BCP)
④ワーク・ライフ・バランス実現
〇何で成果を測るのか
■生産性向上
①インプットに対するアウトプットが増えたか
・営業員1人当たり売上/利益、1時間あたり売上/利益など
②無駄なインプットを減らす
・残業‥総労働時間、一人当たり所定外労働時間など
③インプットを有効活用
・業務の質‥成約率、顧客満足度など
■多様な人材活用
①人材の多様化
・女性比率、外国人比率、障害者雇用率、再雇用率、中途採用率など
②多様な人材の活躍
・管理職の女性比率、外国人比率、離職率、平均勤続年数、退職理由における結婚・出産・育児・介護の割合など
〇実現ステップ
方針決定⇒推進体制づくり⇒計画作成⇒宣言⇒実行⇒成果測定⇒残課題への対応
〇主な実施内容
①従業員の意識改革
②オフィス環境整備
③ICT導入
④新たな仕組みや制度導入
⑤社内規程の見直し
⑥業務プロセス改革
〇オフィスの外観を変える
・機能性向上‥安全、環境や省エネ、耐久性やメンテナンス性向上
・イメージアップ‥先進性、清潔感、親近感、オリジナリティ
〇オフィスの内部を変える
・機能性向上‥安全、情報セキュリティや出退勤管理、環境や省エネ、耐久性やメンテナンス性向上
・知的生産性向上‥コミュニケーション、リラックス、集中
・イメージアップ‥先進性、清潔感、親近感、オリジナリティ
〇人や組織を柔軟に活用する
・従業員の構成の多様化‥採用の多様化、再雇用制度の充実
・多様な従業員の活躍‥時間を柔軟に活用、場所を柔軟に活用、育児と仕事、介護と仕事、治療と仕事、女性活躍推進、若手活用と高齢者活躍、社内人材流動化、プロジェクト型組織
〇時間を柔軟に活用
・働く時間の多様化・適正化‥フレックス、時短、ワークシェアリング、時差通勤、偏見労働時間制、裁量労働制、サマータイム、勤務時間インターバル
・休暇取得促進‥年中有給休暇取得促進、育児休暇・休業取得促進、介護休暇・休業取得促進、失効した年休積立制度、特別休暇制度
〇場所を柔軟に活用
・社内‥フリーアドレス、目的別エリア(会議室、コラボレーションコーナー、Web会議コーナー、集中室、リフレッシュコーナー)、サテライトオフィス
・社外‥テレワーク(モバイル、在宅)
〇情報セキュリティ
①機密性‥正当なアクセス権限がある者だけが情報にアクセスできる
②完全性‥情報資産が完全な状態で保存され、内容が正確である
③可用性‥正当なアクセス権限がある者が必要なときにアクセスできる
〇働き方改革の宣言
・全員が集まる場所で経営層から説明
・目につくところに掲示する
・社内Webに掲載する
・説明資料を配布する
〇モチベーションの引き上げ
・情報提供‥スケジュールや進捗の公開など
・情報収取‥アンケート、事例取集など
・対話‥要望・意見を聞く場の設定、FAQなど
・盛り上げる‥イメージビデオ、発表会、表彰など
本書ではこれらの改革の骨格について、富士ゼロックスの事例も併せて記載されています。改革に抵抗や無反応など冷めた社内の状況やそこを乗り越える苦労はある意味セットで付いてきますが、本書ではそのあたりの泥臭い話は書かれていません。こうして、書籍として出版することも社内にもインパクトがあり、社外にPRするということ自体、後には引かない決意が現われており、素晴らしい取組みだなと思いました。