MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

不安のメカニズム(クレア・ウィークス)

『不安のメカニズム』(クレア・ウィークス)(〇)

 講義のような語りかける文章、分かりやすい表現。専門的な内容をかみ砕いて説明されており、読みやすい内容でした。ただ、300ページ強の割りに2倍くらいの時間がかかったのは、私が知らない分野だったからかもしれません。心の問題がどのようにして始まり、深刻になっていき、どうしたら治せるか。まさにタイトル通り、不安のメカニズムを知ることができる一冊です。重要ポイントが多すぎて書ききれない良書です。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇心の疲労を引き起こす4つの疲労

①筋肉の疲労、②感情の疲労、③頭脳の疲労、④魂の疲労

心の疲労について理解すると、自分の症状や体験をより深く理解できるようになり、その理解が、今抱えている当惑を和らげるのに役立ち、回復への道が見えてくる。

 

 〇2つの恐怖

神経症を引き起こすきっかけとなった最初の問題そのものは解決していて、恐怖の直接の原因にはなっていない場合。その問題によって引き起こされた様々な心と体の症状に対する恐怖に心が囚われている。

②病気の発端となった問題そのもの。この場合、発端となった問題が解決されない限り病気は治らない。

 

神経症の治療法

 治療法の根本原則は、次の4つ。

①真正面から向き合う

②受け入れる

③浮かんで通り過ぎる(フローティング)

④時がたつのに任せる

⇒次のようなことを試してみる

・緊張や恐怖を感じても、その上を浮かんで通り過ぎる

・マイナス思考や心無い言葉も、浮かんでやり過ごす

・戦うのをやめて、浮かんで通り過ぎる

・何事も受け入れ、もっと多くの時間が経つのに任せる。

 

〇回復に必要な4条件

①指示通りにきちんと実行する

②失敗・挫折があってもあきらめない

③自分のことを憐れに思わない

④後悔はできるだけしない。とくに「もしあの時・・」と考えない。

 

〇悩み事への対処

・自分が納得できる解決策、あるいは妥協策が見つかるまで、慎重に選んだ助言者と一緒に、あなたが抱える問題について話し合う。これまでとは違う見方を探す。

・新しい見方が見つかったら、それをしっかりと維持する。初めは一日のうち、ごく短時間しかそれを「垣間見る」ことができなくても、それで十分なので、あきらめないこと。

・次のことをよく覚えておく・・・自分の抱える問題に対してひとつの見方を維持することは、疲れた頭を支えるつえの役目をする。

・疲労のために集中して物事を考えられない場合は、無理に考えようとしない。疲れた頭に負担をかけないスピードでゆっくり考えればよいのだと自分に言い聞かせる。

・一度消えた恐怖がまた戻ってきても、もうダメだと思わない。後戻りすることがあっても、それをすべて受け入れ、その上を浮かんで通り、回復への道を歩み続ける。

・すっかり治るまでは、自分で決断をくだせなくていい、それは大したことではないと考える。

・転地のチャンスがあったら、それを利用する。

 

〇悲しみへの対処

・じっとしたままくよくよと考えない。

・自分を忙しくさせる。

・今の状況に希望の光をともそうと決意する。

・つらい記憶を呼び起こす物はしばらく目のつかないところにしまう。

・自分の幸福は他人に完全に依存するものではないことを常に思い出す。

・あなたを傷つけた相手に対する報復は考えない。それは天に任せる。

 

〇強迫観念への対処

・ありのままに受け入れ、強いて忘れようとしない。

・戦うのをやめる。

・他の見方を「ちら見」する。

・時間の経過に任せる。

 

〇自信の喪失への対処

・自分がばらばらになってしまったような感覚は、心と体の疲労が生み出したものだ。感情が過激な反応をするようになっているところに、考えるスピードが遅くなった頭脳による混乱した思考が加わって引き起こされた一時的な状態にすぎない。

・心と身体の状態が安定して来れば、自分がバラバラになってしまったような感覚はなくなる。

・つらい時期があっても、ひたすら前に進み続けていれば、きっと自信が湧いてくる。

・回復の過程で、いい時期があったり悪い時期があったりするのはごく普通のことだ。山あり谷ありの道でも、全体としてみれば、必ず頂上に向かっている。

・自分自身の経験を通して得られた自信は、決して完全に失われることはない。

 

〇外界から切り離されたように感じたら

・通りを歩いていて、「まわりの人と同じ世界に戻れる日が、いったいいつ来るのだろうか」と考え始めたら、自分の中にある恐怖に満ちた世界に対する関心が薄れれば、すぐに戻れるのだということを思い出す。

・「正常な感覚」を強いて取り戻そうとしない。

・他人が自分に対して変な接し方をしているように感じられても気にせず、肩をすくめてやり過ごす。

 

 セルフケアの観点で役立った一冊でした。やること、つきあう方が増えれば増えるほど、いろいろな感情が湧いてくるもの。チャレンジしていれば、それは自然なこと。自分の心理状態に意識が向いて、違和感があれば素直に感じ、どういう心持で臨もうか。私の場合、常に一歩引いた冷静なところがあり、自分を客観視するような感覚があります。なので、自覚しているストレスが少なかったり、悩み事も相対的に少ないのかもしれません。たまには、心のケアに関する本もいいものだと思いました。