MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

絵で見る十字軍物語(塩野七生)

『絵で見る十字軍物語』(塩野七生

 本書は、『十字軍物語』全3巻のダイジェスト版のような存在。ページ左にギュスターヴ・ドレの美しい版画絵(ドレの版画絵は、ミショーが書いた『十字軍の歴史』の挿絵として書かれたものです)、ページ左に地図と要点が書かれています。使い方としては、①本編を読む前に全体イメージを掴むために読む、②本編を読みながら並行して読む、③本編を読み終えた後に全体を振り返りながら自分がイメージした映像と本書の版画絵比べて楽しむと、いろいろあります。私は③でした。自分の想像力(場面イメージ力)がさらに広がる感じ、振り返りなが物語全体が繋がる感じが良かったところ。文字数自体は少ないので、さらっと読めます。タイトル通り絵を見ながら楽しむ一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

 ◯まえがきより

 ともかくこれで十字軍の歴史のビジュアル化は成ったことになるが、ビジュアル化とは簡略化のことでもある。この『絵で見る十字軍物語』の一冊で十字軍の全史は視野に収められるとしても、それだけは本当に分かったとは言えない。世界の二大宗教が激突したの十字軍である。それにこれは、高校の教科書ではない。この十字軍がもたらした善悪両面での後世への影響を理解するには、十字軍がどのように始まり、どう進行し、またどのようにして終わったかを詳細に追う必要が絶対にある。

 

◯表紙の絵(本書の中に掲載されている「ともに歩むキリスト」より)

 最大の関門であったアンティオキアも後にし、いよいよ遠征の最終目的地であるイェルサレムに向かう十字軍では、これまであった諸侯の確執も消え、兵士も巡礼も心は一つになっていた。

 イェルサレムを目指して一路南下する彼らにしてみれば、自分たちのかたわらをともに歩む、主イエスの姿を見る思いであったろう。

 そしてその姿は、彼らが故郷のヨーロッパの教会で見慣れた十字架上のイエスでなければならず、またそのイエスは、天使たちとともに現れるのも、中世のキリスト教徒にとっては当然すぎるくらいに当然な想いであったのだ。

 

 この本の良さは、現物を手に取るに限ります。パラパラ見てみると、版画絵の素晴らしさが印象に残り、「内容を理解するんだったら本編3巻だけで十分でしょう」という気持ちが消えて、この本が(コレクター的に)ほしくなってしまいます。読書というよりは、趣味の世界。絵本と同じ。こういう本の楽しみ方があってもいいかなと思います。 

絵で見る十字軍物語

絵で見る十字軍物語

 

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