MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。MBA講座と歩む読書生活。講座関連の書籍、講師お薦め本などを紹介。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキルなど、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ヒトは「いじめ」をやめられない(中野信子)

『ヒトは「いじめ」をやめられない』(中野信子

 著者は、脳科学者、医学博士、認知科学者。本書は、子供、大人の「いじめ」がなぜ起こるのか、どのように防止・対応していけば良いのか、脳科学の観点から論じたもの。人間社会において、どんな集団においても、排除行動や制裁行動がなくならないのは、そこに何かしらの必要性や快楽があるから。特に、子供時代は、「誰かをいじめると楽しい」という脳内麻薬に対して、共感というブレーキは働かないため、これを止めるには、「自分が相手を攻撃すると損をする」というシステムが必要。「賢く相手を攻撃したもの勝ち」という構造をどのように打破すれば良いのか。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯向社会性

 「サンクション=制裁行動」は集団になればほぼ必ず生じる。そもそもは、仲間を守ろう、社会性を保持しようという、集団を維持するための「向社会性」の表れ。向社会性が高まりすぎると、①排外感情が高まる、②「排除しなければ」という感情に伴う行動(サンクション)が発動すべきではないときにも発動してしまう。

 

◯愛情ホルモン オキシトシンの影響

オキシトシン自体は良いものでも悪いものでもなく、仲間を作るために必要だから分泌される。仲間を大切にしようという気持ちと、そのために良い仲間を作ろう、良い仲間を選別しようという気持ちは表裏であり、後者が強くなることでサンクション=いじめが発生しやすくなる。

・集団でいることで向社会性が高まってくる。そして、集団の中で逸脱した人を排除したいという気持ちも同時に高まっていく。これが仲の良い集団ほど、いじめが起こりやすいというジレンマ。

 

◯裏切り者検出モジュール セロトニン(安心ホルモン)

・逸脱者を見つけ出そうとする、検知する脳の思考プロセス。

セロトニンが多く分泌されるとリラックスしたり、満ち足りた気持ちになり、セロトニンが少ないと、不安を感じやすくなる。

・日本人は、先々のリスクを予想し、そのリスクを回避しようと準備をする「慎重な人・心配性な人」、さらに、他人の意見や集団の空気に合わせて行動しようとする「空気を読む人」が多くなる傾向がある。心配性である=リスクを考えるということは、つまり、「裏切り者検出モジュール」の強度が日本では高くなり、「この人は将来的な不安の種になるかもしれない」ということを検出する能力が高くなる。

 

ドーパミン(快楽物質)

・いじめの始まりは、「間違っている人を正す」という気持ちから発生する。いじめている側の、自分は正義であるという思い込みは絶対で、自分の行動を正当化し、「正しいことをするのは楽しいことだ」という感覚で相手を攻め、批判し、追い込んでいく。

・最近は誰もが、バッシングをすることで得られるドーパミンの快楽を求めて、常に叩く相手を探しているかのよう。

・「正義」の傘の下、いじめている側をどんなに諭そうとしても、そこには「自分は正義を行なっている」という無意識的な大きな満足がある。

 

シャーデンフロイデ(他人の不幸は蜜の味)

 妬み感情は人間にもともと備わっている感情なので、止めることはできない。妬み感情がある場合には、その妬みの対象に不幸なことがあると、脳内で快楽を司る、”線条体”と呼ばれる部分の活動が活発になり、喜びを感じてしまうことがわかっている。

 

◯性ホルモン

 いじめや暴力行為は小学校高学年から中学二年生という年代に過激化する。身体が子供から大人に生まれ変わるこの変化には、性ホルモンが大きく関わっている。テストロン(男性ホルモンの一つ)による攻撃性が高まるこの時期に、裏切り者検出モジュールと、その攻撃性が結びつくことで、制裁行動はより苛烈になる。

 

◯いじめが増える時期は6月と11月

・5〜6月、10〜11月は、日照時間が変わる時期にあたるので、セロトニン(安心ホルモン)の合成がうまくできず、分泌量も減り、その結果、不安が強まり、うつ状態を経験する人が散見される季節。

・この時期、学校では運動会など大きな行事が終わった直後。運動会や学芸会は、集団行動が多く団結が求められる。そこでは、オキシトシンが高まり、ルールに従わない人や、みんなと違う動きをする人、クラスの役に立たない人が目立ちやすくなるという状況を作ってしまう。

 

◯いじめの回避策

・妬み感情を抱かせないようにするためには、類似性と獲得可能性を下げること。

・類似性を下げる一つは、服装などの外見や言動などにおいて、「若さ」や「女性らしさ」を前面に出さないこと。

・獲得可能性を下げるには、「あの人には敵わない」と思わせることが最も効果的。自分はこの仕事や分野においてはプロフェッショナルであるということを見せる演出。数字やデータを用いて理論的に説明・反論できるようにしておく。

・妬み感情と敵対しないためには、「この人は自分の領域を侵さないだろう」「自分の的にはならないだろう」と思わせること。「自分は完璧な人間ではありません」とアピールする。負の部分を相手にさらけ出す(アンダードッグ効果=相手に自分の腹を見せること)。

・苦手な人と仲良くなろうと無理をするのではなく、適度な距離を保ち、お互いに傷つけ合わないことを目指す”60%の仲”を目指すといった気持ちで対応していく。

・男性が苦情を申し立てる時には、「正直」に語る潔さを見せることが、相手の感情を沈静化する適切な対応。

・女性のクレームに対しては、話を最後まで聞き、クレームの背景にある不安な気持ちに「共感」することが有効。

・6月と11月の学級危機を回避するには、「イベントはあくまで通過点である」ことを伝えてしまう、別の楽しみや社会的報酬を与える(新しい出番や役割を与える)。

 

 脳について理解するということは、本来、人間はどんな行動をとってしまうのかという事実を知ること。それを知っているだけで、自分の行動や対処が変わるはず。イメージだけよりもこうやって根拠を示してもらえると腹落ちしやすいですね。

ヒトは「いじめ」をやめられない (小学館新書)
 

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