『40歳が社長になる日』(岡島悦子)(◯)
グロービス経営大学院の人気講師でコンサルタントとして独立開業されている岡島先生の最新刊です。これからの非連続成長の時代に経営の舵取りをする経営トップの役割に着目し、これまで多くの経営者と課題解決を重ねてこられた著者の経験がまとめられています。不確実な時代に意思決定をしていくことが求められる次の経営トップは戦略的かつ計画的に生み出していかなければならない。そう遠くない未来、伝統的な上場会社でも40歳の経営者が生まれるようになるはず。その「10年後の社長を作る」ために何が議論されているのか、これからの経営者を考えるための一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯2010年代以降の経営環境「VUCA」
・V(Volatility):変動
・U(Uncertainty):不確実
・C(Complexity):複雑
・A(Ambiguity):曖昧
◯共創
・顧客ニーズは高速変化しており、数十年単位のビジョンなど、とても現実的ではない。
・リーダーは大きな方向性を決め、顧客インサイトを引き出せる多種類の専門家を現場に配置し、その最前線の現場環境整備にコミットし、そこから抽出された顧客インサイトに基づいてビジョンを作り上げていく。
◯人間がAIに勝てるのは「課題抽出」
・課題解決は機械がやってくれる。人間がしなければならないのは、課題を抽出すること。しかも、機械に負けないレベルの課題を抽出すること。
・そこで大事になるのが、複数の専門領域を持つこと。
・強みの要素(=キャリアのタグ®︎)の掛け算による比較優位の構築こそがこれからの時代に求められる。
◯逆転のリーダーシップ(リンダ・ヒルHBS教授)
・顧客に最も近い現場の最前線の人たちが専門性を駆使してチームで顧客インサイトを探り、その情報が全社に縦横無尽に取り込まれていき、最終的な意思決定者のリーダーまでやってくるという流れ。
・顧客に最も近く、顧客インサイトを持っている現場の社員を、リーダーが徹底的に守れるか。彼らの潜在能力たる「天才の一片」を引き出せるかどうか。これこそが、新しいリーダーシップ。
◯羊飼い型のリーダーシップ
羊たちはそれぞれに個性的で、能力を持っている。リーダーの指示に従い、行動することができる頭の良さもある。そして、ある程度は意志を持って自由に行動することもできる。しかし、ひとたびリーダーが声をかければ、全員が集まって一つの方向に向かう。背後から指揮をとる。そんな羊飼い型のリーダーシップこそ、これから目指すべきもの。
◯組織文化づくりの4つのキーワード
①善意の失敗を許容する
②相互信頼の構築
③自由と規律
④理念・文脈づくり
◯Succession Planningにおける後継者候補育成のロードマップ
①ハイポテンシャル人材発掘
②次世代経営者育成研修
③母集団への抜擢
④小規模「経営トップ場数」機会への登用&次世代経営者育成研修
⑤適性モニタリング+経営トップ候補絞り込み
⑥中規模「経営トップ場数」機会への登用&現社長からの助言
⑦次のX年の経営課題の方向性定義とそれに合致した候補者の指名
⑧社長就任
⑨取締役会からの助言・監督
◯エリートプログラムを作る
・「伸びしろ」をいかに測るか
・エリートプログラムに乗せて、思い切ったことをやらせてみる。ジョブローテーションで3ヵ所くらい経験させ、適性を見てみる。そういう経験ができるような仕組みや風土をつくっていくべき。
・ダイバーシティ(=多様性)で求められるのは、「視点」や「経験」の違い。属性ではなく、「違う頭の中身を持っている」ことが本当のダイバーシティ。
・したがって、必ずしも心地よいものではなく、「居心地の悪い状況」を作り出すことこそ大切。それこそが、ダイバーシティが実現している証。
◯多様性を活かす組織(多様なままで働くことを可能とする)
・多様な視点を意思決定に活かす
・時間当たりの生産性評価、形式知化(サッカー型)
・時間と場所にとらわれない働き方、環境整備
・権限委任(コーチング)
・リーダーシップ中心
・三位一体の変革活動
①女性社員個人の意識、②上司の意識と理解、③経営トップの覚悟と啓蒙活動、+生産性>長時間労働という文化と制度
◯女子も男子もかかっている「10大疾病」
①アクセサリー勝負病(キラキラ女子)
②嫌われたくない病
③体力過信病
④まだまだ病、過小評価病
⑤出世嫌悪病
⑥キャリア迷子病
⑦白馬の王子待ちすぎ病
⑧努力安心病
⑨燃え尽き逃避病
⑩チャック女子®︎病(最後には男になっちゃえばビジネスの世界で生きていくには楽だろうという女子)
◯早く打席に立つ
・自信とチャレンジ、鶏か卵か。とにかく「早めに打席に立つ」。これしかない。
・キャリア開発で男女で唯一違うのは、出産を考慮した場合のキャリアの時間軸設計。人生の中で出産することを考慮するのであれば、女性は、仕事上でのキャリアの早いうちに成果を出し、ライフイベントの時期を自分のタイミングで選べるようになっておくことを勧める。
・「考える」と「悩む」を切り分けることをしないと、ぼんやり悩みすぎて、異動、プロジェクトへの抜擢、昇進などの成長の機会を打診されても「まだまだ」と断り、打席を逃してしまうことになる。
・前倒しのキャリア®︎を実際に推進していくと、各社でいくつかの副次的効果も生まれている。自分の得意分野や好きな仕事の早めの発見、適応変化力の獲得、全く新しい部署でも「私ならなんとかできるのではないか」と思える自己効力感。
◯新時代リーダーの10条件
①課題設定力、先見性、仮説構築力、大局観
②変化抽出力、変化適応力、カオス耐性、胆力
③素直さ、伸びしろ、学習能力
④自己効力感
⑤比較優位となる強み(タグ)の自己認識と機会開発力
⑥多様性受容力
⑦越境力、領域をつなぐ力、違う領域の人脈
⑧共感力、熱量、物語力、チャーミングさ
⑨機会提供力、コーチング力、環境整備力
⑩意思決定力、実行力、仮説検証スピード
かなり濃厚です。それもそのはず、次世代の経営者をつくろうとしているのだから。求められる知識・能力・経験・考え方。会社のプログラムや風土づくりももちろん必要です。それに加え、自己啓発や人脈づくり、行動力など、会社を離れて一人の時間になったときの意志の強さや取り組みへの継続力など、自然体ではうまく行かない誘惑に打ち勝つ力も必要であり、私のばあい、このあたりに自分が将来貢献できそうな世界がありそうという感覚があります。常にアンテナを張っておきたいテーマですね。