MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

すぐに結果を求めない生き方(鍵山秀三郎)

『すぐに結果を求めない生き方』(鍵山秀三郎

 『凡事徹底』で有名な、イエローハット創業者である著者が、人生を振り返り、その時々に出会った人たちの言葉、書物や先人たちの教えをまとめた一冊。前書きで紹介されている『「憧れ」の思想』(執行草舟)は、著者がこれまで読んできた本をすべて合わせてもかなわない内容の濃い本であり、本書とともに読んでほしいというメッセージがあります。どちらも自身を振り返り、沈思黙考するきっかけになる一冊です。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇道中の工夫

・「インテリは首から下を使おうとしない。勤労者は首から上を使おうとしない。頭と胴体の分裂に日本の悲劇、不幸がある」(東井義雄)

⇒人間には考えることと行動することが必要。それらがバラバラでは意味がない。考えながら行動する。行動しながら考える。この両方が合致したときに素晴らしい成果に結びつく。

・「道中の工夫は静中に勝ること百千億倍」(白隠禅師)

 

〇基礎練習

・「君たちは基本ができていない。そんな君たちにテクニックを教えてもムダだ。テクニックというものは、基礎・基本ができれば、自然に備わってくるものだ」(ジーコ元日本代表監督)

⇒基本のできていない選手がいいプレーができないように、基礎的な人格が低く人間力のない人に決していい仕事はできない。私たちに掃除が必要な理由は、そこにある。頭で考えたことは、心で感じたことに劣り、知識や技術は人間性には勝てないもの。

 

〇常に正しい生き方を貫ける人は少ない

 私たちはともすれば世論に流されてしまう。それは、個の人間にとって、大勢の中にいることは安心であり、孤立していることが心配だから。本能的に自分を守ろうとするからかもしれない。孤立を恐れず、人に流されないで、いかに正しさを貫くことができるか。そのために大切なことは、自分の目標が何であるかが、ブレないこと。

 

〇背水の陣では甘く、水中の陣の覚悟を

・「丁稚のけんかはいつまでも本質から離れない。学者の議論はいつの間にか本質から離れていく」(天野貞祐 獨協大学初代学長)

⇒ともすれば私たちは直面している状況の中で、限定された策のどちらが正しいかという議論をしてしまう。何が正しいかより、どちらが正しいかに終始してしまうのは、つまらないプライドのせい。

 

〇人を育てる哲学とビジョン

・「いい政治というのは、国民の要求を満たすことではない。いい要求を出す国民にすることがいい政治である」(『青年の思索のために』(下村湖人))

⇒本当によい心を育成しなければ、教育の意味がない。

 

〇教養人とは思いやりのある人

・「教養のある人とは、頭のいい人のことをいうのではなく、思いやりのある人だ」(孟子

⇒一流の大学を出ていても、思いやりに欠ける人は、知識人かもしれませんが、教養人とはいえない。掃除の活動をしていれば、自然と教養が身に付いてくる。思いやりのない人は続けることができない。なぜなら、掃除はみんなで助け合わなければできないから。助け合っていくには、他者に対する思いやりが必要。

 

〇平凡な人が平凡な仕事をしても成り立つ会社にした

 会社が発展した理由は、平凡な人が非凡な仕事をしたわけではなく、平凡な人が非凡な人になったわけでもない。そもそも経営者である私自身が平凡な人間なので、社員に非凡な仕事はいっさい要求しなかった。平凡な人に、「気」を入れることで、一人ひとりが責任感を持って普通に仕事をしてくれただけ。それでも経営は成り立つもの。

 

 掃除をすること、履物を揃えること、人に迷惑をかけないこと、、、当たり前のことを当たり前にやり続けること。やり続けている中で感じ、見えてきたものが著者にはたくさんあって、それが経営にどういう意味があったのか。まさに著者にしか書けない貴重な内容だと思います。

すぐに結果を求めない生き方 ほんとうの幸せは目に見えない

すぐに結果を求めない生き方 ほんとうの幸せは目に見えない

 

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