『五感で磨くコミュニケーション』(平本相武)
コーチングの先生、平本あきおさんの2006年の著書。珍しく、日経文庫から。さすが日経文庫シリーズだけあって、テーマに関する知識が幅広く押さえられており、コミュニケーションに関する要点を確認するのに便利な一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯全身は口ほどにものを言う
①ボディランゲージ(55%):身振り・姿勢・表情・・・
②口調・呼吸のペース(38%):声のトーン、スピード、高低・・・
③話の内容(7%):言葉
◯「言ったこと」は氷山の一角
①省略
②一般化
③歪曲
⇨具体的エピソードを抽象的なエッセンスに置き換える際に、当然のことながら、省略・一般化・歪曲が起きる。
◯「言語」とは「意味付け」(NLPより)
・人間は必ず、五感を通してとったコミュニケーションに意味をつける。
・目、耳、肌、鼻、舌から入る情報に意味付けをする際、その位置や順番を変えるだけで体験・受ける印象が変わる(プログラミング)。
◯ラポール(信頼関係・・仏語で橋をかける)
・場を共有している関係、一緒にいる感じ、波長が合っている状態
・ラポールのためのマッチング
①ミラリング:ボディランゲージを合わせる(真似る、部位を変える、サイズを変える)
②ペーシング:口調や呼吸を合わせる
③バックトラッキング:言葉の内容を繰り返す
④モダリティ:視覚、聴覚、体感に合わせる
◯利きモード
①視覚傾向
早口の人が多い。アイコンタクトが不可欠。見せることが大切。
・何が見えますか
・どう見えますか
・他に何が見えますか
・その先に何が見えますか
②聴覚傾向
一貫した論理が大事。口で伝えることが大切。
・何が聞こえますか
・どう聞こえますか
・他に何が見えますか
・その先に何が聞こえますか
③体感傾向
擬音語、擬態語を多用する。口調とか言い方が大事。
・何を感じますか
・どう感じますか
・体のどのあたりに感じますか
・どんな感触ですか
◯アクセシング・キュー(外的視覚と内的視覚)
①視覚:見えるもの
・外的視覚:実際に自分の目で見えているもの
・内的視覚:イメージなど頭の中で見ているもの
②聴覚:聞こえる音、声、言葉、内言
・外的視覚:実際に自分の耳で聞いている音、声、言葉
・内的視覚:想像の中で聞いている音、声、言葉
③体感:触れるもの、匂い、味、体の中の感じ
・外的視覚:実際に体に触れるもの、匂い、味、体中感覚
・内的感覚:想像の中で、体の内や外に感じるもの
◯目線
・上方:視覚構成
・横:聴覚構成
・下方:体感覚
・創造的自己:「何が・誰が悪いか」ではなく、「どうすれば解決できるか。今ここで
何ができるか」と主体性を発揮する。
・目的論:過去の原因ではなく、未来の可能性にフォーカスする。
・全体論:意識と無意識、心と身体を相反するものと捉えず、起こっていること全体を扱う。
・対人関係論:問題や症状を対人関係の文脈の中で捉え、お互いにとってより良い所属感を見出す。
・現象学:自分ではなく、相手の視点から「何がどう見え、その人にとってどんな意味があるか」を探る
◯良好なコミュニケーションの特徴
・相互尊敬
能力、技術、役割、立場に関係なく相手を大切に思える
・相互信頼
無条件に相手を信じられる
・協力
相手と力を合わせて、全体の総生産性を上げる
・共感
自分の損得に関係なく、相手の立場に立てる
・目的の一致
何のためのコミュニケーションか
◯良好なコミュニケーションの姿勢
・横の関係
個人差⇦能力、技術、役割、立場
対等⇦人格(人間としての価値)
・勇気づけ
相手の良いところを見つけて、元気づける
・相手から「感謝」を探す
相手にしてもらったことも、探せばたくさん見つかる
・勝ち負けや人との比較よりも、良い関係を重視する
相手とどういう関係を持ちたいかを考えて行動する
・3つの傾聴レベル
①自己レベル:自分にとって、どういう意味があるか
②集中レベル:相手にとって、どういう意味があるか
③全体レベル:みんなにとって、どういう意味があるか
◯主張的な頼み方の3パターン
①相手の話に耳を傾けてから頼む
「調子はどう」「なるほどね・・。ところでさぁ・・」
②相手の気持ちを言った後に頼む
「そう言えば、昨日は夜遅くまで大変だったらしいね・・。ところでさぁ・・」
③相手の長所を言ってから頼む
「〜が、〜になっていたのでよかったよ。ところでさぁ・・」
◯わたしメッセージの3ステップ
①出来事について話す
「〜のときに」「〜すると」
②自分の気持ちを伝える
「私は〜を感じる」「私は〜な気分になる」
③どうしてそう感じたのかを説明する
「なぜなら〜」「〜だから」
コミュニケーションは、毎日実践なのだけれど、その実践をどのような質で行うのか。毎日だけに、気づかないうちに間違った方法でコミュニケーションをとっていて、それが何年も何十年も続いて、体に染み付いたとしたら、なんて怖いんだろうと思います。早めに基本を学んで、毎日のコミュニケーションを通して、「これはうまくいった」「ここは、もっとこういう風に言えばよかった」という振り返りを行って、だんだん考えなくてもできることを増やしていきたいなと思います。時間と労力を投入してでも、学ぶ甲斐のある分野です。