MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

コトラーのマーケティング4.0(フィリップ・コトラー)

コトラーマーケティング4.0』(フィリップ・コトラー)(◯)

 フィリップ・コトラー先生の最新刊です。生産主導のマーケティング1.0⇨顧客中心の2.0⇨人間中心の3.0。2010年に3.0が出て7年。さて、これが4.0になってどう発展しているのか、とっても興味が湧きました。デジタル経済では、製品はよりパーソナライズされ、サービスはよりパーソナルになる世界。一方、人々は人間的な触れ合いを求める。この逆説をうまく利用することが成功のカギ。デジタル経済における「カスタマー・ジャーニー」(サービスを知った顧客が購入・推奨に至るまでの道筋)の質に適応するまでのプロセスに着目したマーケティング施策を新たなフレームワークを交えながら解説する、示唆に富んだ良書です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

マーケティング4.0

 マーケティング4.0は、企業と顧客のオンライン交流とオフライン交流を統合し、ブランド構築におけるスタイルと内容を融合させ、最終的にマシン・ツー・マシンの接続性を人間と人間の触れ合いで補完することで、顧客エンゲージメントを強化するマーケティングアプローチ。デジタル・マーケティングと伝統的マーケティングは、顧客の推奨を勝ち取ることを最終目標として共存しなければならない。

 

◯横のつながりを重視する社会

・企業から市場へと進んでいたイノベーションの流れは今や横のつながりから生まれる。マーケティング・コミュニケーションよりもFファクター(friends友達,families家族,Facebook fansフェイスブックのファン,Twitter followersツイッターのフォロワー)

が信頼され、広告や専門家の意見よりソーシャル・メディア上で見知らぬ人たちにアドバイスを求める世の中。

 

パラドックスの中のマーケティング

・オンライン交流対オフライン交流。この2つは共存して、優れた顧客体験を提供するという共通の目的のために補完し合うべきもの。

・情報を持っている顧客対注意散漫な顧客。接続性は豊かな情報で顧客にパワーを与えているが、顧客は他者の意見に頼りすぎるようにもなっており、他者の意見が往々にして個人の選考より重みを持つ。

・ブランドは批判的な意見を引き寄せがちだが、必ずしも悪いことではない。なぜなら、批判的な意見は通常好意的な意見を活性化するから。

 

◯カスタマー・ジャーニー

■接続性以前の時代

①認知(Aware)

②態度(Attitude)

③行動(Act)

④再行動(Act Again)

■接続性の時代

①認知(Aware)

(顧客タッチポイント、以下同じ)

・他者からブランドのことを聞かされる

・たまたまブランドの広告に触れる

・過去の経験を思い出す

②訴求(Appeal

・ブランドに引きつけられる

・検討対象にする少数のブランドを選ぶ

③調査(Ask)

・友人に電話をしてアドバイスを求める

・オンラインで製品レビューを検索する

・コールセンターに電話をする

・価格を比較する

④行動(Act)

・店舗かオンラインで購入する

・その製品を初めて使う

・問題について苦情を言う

・サービスを受ける

⑤推奨(Advocate)

・そのブランドを使い続ける

・そのブランドを再購入する

・そのブランドを他者に推奨する

■変化1

 接続性以前の時代には、個々の顧客がブランドに対する自分の態度を決めていた。接続性の時代には、ブランドの当初の訴求力が顧客を取り巻くコミュニティの影響を受け、顧客の最終的な態度を決定する。

■変化2

 接続性以前の時代には、ロイヤルティは顧客維持率とか再購入率とか定義されることが多かった。接続性の時代には、ロイヤルティは究極的にはブランドを推奨する意思として定義される。

■変化3

 ブランドを理解するという点において、顧客は今では互いに積極的につながり、質問したり推奨したりする関係を築く。このつながりは、カンバーセーション中のバイアスによって、ブランドの訴求力を強化することもあれば希薄化することもある。

 

◯新しい測定方法

①PAR(購買行動率)=購買行動をとる人の数/認知している人の数

 企業が自社を認知している人々を購買行動にコンバートすることにどれくらい成功しているかを測定する。

②BAR(ブランド推奨率)=自発的に推奨する人の数/認知している人の数

 企業が自社を認知している人々を忠実な推奨者にコンバートすることにどれくらい成功しているかを測定する。

 

◯コンバージョン率を上げるために企業ができる介入

①訴求/認知⇨誘引力

マーケティング・コミュニケーション

・ポジショニングの見直し

②調査/訴求⇨好奇心

・コミュニケーション・マーケティング

・コンテンツ・マーケティング

③行動/調査⇨コミットメント

・セールスフォース・マネジメント

・チャネル・マネジメント

④推奨/行動⇨親近感

・顧客ケア

・ロイヤルティ・プログラム

 

◯カスタマー・ジャーニーの理想型(蝶ネクタイ型)

①認知⇨訴求・・引きつけ(多⇨中)

②訴求⇨調査・・好奇心(中⇨少)

③調査⇨行動・・コミットメント(少⇨中)

④行動⇨推奨・・親近感(中⇨多)

・完璧なBARスコア(認知=推奨)

・ブランドに引きつけられるすべての人がそれを購入する(訴求=行動)

・もっと調べる必要があるとは必ずしも思わない(調査<行動)

 

◯段階的コンテンツマーケティング

 広告が製品・サービスの販売を促進するために伝えたいと思う情報を含んでいるのに対し、コンテンツは顧客が自分の個人的・職業的目的を達成するために伝えたいと思う情報を含んでいる。

①目標設定

 このコンテンツ・マーケティング・キャンペーンで何を達成したいか

②オーディエンスマッピング

 顧客は誰で彼の不安や欲求は何か

③コンテンツの構想とプランニング

 コンテンツの総合的なテーマは何で、コンテンツ・ロードマップはどのようなものになるか

④コンテンツの制作

 誰が、いつコンテンツを制作するか

⑤コンテンツの配信

 コンテンツ資産をどこで配信したいか

⑥コンテンツの拡散

 コンテンツ資産をどのように活用して顧客と交流するつもりか

⑦コンテンツ・マーケティングの評価

 このコンテンツ・マーケティング・キャンペーンはどれくらい成功したか

⑧コンテンツ・マーケティングの改善

 現行のコンテンツ・マーケティングをどのように改善するか

 

 ちょっと濃厚な内容でした。3.0以上に4.0のほうが内容が濃いなと思ったのは、自分の感度が上がったからか、フレームに基づく解説が多かったからか、3.0よりも内容がどう展開するか予想がつかず楽しみながら読めたからか。いずれにしても、早めに読んでよかった一冊でした。

コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則

コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則

 

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