MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

エンプティチェアテクニック入門(百武正嗣)

『エンプティチェアテクニック入門』(百武正嗣

 まず裏表紙より。「エンプティチェアテクニックは、心理関係、カウンセラーなどの専門家の中ではかなり知られた技法だが、ゲシュタルト療法という特殊な分野から生まれたテクニックのため、カウンセリング技法としてのガイドラインやマニュアルはあまり見受けられない。本書は、エンプティチェアテクニックをさまざまな場面で活用してもらえるよう、その理論的背景、具体的なテクニック、レッスンの進め方などを詳述、最終章にはワークを含めてそのプロセスを紹介した」。

 コーチング、カウンセリングのセミナーなどでも学ぶ機会があったエンプティチェアですが、これに特化して詳しく書かれているので、1度目にした方が復習するのに適した一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯エンプティチェアテクニックとは

 2つの椅子があればよく、どちらか一方に本人(クライエント)が座り、もう一つの空椅子に対話したい人物を置く。空の椅子に心の中で人物を置いて対話を進め、「空椅子の技法」とも言われる。

 

◯未完了な状態

・人はある考え方や人生観に基づいて行動している。しかし一つの考え方だけでなく、それと矛盾した考え方や反対の人生観も同時に持っている。概念Aと概念B

が明確になっている人は少ない。ある部分は重なり合い、また混乱を起こしていることが多い。そのために、概念Aと概念Bのどちらが本当に自分が望む立場なのかわからなくなり、「どうしようか」という葛藤を生む。

・人は一度自分の考えを持つとその考え方を維持しようとする傾向がある。そのためにある時点から自分の考え方が固定してしまっていることに気づかない。この固定しまっている状態を「未完了な状態」と捉える。

・エンプティチェアテクニックでは、どちらか一方が正しいと判断したり分析したりすることはせず、まず対立している概念を独立させ、それぞれの違いを互いに主張させてみる。異なった二つの概念を独立させて、それぞれを全体として体験させてみる。そのことで新しい視点が広がったり、新概念Cが生まれることを援助する。

 

◯好きな人を選ぶレッスン

 エンプティチェアテクニックでは、自分の中に属する人物をさまざまな角度から体験することができる。このレッスンでは、たとえ好意的な人物に対してでも、時にはネガティブな感情を抱いたり、否定的な気持ちになることがあることを体験する。

①ペアを組み、ファシリテーター役とクライエント役を決める

②「好きな人、親しみのある人、安心する人を一人選んでください」

・選ぶ人物は、日常生活で関わっている人が良い

・良い人間関係にある人を選ぶ

・家族、職場の人、友人あるいは趣味で出会った人など

③「選んだ人をエンプティチェアに座らせてください」

ファシリテーターは、クライエントがエンプティチェアにどんな自分を座らせたのかを感じ取るようにする。

・どんな人物が座っていますか

・座っているのはどんな人物像の人ですか

・性別は女性ですか、男性ですか

・見た目は実際の歳より若いですか、老けていますか

・姿勢はどんな感じで座っていますか

・どんな表情をしていますか

・本人を見ていますか

④「選んだ人に話しかけてみてください」

・人物の実在感が感じられないようなら、「相手の人が見えますか」「相手の人が感じられますか」と問いかけてみる。

⑤「今度は、選んだ人になってみてください」

・本人が選んだ人の椅子に座る

・「どんな感じですか」「その人になれましたか」

・選んだ人物になることができない場合、「急がなくても良いですよ」「その人がもし答えるとしたらなんというと思いますか」

⑥「選んだ人になって”あなた”に話しかけてください」

 

◯苦手な人を選ぶレッスン

 普段とは違う側面から人間関係の体験を深めてもらうこと。エンプティチェアに苦手な人、考え方の違う人、嫌いな人、自分と異なるタイプの人を座らせて会話することで、自分の感情や気持ちを率直に表現してみることが可能となる。

①ペアを組み、ファシリテーター役とクライエント役を決める

②「苦手な人を選んでください」

・嫌いな人

・苦手な人

・考えの違う人

・自分と異なるタイプの人

③「選んだ人をエンプティチェアに座らせてください」

④「選んだ人に話しかけてみてください」

⑤「今度は、選んだ人になってみてください」

⑥「選ん人になって”あなた”に話しかけてください」

 

 このほか、「症状と対話するレッスン」「身体と対話するレッスン」と続きます。

 

◯症状

・人は「症状」を取り除く対象として捉えている。そしてこの「症状」を追い払うことができたら「私」はもっと楽になると考えてしまう。それを十分に経験することよりも、できるだけ取り除こうとする。

ゲシュタルト療法の「エンプティチェアテクニック」は、「私」と切り離されてしまったものを取り戻そうとする技法である。エンプティチェアの上に、「分離されたもの」「無視されたもの」「受け入れられないもの」を座らせて、私と対等な存在として扱ってみる。それらを排除することすらいつもは中途半端であるから。そしてそれに意識を集中してみる。

 

 エンプティチェアテクニックは、自分で体感してみるのが一番。誰も座っていない椅子なのに、そこに人がいるかのようにイメージして見て話しかけてみる。その空椅子に座った(相手の立場になった)瞬間に感じること、見えることが最も気づきになると思います。そして、自分に話しかけてみて、また自分の椅子に戻って、その言葉を感じてみる。というふうに、一人二役のような対話を重ねていくと、自分と相手の本音に近づいていけるように思えます。

エンプティチェア・テクニック入門―空椅子の技法

エンプティチェア・テクニック入門―空椅子の技法

 

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