MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

日本一「ふざけた」会社のギリギリセーフな仕事術(シモダテツヤ)

『日本一「ふざけた」会社のギリギリセーフな仕事術』(シモダテツヤ)(◯)

 世の中にはいろんなコンセプトの会社があるもんだなと、振り切れた会社の社長による会社紹介本です。営業しない、ふざけられない案件は受けない。企業理念は「がんばるぞ!」。だけど依頼が絶えないプロモーション会社、バーグハンバーグバーグ(←社名)。本書出版にあたっての思いは、「当たり前のルールからはみ出るマジョリテー戦略もありだな、世の中って意外とアウトにならないな」ということを感じてもらうため。おもしろ発想満載の一冊です。細かなニュアンス、画像によるイメージは、本書を手にとってみてください。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯彼女のいないジャガイモ頭でもモテモテにしたサイト事例からの学び

・サイト上にいくつかの「温度差の違う笑い」を用意しておく。

・反応の言葉(ツイート)を逆算してネタを作る。幅をもたせるために温度差の違うネタを用意する。それらがうまく閲覧者とハマったときにバズは生まれる。

 

◯ヤンキーにシメられながらの夢の対談企画からの学び

・「どんな人でも読める」と幅を広くとっておけば、結果、それだけ多くの人が話題にしてくれ、その数の多さから、メッセージが届きやすいサイトになる。

 

◯自社プロモーション活動からの学び

・いきなり売上アップにつながることだけを考えて自社プロモーションを行うより、自分たちがシンプルに楽しみたい、お金にもならないことだけどしっかり注力し、チャレンジできる実験場を設けることにある。

・こういった実験こそが、結果的に自社を広く知ってもらうことにつながっていく。「こんなことができる」というのを伝えるよりも「この人たちと一緒になんかしたい」そう思ってもらえる方が可能性が広がる。

 

◯おもしろ分析シート

①お笑い

・ギャップ

・時代

②達成感

・満足感

・コレクション

・努力

・あるある

・診断系

③観察(中毒性)

・継続

・ハマる

ソーシャルゲーム・コレクション

④リアル

・大きいもの

・実際にやる

⑤ギャップ

・実際にやる

・裏切り

⑥新しさ

・感動

・ドキドキ系

・今までになかった

⑦共感

・あるある

・代弁

・時代

・参加感

⑧ギミック

・技術的な仕掛け

 

◯おもしろさ

・「おもしろさ」という、ハッキリとした言葉にはできない、モワッとした感覚を共有することが必要。

・その反面、「おもしろさ」は作る人にカラーが違ってくるため、社長のジャッジに頼り続けるということは、社長が面白いと思うことや社長の好みに合わせ続けることを意味する。すると、ワンパターンな企画に陥ることはもちろん、万が一、社長の感覚が世間一般のそれとズレたとき、失敗に直結することを意味する。

・それを避けるために「バーグハンバーグバーグにおけるおもしろいものは何か」をわかりやすく図式し、社員と共有したのが「おもしろ分析シート」。

・「おもしろい」と人が感じるであろう要素を8つ書き出し、この図にある「おもしろ要素」のうち、最低でも2つを含む企画であれば、社長の了承を取らずともクライアントへ提案して良いことにした。

 

◯「威嚇案」から始めよう

・提案の土俵にも上がらなかったために誰もチャレンジしたことがなく、また成功事例がないために上司からOKをもらうことが難しいアイデア。これこそが、新しくエッジの効いたチャレンジしがいのあるもの。

・「威嚇案」とはそんなふうに生まれたアイデアを、たとえ通らず実施に至らなくても、クライアントに見せることで「通りそうなアイデアばかりではなく、本当はここまで尖ったことができるんだぞ」と僕たちの潜在能力を知ってもらうための行為。

 

◯ワークショップの事例

・「マクドナルドをクライアントとした、絶対に通らなさそうな企画を考えてみてください」といったお題を用意する。そして、参加した方には4〜5人のグループを組んでもらい、「これなら絶対遠らねぇだろ」というものだけを考えて、発表してもらう。

・通そうとするところから企画を考えると無意識のうちに思考にブレーキをかけてしまい、当たり障りのないアイデアや、どこかでみたことのあるようなアイデアばかりが出てきてしまう。

・そこで、頭の中のリミッターを一度外し、最初から絶対通らないようなものを考える環境を作って、新たな発見をしてもらおうと思い、「クライアントから怒られる」という条件設定をつけたアイデアを出してもらっている。

・例えば、「100人に1人、モスバーガーが当たるキャンペーン」。一見悪ふざけのように見えるが、両社のコラボが本当に実現したら絶対に話題になると考えられる。

 

◯正直メソッド

・本来の広告は、たとえ悪い部分があったとしても、そこをアピールするようなことはしない。しかし、正直に言っちゃった方が逆に斬新な表現になる。

・これはギャップ論にも通じるが、いわゆる「褒める」という当たり前の表現が大多数を占めている昨今、「逆に弱点をさらけ出した方が、むしろ目立てるのではないか」という考えから生まれた。

・冷凍カレー1,000円→レトルトカレー550円に値段を落として販売する企画では、「美味しさを落としてお求め安くなりました」「劣化版!インド人完全無視カレー」「おいしさ0.8倍」とプロモーション。このカレーはサイト公開と同時に大きな反響を呼び、結果的に多くの方に購入いただくこととなった。

 

◯削る勇気を持つ

・「削るのが勿体ない」と考えてしまうと過剰に表現や情報を盛り込んでしまいがち。表現においては、必ず受け手側にとっての許容量というものが存在する。

 

◯狂気の宿ったアイデアを実現するために

・アイデアとは万人にウケるものではなく、誰かには絶賛され、誰かを放ったからしにするような、ある意味「狂気」が宿るものほどおもしろい。

・しかし、大人数が集う場を通ると、その狂気が「場の空気を読まなければならない」という状況によってかき消されてしまう。

・実現に向けた最初の一歩として、内部の人間を口説き落とさなければならない。「そう言ったことを考えるに、やはり会議は少人数で行うのが一番。

 

 どこまでふざけていて、どこまできちんと書かれているのか読み分けるのが難しい内容でしたが、そこにおもしろさがあり、最後までスーッと読んでしまいました。オーソドックスな王道の本を読むのもいいですが、たまにスパイス的役割として本書のような本を読むと幅が広がるなと思います。尖った刺激が欲しい方、興味本位の方には、お勧めです。

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