MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

たった一度の人生を変える勉強をしよう(藤原和博)

『たった一度の人生を変える勉強をしよう』(藤原和博)<2回目>

 「正解」が通用しない現代を生きる学生さん向けに、これからの勉強方法を描いた一冊です。具体的には、①シミュレーション能力、②コミュニケーション能力、③ロジカルシンキング能力、④ロールプレイング能力、⑤プレゼンテーション能力についてまとめられています。学生さんだけではなく、社会人にも普通に求められる能力なので、読み手の世代は関係ないかもしれません。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇0時限目「もう「勉強」だけでは役に立たない」

・成長社会では、1秒でも早く正解にたどり着くことが求められた。ジグソーパズルみたいなもの。

・成熟社会には正解はない。自分だけの答えを自分だけが持っている技術、知識、経験のすべてを組み合わせてつなげ、編集していく力が求められる。レゴブロックみたいなもの。

・世の中に正解がないということは、その正解を教えてくれる先生もいないということ。

 

〇1時限目「シミュレーション能力」

・何かを考えるためには、必ず「知る」というステップが必要。知らなければ、「調べる」という作業が必要。知る、調べること。「考える」は、全てそこから始まる。

・複眼思考:世の中に流れている情報を鵜呑みにせず、集まった材料をじっくり眺めて、手に取って、見比べる。「本当に正しいのか」というもうひとつの眼を持つこと。

・仮説:最終的な答えではなく、まずは設計図を作る。「こうすれば問題が解決するぞ」「この組み合わせだったらうまくいくんじゃないか?」。この設計図が「仮説」。正解がない成熟社会で導き出せるのは、あくまでも「仮説」にすぎない。

 

〇2時限目「コミュニケーション能力」

・「三人寄れば文殊の知恵」:「文殊」とは知恵をつかさどる菩薩さま。みんなで相談すればすごい答えが出る。一人で考えてもろくな答えがでない。

・ブレイン・ストーミング

①正解を目指さない

②他人の意見を否定しない

ディベート

①ある議題を設定する

②賛成派と反対派に分かれる

③それぞれの立場で自分の賛成・反対する理由を述べる

④第三者が、どちらの主張に分があったか判定する

 

〇3時限目「ロジカルシンキング

・検証:世の中にあふれる情報を鵜呑みにすることなく、いったん自分の頭で考える。自分の出した答えが本当に正しいものなのか、もう一度客観的に、そして論理的に考えてみる。この確認作業のことを「検証」という。

・3つくらいの理由を積み上げる。一つでは弱い。理由は根拠と言い換えてもいい。自分が導き出した仮説に、どれだけの客観的な根拠があるか。自分の「論」が「理」にかなっているのか。根拠をチェックする癖をつけよう。

 

〇4時限目「ロールプレイング能力」

・実際に役割を演じてみる「〇〇ごっこ遊び」。

・「本当の自分」よりも大切なのは、「もう一人の自分」を持つこと。「もう一人の自分」がいるからこそ、思い詰めることなくいい意味での逃げ場ができる。ロールプレイは、なかなか思い通りにいかない人生を生き抜く、大切な技術でもある。

 

〇5時限目「プレゼンテーション能力」

・照明:答えを共有すること。自分だけの”納得解”を「みんなにとっての納得解」にすること。自分が導き出した納得解は、どんなに綿密な検証を重ねていようと、それだけでは「個人の意見」にすぎない。

・マンガの第一話は、読者に対するプレゼン。

・面接の自己PRも、セールスマンの営業トークも、政治家の選挙演説も、すべてはプレゼン。自分の「仮説=納得解」を紹介して、共感してもらい、信頼してもらって信任を得る行為。

・一人で「これが答えだ。これが正しい」と思っていても、それだけでは誰もついてきてくれない。もしやりたいことがあるなら、実現したい夢があるなら、胸の中にしまっておかないで、たくさんの人に話していこう。自分にはこんなアイデアがある。こんなことがやりたい。こんな夢を持っていると、言葉にしていこう。そしてたくさんの人を巻き込んでいく。一人で考えているうちは、「夢」だったことも、仲間と共有すれば「目標に変わる」。プレゼン力は、「他人を味方につける力」。

 

  本書で紹介されている能力は、基本的なビジネススキルとして求められているものではありますが、経験を積みながら自然と身に付けている人は多くても、これを徹底的に突き詰めて学び、実践している人は意外と少ないのかもしれません。まさにビジネススキルの基礎練。基礎練のすごい人に出会うと、「なんか違うすごさ」を感じます。この5つの能力。徹底的にやってみたらどうなるのか。5年、10年後を見据えて取り組む価値のある領域だと思いました。 

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