『残酷すぎる成功法則』(エリック・バーカー)(◯)
監訳を務める『言ってはいけない』などで有名な橘玲さんの序文がこの本の良さを表しています。
〜「コロンブスのタマゴ」のような画期的な自己啓発書。玉石混交の自己啓発の成功法則を、すべてエビデンスベースで検証しようとしている。この本は、これまでいろんな自己啓発本を読んできて、「ぜんぶもっともらしいけど、どれが正しいかわからないよ」と思った人にまさにぴったりだ。混沌とした森の中で「正しい木」を見分ける著者の見事な手際をお楽しみください〜、と。
タイトルとボリューム(360ページ超)に引くなかれ。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯なぜ高校の主席は億万長者になれないのか
・調査によれば学校で優秀な成績を収める資質そのものが、一般社会でホームランバッターになる資質と相反する。
①学校とは言われたことをきちんとする能力に報いる場所だから。
→学校での成績は、むしろ自己規律、真面目さ、従順さを示すのに最適な指標。
②全ての科目で良い点を取るゼネラリストに報いる学校のカリキュラム。
→ひと度社会に出れば、大多数の者は、特定分野でのスキルが高く評価され、他の分野での能力はあまり問われない。
・ルールに従う生き方は、成功を生まない。良くも悪くも両極端を排除するからだ。概ね安泰で負のリスクを排除する代わりに、目覚ましい功績の目も摘んでしまう。
◯偉大なリーダーの意外な条件
・ユニークな資質とは、日頃はネガティブな性質、欠点だと捉えられていないがら、ある特殊な状況下では強みになる者。チャーチルの偏執的な国防意識のように、本来は毒でありながら、ある状況下では本人の仕事ぶりを飛躍的に高めてくれるカンフル剤になる。ムクンダはそれを「増強装置」と名付けた。この概念こそが、あなたの最大の弱点を最大の強みに変えてくれる秘訣。
◯天才の正体
・私たちは最良になろうとしてあまりに多くの時間を費やすが、多くの場合「最良」とは単に世間並みということ。卓越した人になるには、一風変わった人間になるべき。あなたなりの一番の個性こそが真の「最良」を意味する。ジョン・スチュアート・ミルは、かつて「変わり者になることを厭わない者があまりにも少ないこと。これこそが我らの時代の根本的危機なのだ」と嘆いた。
◯親切な人はこれだけ損をする!残酷な統計
・自分本位に昇給を要求する人の方が結果が得られる。
・同調性の引く人間の方が、同調性が高い人間より年収が約1万ドル多い。
・財政面の信用度も同調性が低い人間の方が高い。
◯最も不幸せな国の人の特徴
・行いには「良いこと」「悪いこと」「みんながやっていること」の3つがある。誰かがズルをしても咎められないのを見れば、大丈夫なんだと思う。自分だけが規則を守ってバカを見たくない。周りの者が信頼できないという考えは、自己達成的予言になるとの研究結果がある。皆がインチキをすると仮定し、人を信じるのをやめる。そのあとは努力をしなくなり、ひたすら下方スパイラルに入る。
◯エビデンスからわかる最強の対人ルール
①自分にあった池を選ぶ
→あなたが今、悪い環境に身を置いているなら、ほかのいい人たちと円陣を組もう。
②まず強調する
→最初に手を差し伸べることこそ、互恵主義を育む鍵であり、ひいては説得や相手に好かれることのベースになる。
③無視無欲は聖人ではなく愚人である
④懸命に働き、そのことを周囲に知ってもらおう
⑤長期的視点で考え、相手にも長期的視点で考えさせる
→短期的には利己的な行いが利益をあげるが、最終的には良心的な行いが勝利を収める。
⑥許す
◯やり抜く力(グリット)は本当に必要?
グリットを持てば成功するはずだ。だが素朴な疑問が浮かぶ。ではなぜその通りにいかないのか。理由は二つある。
①私たちはグリッドが何によってもたらされるか知っていると思っているが、本書で明らかになるように、それは間違いだ。
②グリットは成功を生む可能性があるが、成功への道には、親や教師から子供に教えない別の面もある。すなわち、「ときには、見切りをつけることこそ最善の選択」。正しく諦めることにも、あなたを大成功に導いてくれる可能性がある。
◯楽観主義VS悲観主義
①楽観主義は、健康状態を良くし、寿命を延ばす。
②成功を期待しながら交渉に臨むと、取引がまとまり、結果に満足できる可能性が高まる。
③楽観主義者は幸運に恵まれやすくなる。彼らはポジティブに考えることでものごとに辛抱強く取り組み、その結果、自分により多くの機会をもたらすことができる。
◯面白いゲームの4つの条件
①勝てること
②斬新な課題
③目標
④フィードバック
◯現実を本当に変える方法”WOOP"
・2つの魔法の言葉:If(もしも)、Then(その時は)
・Wish(願い):自分の願いや夢をイメージする。
・Outcome(成果):願いに関して自分が望む成果を具体的に思い描く。
・Obstacle(障害):現実を直視し、目標達成への具体的な障害について考える。
・Plan(計画):障害に対処する計画を考える。
◯内気な人ならではのとびきりの強み
・「1万時間の法則」。外交的な人は素晴らしいネットワークから貴重な資源を活用することができる反面、本当に重要だと思うことに十分な時間を使えなくなってしまう。
・内向的な人のとびきりの強みは、それぞれの専門分野でエキスパートになれる可能性が、外交的な人よりはるかに高いこと。
・『外向性は個人的な習熟度と負の関係にある』と題する研究によると、「外交的であればあるほど、業績が落ちる」。
◯大人こそ思い出せ!友達作りの三大基本原則
①誰でも自分と似ている子を友達に選ぶもの。
②他の子の話をよく聞いて励ます。
③ギバーになって、おやつのトゥインキーを分け合う
◯時間もプレッシャーもかからない人脈作りの5ステップ
①元々の友人たちからスタートする
②スーパーコネクターを見つける
③時間と予算を用意する
④グループに参加する
⑤常にフォローアップする
◯論争をなくし、良い結果だけを得る4つのルール
①落ち着いて、ゆったりしたペースで話す。
②傾聴する
③相手の気持ちにラベルを貼る(相手の気持ちに反応する)
④相手に考えさせる
◯自身のジレンマを解決する
①自分を信じることは素晴らしいが、自分を許せることはもっと素晴らしい。
②自尊心を自然なレベルに調整しよう。
③それでも自身を高めたい?ならば獲得しよう。
④インチキはしない。
◯よく遊ぶほどよく学べる(ボストン・コンサルティング・グループ)
・遊び心と良い成績は相関関係にある。いや、実はそれ以上だ。
◯制約は実は歓迎すべきもの(バリー・シュワルツ)
・制約があれば決定が簡単になる。人生もシンプルになる。「あなたのせいではない」と言ってもらえる。その方が私たちは幸せだ。
かなり端折ってもこんな感じです。本書では研究・調査内容や出所を明らかにしながら、要点をまとめていくスタイルで書かれており、説得力があります。自己啓発の様々な分野にわたっているため、飽きない展開になっているのも良いところ。資料にまとめてみたい欲求をそそられる一冊でした。