MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

考える技術・書く技術(山﨑康司)

『考える技術・書く技術』(山﨑康司)

 ベストセラーになっている『考える技術・書く技術』(バーバラ・ミント)。私にはちょっと読みにくいなぁと思っていたところ、日本人向けに少し易しくして書かれていた本書を発見。はじめににも書かれているとおり「本書はレポート・ライティングの初心者を対象に、とりわけ日本語特有の問題に配慮し、考えを表現する方法を提示、日本人による日本人のための実践ガイドに徹した」一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯レポート・ライティングの誤解

誤解①:書きたいことを書きなさい

→ビジネス文書では、何について書くのかを決めるのは、あなたではなく読み手。読み手の関心に向かって書くこと。読み手のために書く、読み手を理解するという教育が日本ではほとんど行われていません。

誤解②:起承転結で書きなさい

→結論最後に持ってくるメッセージ・スタイルが無用な摩擦を避けて和を尊ぶ日本の社会風土にマッチしていたところ。起承転結は「結論は最後に」という教えとして私たちの中に定着しているが、ビジネス文書では、結論は冒頭に書くのが原則。

 

◯読み手の疑問を明らかにする(OPQA)

①望ましい状況(O:Objective)

 読み手が考えている達成すべき目標や改善後の姿

②問題、即ち現状と望ましい状況(①)とのギャップ(P:Problem)

 問題とは、あくまで読み手にとっての問題

③読み手の疑問(Q:Question)

 読み手の視点で、その解決に向けて自然に抱くだろう疑問

④答え/文書の主メッセージ(A:Answer)

 「Q」に忠実に答える。

 

◯主メッセージと10の根拠

・読み手のOPQ(あなたはどのように判断するか)

→主メッセージへの答え(A)(私は・・・だと判断する)

→さらなる読み手のQ(なぜそう判断できるのか)

→答え(10の根拠がある。具体的には・・)

→根拠1〜10

 

◯10の根拠をグループ化する

・大きく分けると3つの根拠がある。具体的には・・・

→大きな根拠(根拠をグループ化して要約)×3つ

→大きな根拠1つに対し、詳細説明1〜3

 

◯要約探しVSグループ作り

・メッセージ+メッセージ+メッセージ→要約メッセージ(集約)

・要約メッセージ→メッセージ+メッセージ+メッセージ(分解)

 

◯要約メッセージを文章にするときの「4つの鉄則」

 明確にメッセージを伝えるには、以下の表現は使わない。

①名詞表現、体言止めは使わない

②「あいまい言葉」は使わない

③1つの文章で表現する

④「してりが」接続詞は使わない

(・・・し、・・・)

(・・・であり、・・・)

(・・・して、・・・)

(・・・だが、・・・)

(・・・せず、・・・)

(・・・なく・・・)

 

◯So Whatを繰り返す

 大概のメッセージは、初めは曖昧でモヤモヤそているもの。煮詰まっていないメッセージを無理やり文章にしたところで、曖昧なものしかできない。そこで、「それで何が言いたいの?」を繰り返し自問自答を続ける。

 

◯ピラミッドを作る

帰納法でロジックを展開する

帰納法は、常に結論が推論になる。絶対的な真実ではなく、前提から導かれた「論理的に」正しい推論。

帰納法は「つなぎ言葉」でチェックする。

1)「つなぎ言葉」をメッセージ文の冒頭に入れてみる

「なぜそう判断するかと言えば」

「なぜならば」

「例えば」

「具体的には」 など

2)声に出して読み上げ、上下のつじつまを確認する

 上下間のつじつまが合っているかどうかを確認する

3)下部メッセージ群のつなぎ言葉を見比べる

 下部メッセージのつなぎ言葉が全て同じものであれば、横の関係(グループ化)も7割型問題ないと言える。1つでも違うものが混ざっている、同じものを入れたけど違和感がある、といった場合、グループ化に問題がある可能性大。

演繹法でロジックを展開する

 演繹法は「前提」をチェックする。「前提」の後に、「本当に正しいと言えるか?」と自らに問いを投げる。

 

◯ピラミッド作成のコツ

①:1つの考えを短く明快に

・名詞表現、体言止めは使わない

・「あいまい言葉」は使わない

・メッセージは1つの文章で表現する

・「しりてが」接続詞は使わない

→主メッセージとキーラインはなるべく早い時点で決めること。まず全体の大枠構造を決めることから始め、その後に詳細のピラミッド例に入る。

②縦と横の「2次元」を意識する

 横の関係は、「論理の帰結」、つまり上が論理(要約)で下が根拠/説明という関係。帰納法であれ、演繹法であれ結論は必ず上に置く。

 

◯段落表現のビジネス・スタンダード

①メッセージごとに段落を作る(1段落1メッセージ)

②段落の違い(メッセージの固まり)を明確に表現する

③段落のメッセージ文を段落の冒頭に置く(主メッセージ同様、例外的に段落の最後におくことがある)

 

◯文章のわかりやすさは接続詞次第

・接続詞には、単に2つの文をつなぐだけの「and接続詞」(しりてが接続詞など)と、文をつなぐだけでなく論理的な関係を明らかにする「ロジカル接続詞」がある。

【ロジカル接続詞】

①時間

・・する時に

・・する前に

・・した後に

・・するまで

・・して以来

②対照・対比

・・である一方

・・であるけれど

③原因・結果

・・であるがゆえに

・・の結果

・・であるにもかかわらず

④目的

・・するためには

⑤条件

もし・・ならば

もし・・でなければ

・・になるという条件で

 

◯「しりてが接続詞」の使用ルール

・日本語で「and接続詞」の代表が「しりてが接続詞」。とりわけ、「が」は「but(逆接)」だけでなく「and(順接)」としても使われる厄介なもの。

・「しりてが」接続詞は日本語と切っても切れないので、全く使わずに文章を書くのは難しい。そこで、メッセージ文章については、ピラミッド同様「しりてが」使用禁止ですが、メッセージを支持・説明する補足説明文に限り、2〜3つなら見逃し可とする。

 

 接続詞に2種類あるというのは、普段全然気にしていませんでした。ピラミッドストラクチャーなどを使って論理的に全体像を整理するところは、付箋ワークかPowerPointを使いながら取り組むことが多いですが、ここまで順調に来ても、大切なメッセージを伝えるところで、①あいまい語は使わない、②「しりてが」接続詞は使わない、③主語を明確にするといった、文章の基本を大切にしたいものです。

入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法

入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法

 

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