『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか』(ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー)(◯)
著者は、『なぜ人と組織は変われないのか』でも有名なハーバード大学大学院教授。大半の人が「自分の弱さを隠す」ことに時間とエネルギーを費やしてしまっている。これは無駄を生むと同時に組織とそこで働く人が潜在能力を十分発揮でできない要因。人々の能力を育むに最も適した環境は、みんなが自分の弱さをさらけ出せる、安全であると同時に要求の厳しい組織文化(発達指向型組織:DDO)によって生み出される。
本書は、組織と個人の両方の潜在能力を開花させる方法を示すことを目的とした一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯DDO(発達指向型組織:Deliberately Developmental Organization)の共通前提
・大人になっても人は成長できる
・大人の成長には大きな価値がある
・個人が仕事を通じて成長するための仕組みや、人々がフィードバックとコーチングのやり取りを通じて最大限の恩恵を享受するための仕組み、個人の成長とビジネスの成長を一体化させる仕組みについて、共通の認識を抱いている。
・社員に現状では成功できないような難しい役割りを与える。その上で絶えずフィードバックを行い、新しい役割にふさわしく成長するように促す。ある人物が今の役割を完璧にこなせるようになれば、もはやその役割はその人にふさわしくないと考えられる。それ以上「背伸び」する余地が残されていないからだ。
・ほとんどの人の弱点の根っこにあるのは、自信満々すぎるか謙虚すぎること。どちらか一方に偏り過ぎれば、好ましい結果にならない。そこで、誰もがこうした点で「バランスのとれた人格」をはぐくみ続けるべきものとされている。
◯デキュリオン(大型映画館)の事例より
・個人のマインドセットと成長に関心を払うことが習慣化している。しかもその習慣化が、強力なコミュニティ意識の形成と維持を後押ししている。
・「金魚鉢」・・問題が自ずと解決するように導く対話。問題に関わる人が中央に座り、ほかの出席者は外側に輪で座わり内側にいる人の話を見守る。そして、そこに身を置き、対話に積極的に耳を傾け、必要に応じて自発的に対話に加わる。この内側の対話の場を「金魚鉢」と読んでいる。輪の内外にいる全員に期待されるのは、自分たちの足を引っ張っている行動とその根底にあるマインドセットをあぶり出し、それを克服するための取り組みに本格的に乗り出すこと。
◯大人の発達の道筋
・人間の知性はいくつかの質的に異なる段階を経て高まっていく。
・知的発達プロセスは、つねに均一のペースで進むわけではない。発達が急速に進む変革期と、発達がほぼ止まる安定期が交互に訪れる。
・ある段階に到達してから、次の段階への変容を始めるまでに要する期間は、段階が進むにつれて長くなる。
・高いレベルに進むほど、そこまでたどり着く人の数が減る。
◯大人の知性の3段階
①環境順応型知性
・チームプレイヤー、忠実な部下、順応、指示待ち、依存
・発信する情報は、他の人たちがどのような情報を欲しているかというあなた自身の認識に強く影響される。
・重要人物の意向に反しないこと、好ましいと考える影響に自分を合わせることが、一貫した自我を保つ上で大きな意味を持つ。そのため情報に対して極めて敏感で、その影響を受けやすい。
②自己主導型知性
・課題設定、導くために学ぶリーダー、自分なりの羅針盤としてん、問題解決志向、自律性
・発信する情報は、自分の課題や使命を追求するうえで、他の人たちにどういう
情報を知らせたいと思うかによって決まる面が大きい。
③自己変容型知性
・メタリーダー、学ぶために導くリーダー、複数の視点と矛盾の受け入れ、問題発見志向、相互依存
・フィルターと自分が一体化していない。フィルターを通して物事を見るだけでなく、フィルターと距離をおき、フィルターそのものを客観的に見ることもできる。
◯DDOの3つの側面
①エッジ(発達への強い欲求)
・大人も成長できる
・弱さは財産になりうる
・発達指向の原則に従う
・目標は全てが一体
②ホーム(発達を後押しするコミュニティ)
・地位には、基本的に特権が伴わない
・みんなが人材育成に携わる
・みんなが僚友(クルー)を必要とする
・みんなが文化を築く
③グルーヴ(発達を実現するための慣行)
・安定を崩すことが建設的結果につながる場合がある
・ギャップに注意を払う
・仕事の完了ではなく、成長のためのスケジュールを設定する
・人の内面もマネジメントできる
◯慣行の実践に共通する5つの要素
①人の内面の要素を外に引き出す
②業務を自己改善に結びつける
③物事の結果ではなくその結果を生むプロセスに目を向けるように促す
④用語も一つの慣行。新しい枠組みを生むための新たなツールになりうる。
⑤すべての人が日々、組織全体の「背伸び」に取り組む
◯免疫マップ
①改善目標
・何かに上手になりなりという形で表現する
・できるだけ肯定的形で述べる
・非常に重要と感じられるものにする
・まだ達成できていないものにする
・生き方、考え方、振る舞い方を変えなくてはならない理由が明白なものにする
②阻害行動
・具体的な行動を書く
・改善を妨げているものを書く
・手加減なしの正直さが求められる
③不安ボックス
・阻害行動の根っこにある不安、恐れ、自我への執着、自己防衛パターンを掘り下げる
・不愉快な感情についての思考ではなく、生々しい嫌悪感や不安感そのものを引きずり出すことが狙い。
④裏の目標
・人が単に恐怖心を抱いているだけでなく、賢く、ときには芸術的なまでに、その恐怖から自分を守っているという認識。
・不安ボックスの中の不安や恐怖の表現をそのまま残す
・自己防衛のための目標を記す
・裏の目標を達成するために、第2枠の阻害行動が完全に合理的なものであること
■マップを強化するために
・不安ボックスの内容を裏の目標に転換する際は、不安や恐怖の表現が消えてはならない
・裏の目標は、自分がどのように自分を守っているかを浮き彫りにしなくてはならない。
⑤強力な固定概念
・免疫システムの根底にある思い込みを「強力な固定観念」と呼ぶ。
・強力固定観念は、すべて裏の目標の最低でも一つを必然的に生み出すものでなくてはならない。
・固定観念が裏の目標を生み出し、裏の目標が阻害行動を突き動かし、阻害行動が改善目標の実現を妨げているという図式が明快に描ける必要がある。
⑥次にすべきこと
・自分の学んだことを同僚たちに話してもいい
・強力な固定観念が本当に正しいかを検証してみてもいい
・見つけた強力な固定観念を同僚たちに聞かせて、それが本当に正しいかを明らかにする支援をしてもらってもいい。
免疫マップは、前作『人と組織はなぜ変われないか』でも詳しく紹介されていたのですが、「裏の目標」を目を背けずに認識することで、自分の本心に向き合い、「で、どう行動する」というところに繋がった実感があります。さらに、コーチング的視点や自己分析が深まり、他力の大切さも実感できている現時点では、すべてが統合されていく感覚があります。考え方を整理してコンテンツ化して行きたい魅力的な内容です。
なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか――すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる
- 作者: ロバートキーガン,リサラスコウレイヒー,中土井僚,池村千秋
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2017/08/09
- メディア: 単行本
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