MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

明日のプランニング(佐藤尚之)

『明日のプランニング』(佐藤尚之

 ネットを毎日利用しない人が約5,670万人と人口の半分弱もいる。まだまだ今まで通りの広告手法が効くし、テレビもよく見ているし、新聞を取っている家庭もゴマンとある現実。伝える目的は、「売り」ではなく、伝えたい相手を喜ばせること。伝える仕事は、一人ひとり感情を持った「生活をしている人」に有益な情報を伝えて喜んでもらうこと。つまり、その情報を必要とする生活者に伝えて、喜んでもらうこと。本書は、「伝える喜び」を取り戻すためのやり方がまとめられた一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯スタートとゴール

・スタート:伝えたい相手を知ること

・ゴール:伝えたい相手を笑顔にすること

 

◯情報洪水「情報”砂の一粒”時代」

・2007年の1年間に、人類がそれまでに書いた書籍の情報量合計の約300万倍、2011年には1921万倍の情報が流れた。

・2010年、世界に流れる情報量はついにゼタバイト(ZB)の世界に突入した。1ゼタバイトとは、「世界中の砂浜の砂の数」。

→あなたが伝えたい情報は、生活者にとってはたった「砂の一粒」。

→あなたは生活者にその砂浜の存在を伝えたい側。世界のどの砂浜のどの場所にその砂粒を置いたら、相手に偶然見て見らえるのだろう。あなたはそれをプランニングする側。送り手からすると「奇跡的な確率」になっているのが「今」。これがプランニングのスタートである。

→2020年、情報の流通量は35ZBになる。

 

◯2010年、事態はより加速する

・2005年以前、世の中の出来事は「世の中ごと」として、マスメディアを通して届けられた。

・2005年ごろを境にネットを中心に情報洪水が起こり、「情報"砂の一粒”時代」に突入。世の中ごとが自分ごとになりにくくなった。

・2010年ごろを境にSNSを使っている人に「仲間ごと」を急激増させた。

→「仲間ごと」は超関心事。「伝える仕事」に携わっているあなたが伝えたい情報は、仲間ごとほど関心は呼ばない。ただですら砂の一粒に過ぎないうえに、重要度もとても低い。

・超成熟市場:あなたが伝えたい商品・サービスの情報はすでにうざい。

・メディアやツールの激増:あなたが伝えたい情報をどこに出せば見てもらえるか見当もつかない。

・エンタメ過剰:日常に溢れる様々なエンタメや世界中から届く優良コンテンツが全部ライバル。

 

◯友人・知人は最強メディア

①信頼メディア:情報が多すぎると人は友人知人に頼る

②便利メディア:友人知人から自分に有益な情報が届く

③拡散メディア:友人知人への共感を伴って大きく素早く拡散する

④常時メディア:スマホの普及に伴い、友人知人と24時間繋がった

 

◯直接リーチから間接リーチへ

・信頼メディアである友人知人を介す間接リーチ。「情報への共感」ではなく、「友人知人への共感」が耳目を開かせた。

・「伝える仕事」に携わっている人が今後しないといけないことは、友人知人のオーガニックな言葉(本音の言葉、自然な言葉)で語ってもらうこと。

 

◯マスベースからファンベースへ

・砂一時代以前は、マスメディア中心のマスベースプランニングが充分機能した。

・砂一時代を生きる生活者は、ファンベース(ファンとのコミュニケーションをプランニングすること)でプランニングする。

マーケティングは長く新規顧客を取り込むことを目的としてきた。それは、「その商品に興味関心がない人に無理やり伝える」にほぼ等しい。ファンベースの場合、ファンに伝えることが目的。ファンは伝えてもらいたがっている。

 

◯ファンベース、3つのアプローチ

①(伝える側が)ファンに直接リーチする

②(友人知人から)ファンに間接リーチする

③(友人知人やファンから)ファンにオーガニックリーチする

 

 

◯伝わらない時代の「伝わる」プランニング

1.情報”砂の一粒”時代以前の生活者

・対象:ネットを使わないレイトマジョリティ、ラガーど

→情報はまだ伝わる

→直接リーチ

→マスベース

 

2.情報”砂の一粒”時代の生活者

・対象:ネットを日常的に駆使するイノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ

→情報をもう伝わらない

→(1)直接リーチ

 (2)友人知人を介す(間接リーチ)→オーガニックリーチ

→ファンベース

 

3.ファンからオーガニックな言葉を引き出す

①社員という「最強のファン」の共感をつくる。

②ファンをもてなし、特別扱いする。

③生活者との接点を見直す。

④商品自体を見直す。ファンと共創する。

⑤ファンを発掘し、活性化し、動員し、追跡する。

⑥ファンと共に育つ。ファンを支援する。

⑦ファンとビジョンを分かち合う。

→アイデアの創出

→伝えたい相手を笑顔にする

 

 自分が発信している情報は、「世界中の砂浜にある砂の一粒」くらいのものなのかとびっくり!!この情報を見ていただいている方との出会いは、恐ろしく奇跡的な確率ですね。それだけで感謝、感謝です。マーケターの立場からは、「ファンからオーガニックな言葉」を引き出すという感覚。一情報発信者としては、「オーガニックな言葉」で何らかの反応があるだけで嬉しいです。それが広まっていくと、さらに楽しくなるだろうなと自分の情報発信についても改めて考えてみたくなりました。

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