MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

よなよなエールがお世話になります(井手直行)

よなよなエールがお世話になります』(井手直行)(◯)

 先月「YONA YONA BEER WORKS」に行って以来ハマっている、よなよなエール(特に「インドの青鬼」が好き)。ということで興味が湧いて購入した本書。まず星野リゾートの星野社長が作られた会社だったということすらも知らずに読み始めると、軽井沢のタウン誌を発行している会社で営業をしていた時に星野社長に声をかけられた入社時代〜事業立ち上げ、売れすぎた出発〜一転、赤字時代の苦労話し、井手社長の個性あるれる発想・行動・星野社長との衝突談、企業風土など、個性溢れる会社、「ユニークで惹きつけられる会社」という風に感じました。ビール業界において、なぜ、エールビール分野で独特の商品名と味わいで地位を確立し、11年連続増収増益を達成する企業に成長できたのか、経営者の思い溢れる内容と企業風土・ファン作りにも参考になる一冊でした。今一番工場見学にいきたい会社です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯得意なことを仕事にすると、人は輝く

・チームビルディングの研修で、社員に「今まで、どんな仕事で、何をやっているときがおもしろかった?」と質問した。みんなが「楽しい」と思う瞬間を把握したうえで、それぞれに向いた仕事を頼むとみんな才能を自由自在に発揮し始め、素晴らしいチームが出来上がる。

・これと同様に僕は、職を転々としながら自問自答を繰り返していた。会社を辞めて無重力のような状態に置かれるたび、自然と「自分が好きなことは何か」「自分が何を楽しいと感じるか」と自分自身の性向を見極めていた。

 

◯ファンは100人に1人でもいい

・新規参入者は、いわゆる「世の中的に正解」とされていることをやってはいけない。時にはあえて常識の逆を行くことも必要。ネーミングからデザインまで、あらゆる場面で新規性が高くなきゃ、相手にもしてもらえない。

・100人に1人でも、大ファンになってくれるのであれば、そこには参入する価値がある。100人のうち99人が「いつものビールでいい」と思う中、たった一人だけ「あれじゃなきゃダメだ」とおもってくださる製品であれば、出す価値があるんです。

・このネーミングについては、星野たちが何十回と会議を繰り返し、その果てに、ある日の明け方、星野が「よなよな、ってよくない?」とひらめいて決まったらしい。要するにこの時期は、「市場もルールも自分の手で作ろう!」としていた星野たち経営陣と、彼らの感覚がどうしてもつかめない僕ら、という構図の議論が繰り返されていた。

・100人に1人から熱狂的に好かれることが大事。「その1人を集めてイベントをやることが、広告もできず知名度もない僕らの成功パターンになるはず!」。僕はそう強く思った。

 

どん底時代、このままではもうダメだ

・結局、業績が下がってくると「仕事ができる人」が誰もいなくなってしまう。誰が何をやっても結果が残せないんです。すると「この人に任せて大丈夫なの?」「能力はあるんだろうか?」となる。うまくいかなければ、犯人探しも始まるし、会議でも発言をすると必ず否定する人がいて、その結果、言葉も辛辣になる。

・しかも誰も僕と面と向かっては言わないです。反論もせず、何か決まろうとすると「あ、うん」と気の無い返事をする。意思決定者には「はい」と無表情に返事をし、現場では全く指示に従わない。そして、陰で「あれは上司の机上の空論だから」という。

・本来なら誰もが社長に文句を言えるくらいフラットな会社だったのに、そんな理念なんてどこにも見当たらない。肯定的な議論などなく、そのうち、人柄を攻撃するような、聞くに耐えない悪口を言う人たちも出てきた。会社は、もうお通夜のようです。

・みんなが無表情。なるべく人と話さず、言われたことだけやって、すませたら帰るだけ。珍しく笑顔で話していると思ったら、陰ではひどい悪口を言い合っている・・なんて姿を見ると、誰が敵で誰が味方か誰もわからない。

 

◯星野社長のことば

・「でもさ、もう本当に全部やり尽くしたのかな?」「とことんやろうよ。とことんやってそれでもダメだったら、そのときは会社をたたもう。会社をたたんだら、湯川(星野リゾートの敷地内を流れる川)一緒に井手さんの好きな釣りでもしてのんびり暮らそう」。そして、星野は釣りをしません。

・彼(星野社長)は優秀だったけど、それよりもっと大きな特徴を持っていた。「自分が決めたことはやり遂げる」という強い意志を持っていた。そんな星野がこういうなら・・。僕は、この仕事に人生を賭けてみよう、と思った。

 

◯出会いの瞬間を見逃したら、今の僕らはない

・人生で最も変化がある瞬間って「出会いの瞬間」なんだと思います。よそさまの力を、自分の人生にどう活かすか。それって、自分の人生を大きく左右することなのかもしれません。

 

◯ネット上の表現

・結局、ネット上で何をするとうけいれられるんでしょうか?それは・・開き直って、自分らしく振る舞うこと。すると、一部の人の共感は得られます。思えば、それこそが「心を込める」ってことなのかもしれません。

 

◯ヒット商品から学んだ3つの法則

①業界初

インパク

③ユーモア

 研究したのは、楽天の繁盛店。詳しく勉強したのは、「男前豆腐店」。

 

◯社長になって

・社長になって何が変わったかといえば、それは「見える景色」。

・社長になると物足りなかった。みんな、頑張っては痛んだけど「みんなとみんなの間」みたいなところに、物足りなさがったんです。

・「自分ができる範囲の仕事はやるけど、ほかの仕事はなるべくやりたくない」。そんな雰囲気がありました。

・リーダーは時間軸で言えば10年後、20年後を考えなければならない。今を見ている人とは視座が違うから、意見が噛み合わないんです。

 

◯将来の目標が違えばチームになれない

・「経営とは引き算で行うもの」

・通常、将来のことは足し算で積み重ねて行くように決めていきます。「いまこうで、一年でこんなことができるから、何年後にはこうなって・・」という具合。数式の中で決まっているものが「いま」。

・でも引き算の経営の場合、決まっている数字は「将来」。「将来こうなるから、そのためには、いまこんな手を、一年後にこんな手を打って・・」と考え、いまからなすべきことを決めていく。そして、僕は次第に、将来に向けての目標を明確に持ち始めたんです。

 

◯セミナー講師から得たもの

・「社員がまとまらない」「自ら行動してくれない」「ナンバーツーが育たない」・・・。「わかりました、いっぱい出ますね。でもこれ、皆さんの鏡なんです。いま言ったことは、皆さんができていないことを映す鏡だったんですよ。あなたは社長なんです。社長がやると決めたらやれないことはないんです。

 

◯必ず仲が悪くなる混乱期がある

①フォーミング(形成期:なんとなく様子見している)

②ストーミング(混乱期:嵐のようにもめる)

③ノーミング(規範期:緩やかにまとまって行く)

④トランスフォーミング(達成期:一致団結する組織になる)

 

 最後にある、「おいしいエールビールの飲み方」は、とても嬉しい付録でした。ラガービールとは異なり、キンキンに冷やすのではなく、13℃でゆっくりワインのように飲むといいんですね。初めて知りました。さっそく試してみよー。

ますます工場見学に行きたくなってきました。そして、「YONA YONA BEER WORKS」にも。

ぷしゅ よなよなエールがお世話になります

ぷしゅ よなよなエールがお世話になります

 

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