MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

アルフレッド・アドラー 一瞬で自分が変わる100の言葉(小倉宏)

『アルフレッド・アドラー 一瞬で自分が変わる100の言葉』(小倉宏)(◯)

 前作の『人生に革命が起きる100の言葉』を読んだとき、当時アドラー本で一番わかりやすいなと感じていましたが、本作もとても理解しやすい内容でした。アドラー本はたくさんあり、アドラー自身の著書も数多く、しかもちょっと読みづらいものが多いので、エッセンを抜き出して解説してくれる、本書のような存在はありがたいです。「つまり何なのか」を掴むのに手頃な一冊です。前作と合わせて読むと、より全体像が見えてくると思います。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯人間であるということは、劣等感を持つということ

 誰もが現状よりも高い目標を掲げる。仮に目標を達成しても、必ず「もっと、もっと」と、さらに上を目指す。だから、構造的にも劣等感(劣等であると主観的に思い込むこと)に終わりはない。

 

◯劣等感に気付かなくなる

 劣等感は一般に弱さを示すものであり、何か恥ずべきものとみなされるので、劣等感を隠そうとする傾向が強いのは当然。本当は心の奥底に劣等感があるにもかかわらず、それに蓋をして、あたかも劣等感などないかのように振る舞い、自分に嘘をつき、やがて劣等感そのものの存在に気付かなくなる。私たちにできることは、劣等感を消すことでも、隠すことでもなく、劣等感があると認めた上で、それを上手に使いこなすこと。

 

◯コンプレックス

・コンプレックスとは、劣等感を言い訳にして人生の課題から逃げ出すこと。

・優越コンプレックス:いかにも強いふりをしてごまかす。背が低い人がつま先立ちで歩くようなもの。

・劣等コンプレックス:できない理由や自らの弱さ、無力さをひけらかし、他人の手助けや課題の免除、同情を持つ。「AだからBできない」という論理、「Yes,But」を多用する。

・劣等感を言い訳にするのをやめて、課題に立ち向かい始めるときこそが、変わり始めるとき。

 

認知バイアス

・記憶は都合の良いように捏造される。

・自分が信じるストーリーに沿った、都合のいい体験だけを無意識にピックアップして、自分のストーリーを補強する。最初に結論ありき。理由は後からひねり出す。

 

◯見せかけの因果律

 「AだからBできない」のではなく、本当は、Bに挑戦して失敗したくないからAという「見せかけの因果律」を作っている。「金がないからできない、という人は、金があってもできない人である」(小林一三)。

 

◯勇気とは「自分に能力があり、価値がある」と思える感覚

 自分に価値があると思えるときだけ勇気を持てる。そう思えるのは、自分の行動が共同体に有益であると思えるときだけである。勇気とは、「自分には能力があり、価値がある」と思える感覚。「自分は課題を解決できるし、他者に貢献できる(能力がある)」。そして、周囲の人は仲間で自分で自分の居場所がある(価値がある)」と思える感覚。すると、「(他の人ができることなら)私にもできる」と思い、困難に立ち向かう力を得る。

 

◯悲観主義は気分のものであり、楽観主義は意志のものである

・楽観主義者:性格の発達が全体としてまっすぐな方向を取る人のこと。

・悲観主義者:眼差しは、常に人生の影の面に向けられ、楽観主義者よりも、人生の困難を意識し、容易に勇気を失う。

 

◯普通であること

 勇気がある人は、「普通」であることを恐れない。「特別」な何かを持っていなくても、今のままで十分、仲間から受け容れられる価値があると思っているから。つまり、欠点や不足がある自分をありのままで受け容れているということ。周囲の人を仲間だと信じているということ。

 

◯共同体感覚

・共同体感覚とは、他者を喜ばせることに喜びを感じる心。奪うことよりも与えることに喜びを感じる心。

・あらゆる問題は対人関係の問題。対人関係の成功、失敗を測る尺度は「共同体感覚」にある。共同体感覚があれば、人生は成功し、なければ失敗する。アドラー心理学のシンプルな考え方。

 

◯共同体感覚が低い人は、シャドーボクシングをしている

 相手にはそんな気がないのに、相手の言動をあたかも自分への攻撃であるかのように思い込み、勝手に防御し、逃げ回る。そして、隙あらば、相手への反撃のパンチを繰り出す。周囲の人を敵だと思う人は、常に「シャドーボクシングをしている」。

 

◯感情

 人は性格(ライフスタイル)に沿って行動する。しかし、それがコモンセンス(共通感覚)からずれているときに、自分の性格を押し通すために感情を創り出し、利用する。行動=性格(方向性)×感情(推進力)。感情とは、自分のかんかうを貫くための行動の増幅装置である。

 

◯共感

 関心を寄せて共感することは、相手の立場に立つことであり、相手を理解すること。往々にして間違うのは、相手の立場に立たずに、自分の立場のままで相手を理解したと勘違いしてしまうこと。共感が必要なのは、理解のためだけではない。共感はそれ自体が勇気づけとなる。

 

 アドラー心理学は自分と相手への厳しさと優しさの両面を持ち合わせた部分がありますが、これが内省が進み、かつ悩みすぎない程よい感じに思えます。私の場合、アドラー心理学だけを追求するのでなく、アドラーの考え方を取り込むこと自体で、考え方が適切に方向修正される感覚があり、とても大切な領域になっています。 

アルフレッド・アドラー 一瞬で自分が変わる100の言葉

アルフレッド・アドラー 一瞬で自分が変わる100の言葉

 

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