『運命を創る』(安岡正篤)
安岡正篤人間学シリーズより。「命」は動かすことができるダイナミックなものと考える「運命」。これをいかに創りあげていくか。「宿命」とは違う、主体的なもの。東洋哲学をベースにした、思考の発想が詰まった一冊です。講義形式になっており、所々難しいなあと思うところもありますが、人としての「あり方」を磨くのにとても考えさせられます。私の2017読破目標において、今年読み進めていますが、おすすめシリーズです。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯思考の三原則
①目先にとらわれないで、できるだけ長い目で観察する。
②一面にとらわれないで、できるだけ多面的、できるならば全面的にも考察する。
③枝葉末節にとらわれないで、できるだけ根本的に観察する。
◯能率の究極
「賢を尊んで」「能を用い」「俊傑位にあり」
これは、『孟子』にある有名な言葉。この3つに帰する。明治維新のあんなに能率・格調等立派にいったのは、何と言っても、少なくとも幕府以来の学問・教養・人物のおかげ。
◯六中観
①忙中閑あり
ただの閑は退屈して精神が散じてしまう。忙中に掴んだ閑こそ本当の閑。
②苦中楽あり
苦中の楽こそ本当の楽で、楽ばかりでは人を頽廃させるだけ。
③死中活あり
「身を棄ててこそ浮かぶ瀬もあれ」
④壺中天あり
人間はどんな境地にあっても自分だけの内面世界は作り得る。いかなる壺中の天を持つかによって人の風致が決まるもの。
⑤意中人あり
我々は多少志があり何か事を為そうとすれば、意中の人を持たねばならない。
⑥腹中書あり
頭の中の薄っぺらな大脳皮質にちょっぴりと刻み込まれたようなのでは駄目なので、我が腹中に哲学、信念がある、万物の書がある。そうなっていないといけない。
◯五計
①生計
文字通り生きるはかりごと。我々がどうして生きるか。肉体的・生理的にどう生きていくか。
②身計
我々が社会人として、職業人として、どういう風に自分の身を処していくか。
③家計
自分の家計をいかに維持していくか。
④老計
人間はいかに年をとるか。
⑤死計
いかに死ぬべきか。「死計」即「生計」。初めの生計はもっぱら生理的な生計であり、一方、老計を通ってきた死計というものは、もっと精神的な、もっと霊的な生き方。
⇨要するに人生には、生計、身計、家計、老計、死計というものがあり、これが順ぐりに回り、また元の生計に戻る。このようにして無限に人生、人間というものが発展していく。これ、すなわち「人生の五計」。
◯「命」
・命:我々の存在、我々の人生というのは一つの命。
・運命:動いてやまざるもの。「運」は動くという字であり、ダイナミックを意味する。
・知名:複雑な数(すう:複雑な因果関係)を知ること。
・立命:命を知って、これによって我々が自分というものをクリエートしていくこと。
・道:複雑極まりない因果関係の因果律を探って、その因果関係を動かして新しく運命を創造変化させていくこと。
・科学:物質の命がいかなる本質や能力を持っているのか、どういう関係に成り立っているものであるか、それを知ってそのものを変化させていくこと。
◯脱専門化
・学問の分野というものは、学問を分化して、人が聞いたこともないような名前のついたのが専門で、そういう学者が偉い学者だと思うのは非常な間違いで、そういう専門に徹しようと思えば思うほど、まるで無関係のような、何の因果関係もないようなところに、とんでもない因果の関係がある。だから、我々はできるだけ眼光を狭くしないで、何にでも興味を持つ非常に大きな心が必要。
・簡単に専門家になられると、つまらない人になる。何が、いつ、どこで、どんな関係を生じ、それがまた参考になるかわからないから、何事に対しても、あんなものは俺に関係がない、そんなものは縁もゆかりもない、というように考えないこと。これは非常に大事なことで、人生に成功する非常に大事な根本条件。
◯主体性を回復するための18カ条
①毎日の飲食を適正にやっているか、過度や不合理ではないか
②毎晩よく眠れるか
③自分の心身に悪影響を与えるような、悪い習慣はないか
④適当の運動をしているか
⑤日常の出来事に軽々しく感情を乱されるようなことないか
⑥すぐ悲観したり興奮したりしないか
⑦精神的動揺があっても、仕事は平常通り続けうるか
⑧昨日の失敗のために今日の仕事が妨げられないでいるか
⑨絶えずこういうことを自分で反省し、修養し、毎日の仕事に打ち込んでいるか
⑩自分は仕事にどれだけ有能であるか、自分はどれだけ今の仕事に役立つか、こういうことを絶えず実感してみる。
⑪現在の仕事は自分の生涯の仕事とするに足りるか
⑫いかにすれば、あるいは、どういうことが自分の心を満足させる仕事になるか考えてみる。
⑬思索や反省と同時に、さしあたり毎日、今日はこれをしなきゃならん、それからあれをやるんだという、絶えず追求すべき明確な目標を持っているか。
⑭人は自分に対して親切であるか誠実であるか
⑮自分は自分に対してやましいことはないか。
⑯自分は人格の向上に資するような教養に努めているか。
⑰将来のために何か知識・技術を修めているか
⑱自分は何か信仰とか、信念、哲学というものを持っているか。
『運命を創る』という主体的なタイトル。本書にあるように、命を動かすことは、ダイナミックなこと。やるべきことはありすぎます。そう思うと、学び行動し続けることが当たり前で、やり尽くす、やることがなくてマンネリ化するということはあり得ず、限られた時間がどんどん濃密な時間になっていく。最近はそんな感じです。生産性も自ずと上がります。時間はあっという間に過ぎるのだけれど、振り返ると信じられないくらい進んでいる。こういう実感が最も大切なバロメーターになっています。